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アキラの章

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 「シルクスパイダーか」

アキラが呟く。魔剣がアキラに

「大型種だろ?楽しみだ」

と言っている。

 ヨアヒム、ルトガー、エドガーの班は一緒に少し広い場所にシルクスパイダーが追い立てられて来るのを待つ。その追い立て役はオールがやってくれるらしい。そしてお偉いさん、年若い貴族の次男で錬金術を研究してるだった。その男の護衛は『虎の牙』で一気にきな臭くなったな、とアキラ、オール、ヨアヒムの三人は思った

 ルトガーもエドガーもそんなことには気が回らない。8本の巨大な足をエドガーが硬質な矢で地面に縫い留め、その上からルトガーが凍らせて地面と接着していく。そしてルトガーは徐々にその氷を補強していく。エドガーはもくもくと毒矢を打ち込む。
 エドガーが55本目の矢を打ち込むとやっと大きなシルクスパイダーが動かなくなった。そして、気が付くとエドガーとルトガーの周りは結界魔法で固められていてアキラ達が側にいた。

 「お、終わったか」

なぜかお偉いさんの護衛パーティが捕縛されている。

「なにがあったの?」

結界魔法を解きながらアキラが言った。

「こいつら邪魔をようとしてたんだよ。ただ、オールが気が付いて魔法阻害の粉をこいつらの周りに撒いておいてくれたからまにあった」

ルトガーが納得した顔になった。

「何回か、氷の溶けが早すぎるやつがあって理由がわからなかったんだけど」

オールが頷く。

「火魔法でじりじり溶かしてたみたいだね」

「せこいやつ」

ヨアヒムが呆れた声で言う。

「お前らにはまけねー」

虎の牙のリーダーがじたばたして叫ぶ。アキラが尻を蹴る。

「犯罪者がいうな。こういう妨害するやつは最悪冒険者資格はく奪になるし、軽くてもパーティーランク降格になる。それわかってるのか?」

そこにいた貴族がとりなす。

「まぁまぁまぁ、うちの愚弟がすまない。妾腹の末っ子だからみなで可愛がっててねぇ。もちろん私もだ。このことを黙っててくれたら見返りもだすぞ?」

「冒険者内のルールなんで…、今回すでにギルドに連絡をいれております」

オールが魔法の通信具を見せる。ブローチ型のそれは、ギルドの魔道具でギルドに音声と映像を送り続けるものであった。そして対になる魔道具はギルド長の手元にあって、ずっとモニターされている、らしい。

「なんとなくきな臭いのでギルドの方からこれも依頼されてましてね。…貴方と弟さんが一緒の仕事はなにかとトラブルが多いので危険視されていたようですよ?」

オールは虎の牙のリーダーに言う。

「私の名は全属性の魔術師オール、SSランクを頂く一人です。私の権限で貴方の処分を決めることもできますが、慈悲としてギルドに渡してあげましょう」

そこにいた、虎の牙もその貴族男性も、他に来ていた二組のパーティも固まっていた。年季を積んだ冒険者ならオールの名と伝説を知っていたからだ。
 その間にアキラは毒矢が刺さった大型のシルクスパイダーをアイテムボックスに入れる。アキラが皆に声をかける。

「とりあえず、ここから撤収するぞ。谷は封鎖だ」

 道々アキラからの説明を受ける。シルクスパイダーの大型種は3匹いたのだが、谷の最奥に『産卵前のメスの大型種』がいたので、産卵期でこのメスを護るために大型化しあようだ、と。シルクスパイダーは人を襲うわけではないので産卵が終わるまで谷の封鎖と餌の為の昆虫類を呼び込む為の果物の木をグリーナーに植えて成長させてもらい、谷を封鎖することにした、と。
 オールはそういう時に決定権を持つので今回は早めに手を打てた、ということらしい。

「えー、俺ら道化じゃん」

エドガーがぶーぶー言う。

「実働したのは君たちだけだね」

おーるは二人の頭を撫でる。

「いいこだね」

オールが撫でているのをブラッドがニコニコと笑い見ている。虎の牙のメンバーはオールの『捕縛袋』に入れられて馬車に積み込まれた。マルクが御す馬車の後ろを先ほどの貴族男性の馬車がしずしずと着きしたがって、この場所を離れた。
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