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旅の章
03
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アキラは偽装された扉を探し当てた。深い森の奥にある岩肌の中腹にあった。そこまでアキラはでたらめな手がかりで上り切り、入口の偽装を魔法ではがす。そして中に入り、下の二人の為にロープを下ろした。
二人は打合せ通りに腰にロープを巻き付ける。そうするとアキラは二人を入口まで腕力で引きあげた。
「これ、毎回思うけど非常識な力だよな」
「…そうなのか?」
ヨアヒムは笑う。
「レッドもあっち側だったな。すぐ忘れる」
「まぁ、不老不死の薬なんて飲んでる人間に非常識って言われてもな」
「あれさー、長寿の薬に改めてほしい。多少の毒に耐性つくけど後は普通の人類レベルの頑丈さで病気にだってかかるし、普通に病死もあるんだよな。不老不死は大げさ」
「錬金術師、多少のはったりも必要ってところか」
ロープを解きながらレッドは言う。
「ほんと、あの薬を不老不死は違うと思ってる」
「エドガーにも教えるの?」
アキラに聞かれヨアヒムは首を横に振る。
「この薬の存在などを弟子や周りに吹聴するのは禁じられてるし、こういう薬があるって自分で気が付けたり推測できたりする人間のものだからな。教えてもらうものではないし、錬金術師として自分で気が付けなかったら無用のものだ。そもそもは研究する時間を長くもてるようにするためだからな。凡百の腕が良いだけの錬金術師ではいけない。ただでさえ長命種の錬金術師と時間に差があるのだから」
真面目な顔だった。
「そういや、ダンジョン産の不老不死の薬、あれはどうなんだ?」
ロープをほどいたレッドは体を伸ばしている。
「あれは…、あれを見て自分で調合したいって思うなら錬金術師として一歩上に行ける。あとあれ使って効果あるかどうかは、確率的に3割ぐらいらしい、成功率。大体がちょっと健康になってちょっと長生きになるレベルだよ。ただ、病んでる人には大事な薬だな。特に重篤な病の人にはね。どこぞの王宮でこのダンジョン産の不老不死の薬を必死で集めてるらしいけど」
レッドがさらっと教えてくれる。
「ああ、あれ。南西の国の王の愛妾が毒で自殺を図ってな。それで根治出来る人間が現れるかかの国の皇帝が死ぬまで愛妾の『命』をながらえさせる為だとさ。おかげで皇后が怒り心頭で…。あの国、早晩滅びるか皇帝薨御かどっちかだろう」
「レッド、あの国行ってたんだ?」
アキラがその情報に補足する。
「不老不死の薬は結局途中で間に合わなくて、愛妾が亡くなった時に皇帝が自害して次の世代に移ったよ。まだ10歳の皇帝の誕生だった。それが2年前に起こった」
ヨアヒムが続ける。
「そうか、あれか。錬金術師ギルドにも依頼がきてな、薬は自分で調合しないと毒になる事を説明したけど信じなくて…。奴隷に飲ませるという話になった時に皇后が動いてそれはなくなった。その時の皇后は『自分で飲んでお試しなさい、それが出来ない愛なら愛とは申しません』って言って皇帝と愛妾一族をへこませてたな。愛妾の母親が自分が実験台になるって言ったけど…持たなかったよ、愛妾の方が。この話はギルドの連絡で来てたけど直接かかわった人間以外はどこの国かは教えてもらえなかった」
レッドは深いため息をついている。
その頃のマルク達
「馬を少し走らせてきた」
「ありがとう」
二匹の馬を馬車につないでヴァイキーはこの辺りを走ってきたらしい。馬の世話も済ませてきたという。マルクはヴァイキーに熱いコーヒーを差し出した。
「甘くするか?」
「いや、いい」
「俺にも一口」
魔剣が言い出した。
「珈琲だぞ?味わかるのか」
マルクが魔剣に尋ねる。
「気分だよ、気分」
ヴァイキーの剣と明確になってから魔剣は機嫌がすこぶるよい。上っ調子とも言える。
「じゃ、こうかな」
平たい皿に珈琲を注ぐ。
「これに剣の刃をつけてやったらいいかな?」
「んー」
ヴァイキーは魔剣を抜くとその皿のコーヒーをざばっと刃にかける。不思議な事に刃の上のコーヒーは吸い込まれていく。
