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金と銀の玉の章

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 「え?俺達にはあれ効かないの?」

後ろで聴いていたランディが声を上げる。

「そだよ。ただランディは色んな人種が混じってるから純粋な竜人よりかは効果でるかも」

「純粋な竜人か。どんどん減ってるからなぁ。今度俺らの国で純血の竜人は女性も男性も自分の血統の純血の子供を作らないと他の種族の異性と子供が作れない事になったんだよな。慣習だったのが法律になった」

「なに、その横暴」

エヴァがかっとなってランディに食ってかかる。

「俺に食ってかかられても。俺らの生きる時間は長い。そこでよりどころになるのは『宗教』なんだよ。竜の司祭は純血の竜人じゃないと無理って事になってる。……そうじゃないと竜の声は聞けないって事になってるんだ。そのため司祭は絶やしたくない、って事からこの法律が決まったの。そう蛇人の麻薬みたいなもんだね。そして純血の夫婦生活っていうのは女系でね。母親の元に男が通うわけさ。ずっと同じ男が通う家もあるけどその男の子供を産んだら次は違う男、って事が多い。純血の竜族の女は少ないからね。男が3で女が1位の割合でしか生まれないんだよ、竜人の女」

エヴァは不服そうな顔をしている。

「純血の竜人の女って、家にもよるけど男が通えるようになったらすぐに男が通うんだよ。子を早くなして、次の子をなして、って感じで。だから一人目を産むまで『学校』にも通えず家の中しか知らずに育てるんだ。で、他の種族の血が混じった子供は外に出る。大体は竜族の学校の寄宿舎で育つ。年に1回くらい父親というか……あれは『種親』だな、が会いに来る。だから混じり子達は国全体が育てる感じ。で、俺を作った男はハイエルフの混じりだったもんで、その上放浪癖のある男でね。そいつが放浪するのは父親と会いたいからだって言ってたけど。……で、俺は15でそいつと一緒に色々放浪したんだよね。3年かな。で、冒険者になって一応竜人の方にも家をもって。そんな混じり子は珍しくないんだよ」

「なんか信じらんない。女は奴隷?子供産めばいいってこと?」

噛みつくエヴァにランディは答える。

「女は女神だよ。竜人の女は大事にされてるよ。着飾りたい女は着飾ってるし、最初の子を産んだ後は自由になれる。学術都市で教授やってる女もいるし冒険者もいるよ。偽装して王都で暮らしてる女も知ってる。だから女自身も最初の子を産むまで、って割り切ってる。……なんなら娼婦をやってる女もいるよ」

「ええええ?!」

エヴァが信じられないと声を上げる。

「話してみるかい?純血の竜人の女と」

エヴァは頷いた。

「ええ。貴方達竜人の女の気持ち聞きたい。……私としては理解できないし、許せないから」

「他所の文化を攻撃はしないほうがいいぞ」

ヴァイキーが片眉を上げてエヴァに言う。

「農場のルールでさえ各農場で変わる。国だってそうだろう。それこそ王族やお貴族様なんてもっと窮屈な暮らししてるだろう。同じ人種でもそれだけ変わるんだぞ。人種が変われば常識も変わる。蛇人の話もそういう事」

ヨアヒムも少し目を伏せて言う。

「エルフ、ヒト、ドワーフは社会の基礎が似てるから近しく交わるけどその他の亜人とは交流が少ないからな。竜人はその中でも一番ヒト社会に近いんだけどね」

「そうだとしても!竜人の女性の話は聞きたい」

エヴァはあまり納得できてないようだった。宗介は渋い茶を入れて飲んでいる。

「ま、文化が変わると正義もかわるんよ。大体一致してるのは『殺してはいけない』くらいか。盗みに関してもかな。それでも隙をみせたら盗んでもいい、犯してもいいって文化が蛇人やろ」

「……隙を見せたら犯されたり盗まれたり命を取られるのは冒険者もだろ」

ヴァイキーが言う。自分の元妻は隙だらけで結局犯罪者の良いようにされたがな、と心の中でヴァイキーは付け加える。社会だってそんなもんだ、とも。

「それは……」

エヴァは神官仲間の女性がパーティの欲望処理係として雇われることがある事も知っていた。自分はヴァイキーについて回ったおかげでそういう目にあってないのも理解していた。エヴァの気持ちはずん、と重くなる。

「そういう人間ばかりちゃうけどな」

宗介は明るい声で付け加えエヴァの気持ちは少し楽になった。
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