竜の探索者 最大手のクラン、所属条件はクラン主のお眼鏡に叶うかどうかのみ。人種も身分も関係ない。僕らはみんな冒険者

ダンジョン攻略の章

49

　「ま、一歩一歩やるしかないね。神官のステータス上げるには神殿籠りとか必要なんだろ？」

マルクの言葉にエヴァは頷いて同意を示す。マルクは鍋のふたの上でパンを焼いており、切れ込みを入れたパンにオリーブオイルを垂らすと川辺に生えていた青臭い草とサバを挟むと最初にエヴァ、そしてユリアーナ、エドガー、ルトガーと渡した。

「この草なに」

「クレソン。苦味が意外といいぞ」

エドガーはちょっと嫌な顔をするが食べ始めるとあまり気にならないようだった。しぶしぶ食べ始めたもののサバの方に興味は完全に移ったようでかなり美味しそうに食べている。


「ヨアヒム師匠、結局今日も昼は帰ってこなかったね」

エドガーのつぶやきにエヴァが

「あいつら、一つの事始めたらキリが付くまで他の事考えられないんだよね。アキラといるとアキラがすぐに『腹減った』って言うから、いい区切りがつくんだけど。ヴァイキーとヨアヒムだと、ね」

と苦笑いしながらエヴァが教えてくれる。結局その日二人が帰ってきたのは翌朝、皆が起きる直前だった。

「とりあえず10本、手に入れた。というか…生え方がわかった」

とヨアヒムとヴァイキーは疲れた顔で帰ってきた。

「よっと」

マジックバッグからヨアヒムは特製ドリンクレモネードを取り出し飲む。ヴァイキーにも一本渡す。

「…黒パンに炙ったチーズだな、二人とも」

そういいながら香ばしく焼き上げた黒パンに直火で炙ってとろけさせたチーズをナイフですくい乗せる。

「あ、しみじみ旨い」

珍しくヴァイキーが声を出した。二人が黒パンを二枚食べ終えてから寝ようとした時にルトガーが二人にクリアの魔法をかける。その瞬間でマルクが地面に厚手のシートを敷く。

「これの上だと腰は痛くならん」

そういわれて二人はがちがちの体をシートの上に横たえた。ら、寝落ちた。

「今日は酒いらずだな」

マルクはのんびりと言った。



　「よく寝た」

ヨアヒムは目が覚めたらしい。ヴァイキーはまだ寝ているようだ。

「今日も野営するか？」

マルクに言われてヨアヒムは首を横に振る。

「起こして帰ろう」



　夕飯が終わった後の時間にマルクの馬車は街中のクランハウスに着いた。

「今日はココな。拠点へは明日行く」

「魔物が心配なら」

エドガーが言いかけるとマルクが首を横に振る。

「馬だ。こいつらも限界だろ。休ませてやらないと。それに明日、朝一番でユリアーナの冒険者登録しないと」

ユリアーナが嬉しそうににこっと笑う。そこにエドモンドが入ってきた。エドモンドは最近このクランハウスを管理を兼ねて泊まり込んでいるのだ。

「おや、おかえり。夕飯は食べたのか？」

「いいところに。俺は馬の世話してくるからこの欠食児童たちになにか食べさせてやってくれ」

「わかった。エドガー坊ちゃん、ついてきてください」

そうして二人が夕食を入手してきた。

「結局ギルドで買ってきた。それが早いし」

「あそこだといつも人いるもんな」

マルクとエドモンドはこの家に管理人を置いた方がいいという話をしている。つかっていない家もあるので一家で住んでもらっていつ誰が来ても大丈夫にしておこうと話し合っている。

「あてはあるの？」

ルトガーに尋ねられtエドモンドは頷いた。

「姉の夫、ヒューゴの妹さん夫婦がいいかなと」

「父さんにもその話を？」

エドモンドは

「アキラの意向を聞いてから、ですね」

と答えたし、みなそれには納得した。