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ダンジョン攻略の章

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 「寝起きに不愉快なもの見に行くか…」

デヴィッドはそういって伸びをする。

「失敗してるとか思わないの?」

「思わない。マリナの実力もオールの実力も知ってるからな」

アキラの言葉にデヴィッドはそう答えた。



妖精王にその部屋の前まで連れて行ってもらう。

「オベロンは」

「見届けます。コアをいじめたやつなんで」

と憎しみを露わにして部屋を見ている。中で呪詛の言葉を吐いてるのは真っ赤な髪の美貌の女だった。蠱惑的な美女が毒を吐いているのは見ものではあるな、とアキラは眺めていた。

 一拍置いて皆で部屋の中に入る。

「何見てんのよ。この草取りなさいよ」

「噛みつかれてもなぁ」

オールがのんびり答える。

「今回は弱らせてからかな。血も使う自信ないな」

アキラがにやっと笑った。

「血が体内に入ればいいのだよね?」

マリナにアキラが尋ねる。

「ええ、それでいいの」

「じゃ、この剣の上にちを滴らせて」

「うん?」

「ちょっとなにするのよ」

マリナは素直にアキラの言うことを実践した。ルビーはわめいている。

「見ててね」

赤毛の美女の首筋をすれ違いざまに狙う。アキラは見事にやりとげた。

「う、うぅ」

マリナも好機を見逃さない。

「膝をついて口を大きく開けて」

美女は抗いながらも言うことを聞く。開けられた口が閉じようとするも閉じるより前にかなりのマリナの血が口に入った。

「名は?」

「ルビー」

マリナが尋問を始める。

「王は?」

「始祖の元へと旅立った、我々の元には…戻らぬぬぬぬぬ」

「サファイアはどこに?」

「最後にみたののののはこの国の王、王宮跡地」

「いつ?」

「ご、五年前」

「このモンスター津波はあなた達が起こしたの」

「起こりかけてた。コアを吸血鬼化させたら、あいつ抵抗して閉じこもった。あの部屋に入れてどんどん吸血鬼の血を入れた。大きくなるけど…人をたぶらかそうとしなかった。けど、あいつが管理しなくなって起きかけてた津波が確定した」

ルビーの体が揺れ始め言葉をしゃべれなくなってきた。

「…ちょっと血を入れ過ぎたかも」

そういいながらマリナは膝をついているルビーの頭を優しく包み込んだ。

「長い旅路でした。貴方が聖女だったころの記録は神殿に残っています。聖女見習いたちや神官たちも貴方の善き行いを尊敬してます。…貴方の旅路がディアーヌ様に照らされてますように」

祈りの言葉を唱えながらマリナは聖女の力を注ぎ始めた。

「あ、…あな、た、知って…た」

「知ってました」

マリナはルビーに彼女が聖女だった時の名前で呼びかける。ルビーの頬につっと赤い涙が伝う。

「あ、MPポーション飲ませて」

マリナの言葉にアキラはマリナの口に最上級のポーションを何滴か滴らせる。そもそもそういう量が一本の量なのではあるが。

「…なにこれ」

「最上級MPポーション」

「やばっ」

マリナの手が最後の力を込めルビは赤い拳を2個合わせたくらいの大きさの魔石になった。
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