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金と銀の玉の章

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 「ただいま」

アキラが食堂に顔を出すと宗介がウサギ肉を焼いていた。ニンニクとローズマリーの二種類の焼きウサギだった。

 「宗介がウサギって珍しいね」

「そうでもないで。ギルドの厨房はこれの納入多かったしな。屋台やってる時も安いから魚串だけやったら寂しいからウサギはよう串にしとったわ。…マルクみたくオーブンでは得意ちゃうけどな。フライパンなら得意やわ」

宗介は笑っている。

「軽くお腹空いてるなら卵かけご飯にでもしとき。たっぷり卵取ってきてくれたしな」

「ま、もうすぐごはんならまつよ」

アキラは宗介に笑いかける。

「串の方も作るつもり。こっちは七輪で焼くんやけどな。夕飯食べながら焼く感じで酒飲みがだらだらつまむ感じやなぁ」

アキラは宗介が付け合わせの野菜を焼いているのを見ている。トマトが焼かれているのでアキラは嬉しかった。

「焼いたトマトってなんで美味しいんだろう」

宗介がにかっと笑う。

「そやな。なんか甘くなるよな」

宗介はそう言いながら人参を千切りにしたものを炒めてる。

「人参はこやって炒めて胡椒強めにするのが俺は好きやな」

「俺きんぴらも好き」

アキラの答えに宗介も頷く。



 デヴィッドが一人でやってくる。

「グリーナー起きない。んで、向こうで食べられるようなもの少し欲しいんだが。それとブラッド」

夕食の為にブラッドとオールが居間に入ってきたところだった。

「なんだ?」

「あのオレンジ少しもってくぞ」

「いくらでも」

アキラが言う。

「一番小さい袋に酸っぱめのリンゴとか、他の種類のオレンジとかも入ってるよ」

「…フルーツなら食べるかな」

「つわりも大変ね。私は固く焼いたクッキーとか意外とよかったな、ジョンの時」

「それもあるといいんだけど」

「ショートブレッド少し持ってくといい」

宗介が台所のアイテムボックスからショートブレッドを出してくる。

「こっちは練習用に焼いたサクサクしたクッキーな」

と口当たりが違うものを出す。

 妊娠してからのグリーナーは非活動的になっている。とろとろと半分寝たまま一日を過ごしてる。デヴィッドが居ない時はニーアがちょくちょく様子を見に行ってるが朝出したスープが昼も残っていたりするので皆心配しているのだ。グリーナー曰く食べたくないわけではなく、眠気が勝ってしまうらしく隣の部屋のテーブルに行く前にまた眠ってしまう、らしい。なのでベッドサイドに置ける小さなテーブルをブラッドが作ってその上に飲み物を置いているのだ。

「そこにそのお菓子置いたらいいじゃん」

とユリアーナに言われてデヴィッドがやっと気が付いたようだった。

「ベッドで食べるなんて思いつかなかった」

「…グリーナー、つわりもあるけどエネルギー不足じゃないの?ついでにウサギ肉の串焼きも持っていきなよ。ベッドの中でなら食べられるかもしれないよ」

ユリアーナはデヴィッドにそういいデヴィッドも頷いた。
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