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アキラの章
19
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「お話があります」
ニーアがきっぱりとデヴィッドにいう。
「なんですか?」
冒険者ではないニーアにデヴィッドは丁寧だ。
「グリーナーさんと二人、このクランハウスにいる時は夕食は二人でこちらに来てください。いくらなんでも籠りきりは…」
グリーナーはじっとデヴィッドを見つめる。
「グリーナーはどうしたい?」
優しいがなにかひんやりした毒のある声音でデヴィッドがいう。
「私は…、夕食はこちらで食べたい」
グリーナーはしっかりと自分の意思をもって答える。
「そうか。…このハネムーンが終わったらそうしよう。次の新月の時には王都へ向かって出立する。それまでは今の調子で過ごさせてもらう。私が仕事のある時はこちらで過ごしてもらうが。ちゃんと儀式を終わらせてお前が俺のモノになったら、…ずっと一緒に住めとは言わんがちゃんと時期を決めて一緒に過ごしてもらおう」
そういうとデヴィッドはグリーナーを抱きかかえようとして、ふと下腹部に手を当てた。その時一瞬、グリーナーの目に絶望の色が走る。
「グリーナー…、また一つ嘘があったな」
デヴィッドが怖い声になってグリーナーを抱きかかえると一瞬で消えた。
「オール、お前の兄貴」
「ああ、病んでる、あれは…やばい。グリーナーがかけてた避妊の魔法破壊しやがった」
「なんか本気で揉めてる?」
ヨアヒムが言う。
「あれ、ずっとあんな感じなんだよ。今回は兄貴本気らしくてああいう魔道具とか用意してるし…。よっぽど我慢してたのも知ってるしなぁ…、でもやばいよなぁ…」
ブラッドがオールの肩を叩く。
「後で俺が話し合ってくる」
ブラッドはデヴィッドのかなり古い知人で、オールが生まれる前から交流があったそうだ。そもそもブラッドとデヴィッドはパーティを組んでいた仲間らしい。夕食前にはブラッドは二人を伴って出てきた。デヴィッドは仏頂面だったが、グリーナーは心底助かったという顔になっていた。
「明日、王都に行ってちゃんと結婚の儀を済ませてくる」
デヴィッドはそう宣言した。
「どちらの家族も結婚に異はないし書類はそろってるからな」
「わかってる、ちゃんとサインするから」
グリーナーが諦めたように言う。
エルフの結婚の際に使われるのは魔法契約書で、両方のサインがあると魔力の強い方が魔力の弱い方を縛れるという怖いものであった。大抵は同レベル同士で結婚する事が多いのだがデヴィッドの場合はグリーナーを支配できるだけの魔力量の差があるのだった。
「兄貴はなんでそんなに結婚したいんだ?今すぐ子供が必要ってわけじゃないんだし」
グリーナーはちょっと焦り気味にオールをさえぎる。
「まぁまぁ、自分も同意してるから安心して」
ブラッドはデヴィッドが結婚を、儀式を急ぐ理由を聞いてしまっていた。グリーナーは過去に3度、『浮気』をしているのだ。他の男と寝たのが2回。そのうちの一人とはかなり長い期間関係があったらしい。そして1度は男性として異世界から来た女性と同棲し、彼女が亡くなるまで40年間一緒にいたらしく、もう二度とそういう自由ができないようにしばりつけたい、と言われたのだ。
グリーナーはブラッドに全部聞かれてしまって、どうしようと思っていた。そしてそういう浮気が全部ばれていたのか、やはりと思っていた。ここまで病んだ状態のデヴィッドを作り上げたのは自分だ、と思っていた。グリーナー自身は浮気自体に罪悪感はなかった。婚約も、重く考えてなかったし、デヴィッドもそこそこよろしくやっているものだと思い込んでいたから。
偶にブラッド達の森の家でかちあったときにはそういうことをやって、また次に会うときまで、みたいな、刹那的な性の相手、としてデヴィッドをとらえていた部分があったな、とブラッドとデヴィッドの会話を聞きながら思っていた。奥のベッドで自分とデヴィッドの匂いがするベッドの上でグリーナーはぐったりしていたが、一瞬で覚醒したのはデヴィッドが全裸でブラッドと対峙してると気が付いたからだ。
ニーアがきっぱりとデヴィッドにいう。
「なんですか?」
冒険者ではないニーアにデヴィッドは丁寧だ。
「グリーナーさんと二人、このクランハウスにいる時は夕食は二人でこちらに来てください。いくらなんでも籠りきりは…」
グリーナーはじっとデヴィッドを見つめる。
「グリーナーはどうしたい?」
優しいがなにかひんやりした毒のある声音でデヴィッドがいう。
「私は…、夕食はこちらで食べたい」
グリーナーはしっかりと自分の意思をもって答える。
「そうか。…このハネムーンが終わったらそうしよう。次の新月の時には王都へ向かって出立する。それまでは今の調子で過ごさせてもらう。私が仕事のある時はこちらで過ごしてもらうが。ちゃんと儀式を終わらせてお前が俺のモノになったら、…ずっと一緒に住めとは言わんがちゃんと時期を決めて一緒に過ごしてもらおう」
そういうとデヴィッドはグリーナーを抱きかかえようとして、ふと下腹部に手を当てた。その時一瞬、グリーナーの目に絶望の色が走る。
「グリーナー…、また一つ嘘があったな」
デヴィッドが怖い声になってグリーナーを抱きかかえると一瞬で消えた。
「オール、お前の兄貴」
「ああ、病んでる、あれは…やばい。グリーナーがかけてた避妊の魔法破壊しやがった」
「なんか本気で揉めてる?」
ヨアヒムが言う。
「あれ、ずっとあんな感じなんだよ。今回は兄貴本気らしくてああいう魔道具とか用意してるし…。よっぽど我慢してたのも知ってるしなぁ…、でもやばいよなぁ…」
ブラッドがオールの肩を叩く。
「後で俺が話し合ってくる」
ブラッドはデヴィッドのかなり古い知人で、オールが生まれる前から交流があったそうだ。そもそもブラッドとデヴィッドはパーティを組んでいた仲間らしい。夕食前にはブラッドは二人を伴って出てきた。デヴィッドは仏頂面だったが、グリーナーは心底助かったという顔になっていた。
「明日、王都に行ってちゃんと結婚の儀を済ませてくる」
デヴィッドはそう宣言した。
「どちらの家族も結婚に異はないし書類はそろってるからな」
「わかってる、ちゃんとサインするから」
グリーナーが諦めたように言う。
エルフの結婚の際に使われるのは魔法契約書で、両方のサインがあると魔力の強い方が魔力の弱い方を縛れるという怖いものであった。大抵は同レベル同士で結婚する事が多いのだがデヴィッドの場合はグリーナーを支配できるだけの魔力量の差があるのだった。
「兄貴はなんでそんなに結婚したいんだ?今すぐ子供が必要ってわけじゃないんだし」
グリーナーはちょっと焦り気味にオールをさえぎる。
「まぁまぁ、自分も同意してるから安心して」
ブラッドはデヴィッドが結婚を、儀式を急ぐ理由を聞いてしまっていた。グリーナーは過去に3度、『浮気』をしているのだ。他の男と寝たのが2回。そのうちの一人とはかなり長い期間関係があったらしい。そして1度は男性として異世界から来た女性と同棲し、彼女が亡くなるまで40年間一緒にいたらしく、もう二度とそういう自由ができないようにしばりつけたい、と言われたのだ。
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