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金と銀の玉の章

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 銀の竜が降りたのは草深い草原の真ん中で、そこだけ草が生えていない地域だった。オール曰く街道の位置が変わったので放置された元休憩所だったそうだ。

「俺とブラッドだと放棄された休憩地でキャンプする事が多かったから、色々覚えてるんで」

とオールが言う。そしてオールはこの辺り一帯に軽い認識阻害の魔法をかけた。一瞬で銀の本体が荷物と荷馬車に見えるようになった。

「……今日は遠慮会釈なく食べます」

ふわっとそこに出現した銀の端末、シルバーが宣言した。

「よしよし。まだ食料はあるしな。ちょっと冷えるからまずは焚火つくってやな」

「これ便利ですよね」

鉄製の焚火台を見ながらシルバーが言う。

「クランにいる兄弟、ルトガー、ユリアーナ、エドガーの三人やねんけどな、そこの父ちゃんの会社におる、転移者の子、あだ名はエイギョーっつーらしいわ、が、企画して作ったらしいわ。これはよく売れてるらしい」

「そうでしょうねぇ」

シルバーは納得しているようだった。宗介はアイテムボックスから鉄製の鍋をだし焚火台に仕掛ける。その中にはたっぷりみそ仕立ての豚汁が入っているのだ。さすがにこんにゃくも揚げも豆腐もないが根菜と豚肉とねっとりした芋が入っていて体を温めるには丁度良かった。宗介はBBQコンロに炭をいれ火をおこす。

「火、起きる前はアイテムボックスの中のもん、たべよか」

宗介はいくつかの食品を取り出す。オールも同じ行動をとる。

「これで玉が戻ったら体も楽になりそう」

シルバーがおっとりと言う。豚汁を口にしてはほうっと溜息をついている。

「こういう冷える季節には暖かいスープは御馳走だね」

とオールも嬉し気だ。



 翌朝

「昨日はよう冷えたな。そろそろ部屋のベッドが恋しいわ」

と宗介が笑う。

「今日は帰れますよ」

オールは昨日のうちに母屋の裏庭にシルバーの本体を置くようにと指示をしていた。裏庭なら広さもあるし、来春に種をまくために整えた所で十分な空間があるからだった。島からでた時と同じようにシルバーの本体の背にオールと宗介が寝そべり空へと向かった。

 空の旅は快適で宗介もオールもご機嫌だった。キャンプをしていた位置からは半日で拠点へは着いた。裏庭にシルバーが降り立った時にはアキラとレッドがそこに立って待っていた。

「おかえり」

アキラの言葉に

「ただいま」

と宗介とオールが答えた。音もなくシルバーの本体が丸くなりオールがそれに認識阻害の術をかける。シルバーが現れる。

「久しぶり、と初めまして」

「初めまして」

「おう、久しぶり」

竜の端末三人がお互い挨拶をする。不思議な緊張感が漂っているが、心地よいものでもあった。

「大分、レッドに弄られていたらしいですね」

シルバーがほほ笑みながらアキラに尋ねる。

「もう昔の話です」

そう言いながらアキラは家の中にシルバーを誘った。

 室内は暖炉で暖かい。暖炉の前ではクラッカーにチョコと焼いたマシュマロを挟んで皆きゃあきゃあと遊んでいる。もちろんおやつにそのチョコとマシュマロを挟んだクラッカーを食べている。ルトガーとエドガーが街に帰った時、エイギョーに教えられてきたのだ。

「なっつかし。スモアやんか」

宗介が少し嬉しそうに言った。
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