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金と銀の玉の章
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翌朝。グリーナーを迎えに来た使者は尊大なエルフだった。
「何故ヒトに挨拶をせねばいけないのですか」
デヴィッドとグリーナーに抗議をしているのはグリーナーの家の使用人でエルフの下級貴族の一人だと当人は主張する。
「こんなヒト臭い所にお嬢様を置くなんて、デヴィッド様もあんまりです」
「…俺はお前に名前を呼ぶ許可を与えていないが?」
デヴィッドはグリーナーの実家に勤めるこの新参だという使用人を書類上でも見た記憶がなかった。グリーナーの実家が新しく人を雇えばデヴィッドにはいつも連絡が来るのでこの男はおかしい、と判断する。
「で、お前誰だ?グリーナーの家の使用人は知ってるんだが?」
とデヴィッドがカマをかけてみる。アキラはこれは、なにかある?!と思った。アキラは己の聴力だから聞こえているとわかっていたので、グリーナーとデヴィッドの家からは死角になる位置を位置取った。刈り取られたハーブの匂いが漂っている。
その男はくるりと背中を向けて脱兎のごとく駆けだそうとしたが、デヴィッドとアキラが渾身の瞬発力で抑え込んだ。足元をデヴィッドのタックルで崩され、アキラが地面に寝ころんだ男のの胸の上に乗った。
「剣呑な会話してたよな」
アキラがのんびりとデヴィッドに言う。
「多分こいつ偽物だろうな」
デヴィッドは男の顔を検分している。
「…ってかこいつなんか暗示かかってないか?」
アキラが男の胸の上に座り込んで男の瞳を覗き込んでいる。
「さすがに暗示は読み取れないか」
「じゃ、オールを呼ぼう」
「私呼んでくる」
グリーナーが意外なほどすたすた歩いてクランハウスに入っていった。
「捕縛セットももってきたよ」
のんきな声でオールがやってきた。オールは相手を動けなくする魔法を使う。
「アキラ、そいつひっくり返して」
オールのいう通りにアキラは胸から降りてひっくりかえそうとしたらその男を狙って矢が飛んできた。こともなげに飛んできた矢をアキラはつかみ、デヴィッドは矢が飛んできた方向に走って行った。
「あーあ、兄さん、原型とどめた犯人持ってくるかな」
「血の匂いが酷いとグリーナーが辛いんじゃないか?」
「たしかに」
のんびりしたアキラとオールの会話はこの場の空気にそぐわない。上の階から入ろうとした犯人一味の一部はオールの罠につかまっていた。外からエドガーが青臭い不愉快な苦みのある匂いの薬草を煎じた汁を水鉄砲でそいつらにかけている。もし逃げ出しても臭気で後がたどれるように、ということらしい。ヨアヒムが作った特製の洗剤と石鹸がないとその匂いを取るまで数週間はかかる、らしい。
『俺も人に使うのは初めてだからな』
とヨアヒムは言う。
「その匂い、髪洗っても取れないぞ」
エドガーは遠くから水鉄砲でそいつらに薬液をかけながらその液体の事を教えた。
「ふん、その間、隠れてたらいいことだ」
その中の一人が嘯く。
「口明けない方がいいよ~」
エドガーは正確にその男の口の中にその液体を打ち込んだ。
「うげぇぇ。ごぉおお。ごっごっごっ」
「うお、汚えぇ。ゲロかけるなよ」
「だから口明けちゃダメだって」
もう一人の男の口の中にも薬液は入り込んだ。
そとでの捕縛がおわってオールが上に上がってきたときには床の上はその男たちの吐しゃ物で床は汚れていた。
「あらら。すごい青苦い匂いしてるね」
「ネモロ草の根を煎じたものをね」
「あいつら健康になっちゃうじゃん」
「吐くくらい不味いみたいだけど」
エドガーは笑っているしオールは呆れている。
*******
年末は30日まで更新予定
年始は5日から更新再開します。
今年は拙作を読んでいただきありがとうございます。
