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金と銀の玉の章

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 「なんで朝からでてきたんだ?」

影に座って少し楽そうになったサファイアにレッドが尋ねた。

「夜だと怖がらせるから」

「誰を?」

「竜の端末の二人以外を」

オールが

「俺は怖がらないぞ」

と言うと

「あんたは規格外。ある意味俺より人から外れてるだろ。…まぁ、あの集団なら怖がるのは坊やくらいか…。あの錬金術師も魔剣持ちも肝座ってるな」

「だから一緒にくんでるんだけどな」

アキラの言葉にサファイアはレッドに向かって言った。

「あの時もあのレベルの仲間が一緒にいたら柱に閉じ込められなかったのにな」

「うるせぇよ。なんでこの国を滅ぼしたんだ?」

「…王にディアーヌ王国以外を見せてやりたかったのと、この国の王族に復讐したかったのと。エメラルドの暴走と。要因が重なりすぎた。…俺個人は王族をつぶせればよかったんだが」

サファイアは虚無を感じさせる目でレッドを見る。

「俺は、この国の外交官だった。で、ディアーヌ王国へ赴任してたんだが…、そこに留学してきてた第二王子がへまをして。…俺は吸血鬼の王に対峙し、魅了された。あの方を己の至上と定め、着き従うと思った。…へまをした第二王子はエメラルドの眷属となっていたな。あのモンスター津波を起こしたがったのはその第二王子だよ。『モンスター津波が起こったらどうなるか知りたい』からってな」

オールが少し首を傾げながら呟く。

「自分の国が大事じゃなかったのかな」

「第二王子はこの国は自分たち王族が何をしてもいい場所だと常々言ってた。俺が王への生贄になったのもこの国の国民だったからだよ」

サファイアは誰の方も向かずに話し続ける。

「ま、その第二王子自身があのでかいやつに踏みつぶされて死んだけどな。体の再生が出来ないくらいの細切れで他の人間の死体と混ざって再生不能。俺はあいつの魂を昇天させずにこの初代の墓に括りつけて遊んでたんだ」

「遊んでた?」

オールの声にサファイアは反応してオールを見た。

「…苛んでた、っていうべきかもな」

サファイアは溜息を吐いた。

「あいつを好きなだけ苛んでたら頭がクリアになった。俺は王がいなければ吸血鬼になった意味がない。だから…王から預かったものの事を黒の竜に相談したかったんだ。あとこの腹に食い込んだ玉と」

確かにあの玉の処遇もあるから黒を呼ぶのは仕方ないか、とアキラとレッドは思った。

 後ろに音もなくデヴィッドともう一人、どこにでもいる茶色い髪に茶色い目、外見的には劣っても優れてもいない。どこにでもいそうな青年がいた。

「お前の荷物、そのまま持っておきたくないのかね?お前の所に来たということは王はお前に期待していたのであろうよ」

「黒の竜ですか。王の力をもってしても貴方のおひざ元にすら入り込めませんでした」

「わしゃ、人見知りでな」

アキラもレッドもこのしれっとした青年は黒の端末だなとしみじみ思った。

「そこ二人、失礼なことを考えるな」

「仕方ないじゃん」

アキラの言葉にレッドも頷いている。デヴィッドは緊張感がないよなぁと端末の三人を見ている。

「とりあえず、二人で話したいかね?」

黒の端末がサファイアに問いかけた。
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