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金と銀の玉の章

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 ~~ その頃の銀と赤 ~~

 「お腹すきました」

シルバーがレッドの元に現れた。

「終わったか」

「ええ」

「用意するまでこれ食べといて」

アイテムボックスから出した豚汁をレッドはシルバーに渡す。

「良い感じにできましたよ。後で見に来てください」

「行く」

そう言いながらレッドは金属製の焚火台を設置し、鉄鍋を火にかける。

「こういう火はみてて気持ちいいですね」

「たしかに。そういやお前黒と通信した?」

レッドが言うとシルバーは首を横に振る。

「最近静かですね、そういえば。あの人も気まぐれだから、通信ないときは10年くらい何にもないことちょくちょくありますよ」

レッドが突っ込む。

「シルバーはこの20年ほど音信不通だったろうが」

「あはは、そうでした。私の玉を渡しに来た時もそっけなかったですねぇ」

レッドは気になったのかアキラに念話を送る。

『おーい』

『なにーレッド。あ、シルバーも一緒ね。上手く行った?』

『もちろん、レッドがいいところ紹介してくれました。落ち着ける場所ですよ』

シルバーは室のイメージをレッドとアキラに送る。

『そういや最近黒の竜から念話あったか?』

『念話ないけど、さっきも拠点に来てたよ。お酒のみに。あとよくわかんないけど二人から連絡あったら『銀の玉と同調し過ぎてる。暫く念話での接触はしない』って。意味わかる?』

シルバーが答える。

『……わかった。こっちに同調し過ぎてるから黒っていう個体保持の為に念話しないって事。ちょっと面倒だけどアキラ中継お願い』

『りょーかい。俺もデヴィッドと一緒にギルドに行くか、デヴィッドに連れてきてもらうかだな。あ、期間的には1年以上はかかると思うって』

『何から何まで先回りで答えるな、黒の竜あの人は』

シルバーの呟きにアキラがしれっと推論を話す。

『多分黒は先視の力あるんじゃないの。全てがわかるんじゃなくて、その力が働いた事だけわかるんだと思う。そういうのオールは力が揺らぐからって答えてたけど。技術とかじゃないからね』

『ふむ。そのうち訊いてみよう。アキラありがとう』

『アキラ、あんがとよ』

静かだったレッドとシルバーはアキラとの念話を終わらせた。

「その、玉と同調って?」

レッドが疑問をぶつける。

「私の玉を黒の竜の端末で修復してくれたから黒に銀の竜の因子が入り込んでるのと意識が同調しちゃって私と黒が融合しかねないのと。念話はお互いの魂がつながるから玉も絡んでるんで魂が引きずられて魂の融合が始まるかも、だからね。あー、めんどくさい。黒がそうやって不安定だから我々自体も安定度は下がってるって事だからね?レッド、無茶しないでよ?」

「なんで俺?」

レッドは抗議する。

 宗介が火にかけるだけで出来上がるといって渡してくれた鍋の中はパエリアが入っていた。

「良い匂いに綺麗な色ですね」

「パエリアっつーらしい。もう一鍋あるけど金に玉渡した時に食べようかなって」

シルバーはにっこり笑う。

「いいですね。明日もパエリアで夕飯ですね」

「は?」

「地下の小人たちには『そこでまってて。すぐに戻ってきて金に欠片渡すからね』って本体から伝えてあるから。あそこに地下の小人の王様がいたから念話も送れた」

「銀の能力って凄いなぁ」

レッドが感心している。
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