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金と銀の玉の章
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「今の王太子や俺が子供の姿のままの理由もわかってるはずだよな?で、第三王子がそれなりに年を取っていっている理由も。…ちょっとまて、…ミゲルか?」
男は体を一瞬こわばらせたが、正直に答える。
「いえ、その息子です。…父は先年亡くなりました。魔力漏出病で…ヒトのようにあっという間に年をとって」
襲撃者のリーダーは顔を上げて話す。
「私はハーフエルフです。そして魔力はほぼありません。第三王子の近衛は魔力を持たないもので構成されているのです。王子の希望によって。貴方には『あのバカ』でも我々にはエルフの里に居場所のない我々を引き取ってくれ、必要としてくれる大事なお方なのです」
ハーフエルフで魔力がない、ということは寿命はほぼ人と同じ、になるらしい。あまり例のないことなのでエルフの間では忌み子扱いになる。ニーアから続くニーア、ジョン、ブランカはニーア>ブランカ>ジョンの順で魔力量が多い。三人の中ではジョンが一番寿命が短くなると予想されている。ランディくらい色々混じると寿命がどうなるかは誰もわかっていないが竜人とエルフの血があるということで長命であると思われている。大きなけがや魔力漏出病に掛からない限り。魔力漏出病は不治の病である。これはエリクサーも効果がないらしい。人類が他の種族よりも寿命が短いのは生まれつき軽微なこの病にかかっているからという説を唱える学者もかつてはいたらしい。
「そうか、あのバカも少しはまともな事をするんだな。ただな、お前のご主人様は妻がいるのに人の婚約者に色目をつかいちょっかいかけるような奴だ。主人が人の道を外れたらちゃんと諫めるのが本来の従者ではないのか?」
襲撃者のリーダーは何も言わない。ただ、デヴィッドはこの男の父親と母親を知っていたし、あの二人の子供ならまともに育ってもいるだろうから、この男なら諫めてはいるのだろう、と思っていた。第三王子が話を聞かないだけであって、と考えていた。
「…お前の苦労は報われないよ。それは断言しておこう。…お前も湯殿へ行け。ブラッドすまんが」
「連れて行く。アキラ、この場はまかせた。デヴィッドが暴走したら止められるのはアキラだけだからな。第三王子は…イラつかせられるかもしれん。デヴィッド、グリーナーは中に置いておくからな。あいつと会わせるとほだされかねない」
「わかった」
ブラッドの言葉にデヴィッドは短く答えた。
アキラはアイテムボックスから宗介作成の熱い豚汁を出してデヴィッドに渡す。
「腹が冷えてたら、そっちに気をとられるだろう?」
「このスープなら腹も満たせるしな」
デヴィッドは落ち着いて返事をした。
ほどなくして、グリーナーの父親が手かせを嵌めた金髪の美丈夫をつれて転移してきた。よく見ると口枷も嵌められ、膝と足首の所でしっかり縛られている。グリーナーの父親はその男を荷物のように転がし口枷を外す。
「ミルドレッド卿、何をするんだ」
「今は王位継承者アーサー・ミルドレッドとして君を捕縛し連れてきた。部下は全員さがらせてあるからこの無様な姿は我々しか見ていないと保証しよう」
グリーナーの父親は第三王子を見下ろして言った。
アキラは音もなく周りに視界遮断と音声遮断の結界を張った。
「一応見えない聞こえない状況だから何を言っても大丈夫」
「なんでヒトがここにいる」
「なんでだろうね」
アキラはキースが吠えるのをにやにやみながらキースと目を合わせる。
「この状態のデヴィッドが暴走したら止められるのは俺くらいだからな」
第三王子はこの集団の中で一番年かさに見える。デヴィッドとアキラが十代半ばくらいの少年、アーサーが20代半ば所くらいで第三王子が20代後半といった所か。
「お前が?」
アキラはキースの前に立つと、何気なく足で地面を鳴らす。だんっと音がして、そこには靴の形の穴が開いている。
「この程度の力はあるからデヴィッドの暴走も止められる、止めようと思ったらな。でもあんたがそんな態度なら一、二発くらいはデヴィッドの拳があんたの顔や腹に当たる事もあるかもな。俺はあんたの為の安全装置、ってところだ」
アキラはキースの目をまっすぐに見た。アキラは続けてキースに告げる。