「こんな感じなんであんま気にするな。俺のから適当にやるから」
ヴァイキーは改めてカップのコーヒーの香りを楽しんでいるし魔剣は静かになった。
二人は打合せ通りに腰にロープを巻き付ける。そうするとアキラは二人を入口まで腕力で引きあげた。
「これ、毎回思うけど非常識な力だよな」
「…そうなのか?」
ヨアヒムは笑う。
「レッドもあっち側だったな。すぐ忘れる」
「まぁ、不老不死の薬なんて飲んでる人間に非常識って言われてもな」
「あれさー、長寿の薬に改めてほしい。多少の毒に耐性つくけど後は普通の人類レベルの頑丈さで病気にだってかかるし、普通に病死もあるんだよな。不老不死は大げさ」
「錬金術師、多少のはったりも必要ってところか」
ロープを解きながらレッドは言う。
「ほんと、あの薬を不老不死は違うと思ってる」
「エドガーにも教えるの?」
アキラに聞かれヨアヒムは首を横に振る。
「この薬の存在などを弟子や周りに吹聴するのは禁じられてるし、こういう薬があるって自分で気が付けたり推測できたりする人間のものだからな。教えてもらうものではないし、錬金術師として自分で気が付けなかったら無用のものだ。そもそもは研究する時間を長くもてるようにするためだからな。凡百の腕が良いだけの錬金術師ではいけない。ただでさえ長命種の錬金術師と時間に差があるのだから」
真面目な顔だった。
「そういや、ダンジョン産の不老不死の薬、あれはどうなんだ?」
ロープをほどいたレッドは体を伸ばしている。
「あれは…、あれを見て自分で調合したいって思うなら錬金術師として一歩上に行ける。あとあれ使って効果あるかどうかは、確率的に3割ぐらいらしい、成功率。大体がちょっと健康になってちょっと長生きになるレベルだよ。ただ、病んでる人には大事な薬だな。特に重篤な病の人にはね。どこぞの王宮でこのダンジョン産の不老不死の薬を必死で集めてるらしいけど」
レッドがさらっと教えてくれる。
「ああ、あれ。南西の国の王の愛妾が毒で自殺を図ってな。それで根治出来る人間が現れるかかの国の皇帝が死ぬまで愛妾の『命』をながらえさせる為だとさ。おかげで皇后が怒り心頭で…。あの国、早晩滅びるか皇帝薨御かどっちかだろう」
「レッド、あの国行ってたんだ?」
アキラがその情報に補足する。
「不老不死の薬は結局途中で間に合わなくて、愛妾が亡くなった時に皇帝が自害して次の世代に移ったよ。まだ10歳の皇帝の誕生だった。それが2年前に起こった」
ヨアヒムが続ける。
「そうか、あれか。錬金術師ギルドにも依頼がきてな、薬は自分で調合しないと毒になる事を説明したけど信じなくて…。奴隷に飲ませるという話になった時に皇后が動いてそれはなくなった。その時の皇后は『自分で飲んでお試しなさい、それが出来ない愛なら愛とは申しません』って言って皇帝と愛妾一族をへこませてたな。愛妾の母親が自分が実験台になるって言ったけど…持たなかったよ、愛妾の方が。この話はギルドの連絡で来てたけど直接かかわった人間以外はどこの国かは教えてもらえなかった」
レッドは深いため息をついている。
その頃のマルク達
「馬を少し走らせてきた」
「ありがとう」
二匹の馬を馬車につないでヴァイキーはこの辺りを走ってきたらしい。馬の世話も済ませてきたという。マルクはヴァイキーに熱いコーヒーを差し出した。
「甘くするか?」
「いや、いい」
「俺にも一口」
魔剣が言い出した。
「珈琲だぞ?味わかるのか」
マルクが魔剣に尋ねる。
「気分だよ、気分」
ヴァイキーの剣と明確になってから魔剣は機嫌がすこぶるよい。上っ調子とも言える。
「じゃ、こうかな」
平たい皿に珈琲を注ぐ。
「これに剣の刃をつけてやったらいいかな?」
「んー」
ヴァイキーは魔剣を抜くとその皿のコーヒーをざばっと刃にかける。不思議な事に刃の上のコーヒーは吸い込まれていく。
「こんな感じなんであんま気にするな。俺のから適当にやるから」
ヴァイキーは改めてカップのコーヒーの香りを楽しんでいるし魔剣は静かになった。
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