来年もよろしくお願いします。
「何故ヒトに挨拶をせねばいけないのですか」
デヴィッドとグリーナーに抗議をしているのはグリーナーの家の使用人でエルフの下級貴族の一人だと当人は主張する。
「こんなヒト臭い所にお嬢様を置くなんて、デヴィッド様もあんまりです」
「…俺はお前に名前を呼ぶ許可を与えていないが?」
デヴィッドはグリーナーの実家に勤めるこの新参だという使用人を書類上でも見た記憶がなかった。グリーナーの実家が新しく人を雇えばデヴィッドにはいつも連絡が来るのでこの男はおかしい、と判断する。
「で、お前誰だ?グリーナーの家の使用人は知ってるんだが?」
とデヴィッドがカマをかけてみる。アキラはこれは、なにかある?!と思った。アキラは己の聴力だから聞こえているとわかっていたので、グリーナーとデヴィッドの家からは死角になる位置を位置取った。刈り取られたハーブの匂いが漂っている。
その男はくるりと背中を向けて脱兎のごとく駆けだそうとしたが、デヴィッドとアキラが渾身の瞬発力で抑え込んだ。足元をデヴィッドのタックルで崩され、アキラが地面に寝ころんだ男のの胸の上に乗った。
「剣呑な会話してたよな」
アキラがのんびりとデヴィッドに言う。
「多分こいつ偽物だろうな」
デヴィッドは男の顔を検分している。
「…ってかこいつなんか暗示かかってないか?」
アキラが男の胸の上に座り込んで男の瞳を覗き込んでいる。
「さすがに暗示は読み取れないか」
「じゃ、オールを呼ぼう」
「私呼んでくる」
グリーナーが意外なほどすたすた歩いてクランハウスに入っていった。
「捕縛セットももってきたよ」
のんきな声でオールがやってきた。オールは相手を動けなくする魔法を使う。
「アキラ、そいつひっくり返して」
オールのいう通りにアキラは胸から降りてひっくりかえそうとしたらその男を狙って矢が飛んできた。こともなげに飛んできた矢をアキラはつかみ、デヴィッドは矢が飛んできた方向に走って行った。
「あーあ、兄さん、原型とどめた犯人持ってくるかな」
「血の匂いが酷いとグリーナーが辛いんじゃないか?」
「たしかに」
のんびりしたアキラとオールの会話はこの場の空気にそぐわない。上の階から入ろうとした犯人一味の一部はオールの罠につかまっていた。外からエドガーが青臭い不愉快な苦みのある匂いの薬草を煎じた汁を水鉄砲でそいつらにかけている。もし逃げ出しても臭気で後がたどれるように、ということらしい。ヨアヒムが作った特製の洗剤と石鹸がないとその匂いを取るまで数週間はかかる、らしい。
『俺も人に使うのは初めてだからな』
とヨアヒムは言う。
「その匂い、髪洗っても取れないぞ」
エドガーは遠くから水鉄砲でそいつらに薬液をかけながらその液体の事を教えた。
「ふん、その間、隠れてたらいいことだ」
その中の一人が嘯く。
「口明けない方がいいよ~」
エドガーは正確にその男の口の中にその液体を打ち込んだ。
「うげぇぇ。ごぉおお。ごっごっごっ」
「うお、汚えぇ。ゲロかけるなよ」
「だから口明けちゃダメだって」
もう一人の男の口の中にも薬液は入り込んだ。
そとでの捕縛がおわってオールが上に上がってきたときには床の上はその男たちの吐しゃ物で床は汚れていた。
「あらら。すごい青苦い匂いしてるね」
「ネモロ草の根を煎じたものをね」
「あいつら健康になっちゃうじゃん」
「吐くくらい不味いみたいだけど」
エドガーは笑っているしオールは呆れている。
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年末は30日まで更新予定
年始は5日から更新再開します。
今年は拙作を読んでいただきありがとうございます。
来年もよろしくお願いします。
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