「だからデヴィッドやグリーナーのオヤジさんの訊く事には素直に答えるんだな。…俺は安全装置だがあんたの味方じゃないからな?」
アキラははっきりとキースに告げた。
男は体を一瞬こわばらせたが、正直に答える。
「いえ、その息子です。…父は先年亡くなりました。魔力漏出病で…ヒトのようにあっという間に年をとって」
襲撃者のリーダーは顔を上げて話す。
「私はハーフエルフです。そして魔力はほぼありません。第三王子の近衛は魔力を持たないもので構成されているのです。王子の希望によって。貴方には『あのバカ』でも我々にはエルフの里に居場所のない我々を引き取ってくれ、必要としてくれる大事なお方なのです」
ハーフエルフで魔力がない、ということは寿命はほぼ人と同じ、になるらしい。あまり例のないことなのでエルフの間では忌み子扱いになる。ニーアから続くニーア、ジョン、ブランカはニーア>ブランカ>ジョンの順で魔力量が多い。三人の中ではジョンが一番寿命が短くなると予想されている。ランディくらい色々混じると寿命がどうなるかは誰もわかっていないが竜人とエルフの血があるということで長命であると思われている。大きなけがや魔力漏出病に掛からない限り。魔力漏出病は不治の病である。これはエリクサーも効果がないらしい。人類が他の種族よりも寿命が短いのは生まれつき軽微なこの病にかかっているからという説を唱える学者もかつてはいたらしい。
「そうか、あのバカも少しはまともな事をするんだな。ただな、お前のご主人様は妻がいるのに人の婚約者に色目をつかいちょっかいかけるような奴だ。主人が人の道を外れたらちゃんと諫めるのが本来の従者ではないのか?」
襲撃者のリーダーは何も言わない。ただ、デヴィッドはこの男の父親と母親を知っていたし、あの二人の子供ならまともに育ってもいるだろうから、この男なら諫めてはいるのだろう、と思っていた。第三王子が話を聞かないだけであって、と考えていた。
「…お前の苦労は報われないよ。それは断言しておこう。…お前も湯殿へ行け。ブラッドすまんが」
「連れて行く。アキラ、この場はまかせた。デヴィッドが暴走したら止められるのはアキラだけだからな。第三王子は…イラつかせられるかもしれん。デヴィッド、グリーナーは中に置いておくからな。あいつと会わせるとほだされかねない」
「わかった」
ブラッドの言葉にデヴィッドは短く答えた。
アキラはアイテムボックスから宗介作成の熱い豚汁を出してデヴィッドに渡す。
「腹が冷えてたら、そっちに気をとられるだろう?」
「このスープなら腹も満たせるしな」
デヴィッドは落ち着いて返事をした。
ほどなくして、グリーナーの父親が手かせを嵌めた金髪の美丈夫をつれて転移してきた。よく見ると口枷も嵌められ、膝と足首の所でしっかり縛られている。グリーナーの父親はその男を荷物のように転がし口枷を外す。
「ミルドレッド卿、何をするんだ」
「今は王位継承者アーサー・ミルドレッドとして君を捕縛し連れてきた。部下は全員さがらせてあるからこの無様な姿は我々しか見ていないと保証しよう」
グリーナーの父親は第三王子を見下ろして言った。
アキラは音もなく周りに視界遮断と音声遮断の結界を張った。
「一応見えない聞こえない状況だから何を言っても大丈夫」
「なんでヒトがここにいる」
「なんでだろうね」
アキラはキースが吠えるのをにやにやみながらキースと目を合わせる。
「この状態のデヴィッドが暴走したら止められるのは俺くらいだからな」
第三王子はこの集団の中で一番年かさに見える。デヴィッドとアキラが十代半ばくらいの少年、アーサーが20代半ば所くらいで第三王子が20代後半といった所か。
「お前が?」
アキラはキースの前に立つと、何気なく足で地面を鳴らす。だんっと音がして、そこには靴の形の穴が開いている。
「この程度の力はあるからデヴィッドの暴走も止められる、止めようと思ったらな。でもあんたがそんな態度なら一、二発くらいはデヴィッドの拳があんたの顔や腹に当たる事もあるかもな。俺はあんたの為の安全装置、ってところだ」
アキラはキースの目をまっすぐに見た。アキラは続けてキースに告げる。
「だからデヴィッドやグリーナーのオヤジさんの訊く事には素直に答えるんだな。…俺は安全装置だがあんたの味方じゃないからな?」
アキラははっきりとキースに告げた。
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