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金と銀の玉の章

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 「なぁなんであのおっさん、あんなに感情読みやすいの?」

「案外可愛いでしょ。単純で」

マリナが笑う。

「デヴィッドがレッドとオール置いてきたのはね、あの年頃が神官長の好みだからよ。アキラには無反応だったでしょ?」

「…あ、あのおっさん。同性の方が好きなのか。デヴィッドを熱い目で見てるとは思ったよ」

アキラはやっと神官長の性癖を理解した。


「おっさんが男好きでも女好きでも俺には関係ないしな」

「ま、そういうことだな」

デヴィッドも同意した。



 馬車でギルド本部まで戻る。デヴィッドがクロの様子を覗くとクロは海図を眺めていた。

「どうした?」

「あー、銀色の地点の特定を」

「それは一般向けだな。これも一緒に見るといい」

それはデヴィッドの私物でこの大陸周辺の島々の絵が描いてある本だった。

「小国家群の仕事の時に便利でな。ある程度位置特定も出来ると思う」

「感謝する」

クロはそう言った。

「ねぐらに持って帰ってもいいぞ、本も海図も」

「わかった。ところでアキラたちは?」

「とっとと拠点に置いてきた」

デヴィッドはゆっくりと変装を解いていった。魔術によるものなので変装を解くスピードはあまり関係ない。が、仕事に戻るまでを引き伸ばしたくてゆっくりしているのだ。



 そのころの拠点


「ただいまー」

「吸血鬼どうなったの」

ルトガーが真っ先にアキラ達に食いついた。

「ああ、…この世界には居なくなったよ。あの吸血鬼」

「死んだの?」

エドガーも出てきた。後ろでヨアヒムとランディはカードで遊んでいる。ユリアーナとエヴァは畑にいるようだった。

「命はあるよ。ただこの『世界』との関わりを全て無くしたと思う」

エドガーもルトガーも不思議そうな表情になっている。

「んー。ともかくあいつは夜であろうと昼であろうと人の血をすったり人と会話したり社会生活すら営めない、そんな存在になった」

「単純に言うと消えたの」

マリナはそう説明した。

「ともかく、あいつの脅威は無くなったわ」

「とりあえず俺、腹減った」

アキラの言葉にレッドも同意する。

「そうだな。なんか食おうか」

「ウサギ肉でもいいかな」

マルクが言う。

「良いけど…、宗介は?」

「ジュニアと街。なんか街中の知人にキノコ届けるってさ」

「そっか」

「ウサギ肉のグリルでいい?」

「うん」

「いいよ」

アキラとレッドの声が重なり、マルクは庭にハーブを摘みにいった。
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