竜の探索者 最大手のクラン、所属条件はクラン主のお眼鏡に叶うかどうかのみ。人種も身分も関係ない。僕らはみんな冒険者

ダンジョン攻略の章

59

　ブラッドの連れてきた若いドワーフは誰とも関わらず小屋を一つ占拠し、誰にも、そうブラッドにも合わずに過ごしていた。マリナは体がなまる、と少し遠いところまで散歩に出て森の中でキノコを採取している彼に出会った。

「どうしたの？」

うずくまる彼にマリナが声をかける。

「…足をくじいた。悪いが叔父を」

「どっちの足？」

「左だ」

普段ならポーションを持ち歩くのだが今日に限って忘れていたのだ。マリナましゃがみこむと左足にそっと手を添えた。

「ヒール」

マリナの声とともに彼のくじいた足が癒える。

「…ありがとう。すごいな、治癒魔法が使えるなんて」

「一応本職だからねぇ」

「治癒師が僧侶？」

ブラッドの甥は意外と人懐こかった。

「近い。聖女やってる」

「え？」

「元は冒険者だし、今も本業は冒険者、というか吸血鬼狩りが本業なのよね。聖女は選ばれちゃったから仕方なく」

ブラッドの甥は笑い出した。

「軽っ」

「んふふふ、そう言えば君の名前は」

ブラッドの甥は少し躊躇してから口にだした。

「本当の名前は叔父さんの名前もらってブラッドなんだ。ただ…」

ブラッドとマリナは並んで座っていた。そして甥は偉大な叔父に対するコンプレックスや名前が『重い』事などを話す。引きこもっていた間の飢えを満たすがごとく話している。

「名前が重いなら…ブラッドの甥だし、ブラッド・ジュニア。なんでジュニアとかどうかな」

「ジュニア…、いいな。名前を捨てるわけじゃないし未熟者の俺には丁度いい」

ジュニアは立ち上がって伸びをする。

「なんだろう、縮こまってた気持ちが解放された気分だ」

「あら、よかった。ゆっくり帰ろうか」

マリナの言葉にジュニアは頷いて二人はゆっくりと拠点へと向かった。





　材料採取を終わらせて、オールとブラッドの魔道具の門でアキラ達は帰宅した。帰宅するとブラッドがえらく機嫌がいい。

「どうした？」

アキラが宗介に聞くと、ブラッドの甥、ジュニアが自分からクランハウスに顔を出すようになったこと。なにか長々とブラッドと話してからブラッドが機嫌いいことを教えてくれた。

「その甥っ子さんは？」

アキラが尋ねる。

「ああ、エドモンドと一緒に街に行って冒険者登録済ませてくるって。マルクが街に行ってるからマルクとそろそろ帰っててくるんちゃうかな。今日は香辛料ぎょうさん頼んであるから」

「ってことは夕食は？」

「カレーに決まってるがな。あとクレープ焼いて、甘辛い鳥とレタス巻いて食べられるようにする予定」

アキラはにんまりと嬉しそうに笑った。