77 / 585
アキラの章
閑話 居酒屋の親父
しおりを挟む
「そう、電話の子機みたいなやつで喋れるの」
アキラと居酒屋の主人が他の人間には全くわからない言葉で喋っている。マルクは呆然と居酒屋の親父とアキラを見ている。
「こないだカレーライス作ってさ」
「どうしてもあの味わなー。今度は昭和のライスカレー食べさせたるさかい、おいで。俺の母親がつくっとったやつやから店みたいなわけにはいかんけどな」
アキラが嬉しそうだ。
「よその家のカレーって興味ある」
「せやな。どのおうちのも美味いんや、不思議と」
居酒屋の親父、鎌田宗介というらしい、は鳥肉を醤油と味醂と酒で味をつけ煮絡めている。横には黄色の錦糸卵と海苔が乗せられた丼飯が置いてある。
東の国からの輸入食品店で、これらの調味料を見た時に宗介は感動したらしい。味噌から何から買い込んで、そこの店主にこの世界で一番美味い魚は何か聞いて、市場でその魚を買い込んで照り焼きにして食べたら、どうもその魚は鰤とかなり味が近い。で、その魚を求めて海沿いの街に行って、そこに住み着いてる時にマルク達と出会った、という事だった。
元は食べるのが好きな独身リーマンで、天涯孤独になってからこの世界に来た、らしい。
何があったのかは本人にも分からず、気がついたら出勤中の格好でここにいた、と。
「さて、照り焼き丼だ」
宗介はこちらの言葉に切り替えて賄い飯を出す。また、アキラと話し出した。
「この国の貴族階級は大体フランスの名前にちかい。で、こちらの言葉や庶民の名前がドイツ語。古語って呼ばれてる言葉が英語とほぼ同じやな」
宗介はリーマン時代、ドイツとの取引があり多少ドイツ語を齧っていたのでこっちではカタコトでも生きて行けた、と。カバンに入れていた独和・和独辞典は手放さずに持っていたらしい。
最初の地点で、呆然としているとそこを通りがかった冒険者に
『どうかしましたか?』
と尋ねられどうもドイツ語の『どうかしましたか?』に聞こえたので一か八かでドイツ語で
『ここはどこですか?』
と聞き返し、そのまま冒険者ギルドに連れて行かれたという次第だったらしい。で、ギルドの厨房で働いてる時にこの国の台所用語を覚えたり、少し給料を貯めて街を彷徨いていろんな食料品店を覗いたりを繰り返して色々な知識を手に入れた、と。
「ギルドのな、芋の揚げた串はおっちゃんが考案したんや。芋の揚げ物もない、コロッケも。直ぐに冒険者ギルドの支店に広まったわ」
と楽しそうに日本語で話している。アキラに言うにはこっちの言葉、20年以上話してても細かいニュアンスが通じないから今日は久々に喋りまくってる、と。
マルクは宗介の名前、フルネームを初めて知ったし、こんなに喋る男だとも思ってなくて目を白黒させている。
「んな、アキラちゃん、また来てな」
店を出てからマルクは
「あんなに喋るオヤジ初めて見た」
と呟いた。
アキラと居酒屋の主人が他の人間には全くわからない言葉で喋っている。マルクは呆然と居酒屋の親父とアキラを見ている。
「こないだカレーライス作ってさ」
「どうしてもあの味わなー。今度は昭和のライスカレー食べさせたるさかい、おいで。俺の母親がつくっとったやつやから店みたいなわけにはいかんけどな」
アキラが嬉しそうだ。
「よその家のカレーって興味ある」
「せやな。どのおうちのも美味いんや、不思議と」
居酒屋の親父、鎌田宗介というらしい、は鳥肉を醤油と味醂と酒で味をつけ煮絡めている。横には黄色の錦糸卵と海苔が乗せられた丼飯が置いてある。
東の国からの輸入食品店で、これらの調味料を見た時に宗介は感動したらしい。味噌から何から買い込んで、そこの店主にこの世界で一番美味い魚は何か聞いて、市場でその魚を買い込んで照り焼きにして食べたら、どうもその魚は鰤とかなり味が近い。で、その魚を求めて海沿いの街に行って、そこに住み着いてる時にマルク達と出会った、という事だった。
元は食べるのが好きな独身リーマンで、天涯孤独になってからこの世界に来た、らしい。
何があったのかは本人にも分からず、気がついたら出勤中の格好でここにいた、と。
「さて、照り焼き丼だ」
宗介はこちらの言葉に切り替えて賄い飯を出す。また、アキラと話し出した。
「この国の貴族階級は大体フランスの名前にちかい。で、こちらの言葉や庶民の名前がドイツ語。古語って呼ばれてる言葉が英語とほぼ同じやな」
宗介はリーマン時代、ドイツとの取引があり多少ドイツ語を齧っていたのでこっちではカタコトでも生きて行けた、と。カバンに入れていた独和・和独辞典は手放さずに持っていたらしい。
最初の地点で、呆然としているとそこを通りがかった冒険者に
『どうかしましたか?』
と尋ねられどうもドイツ語の『どうかしましたか?』に聞こえたので一か八かでドイツ語で
『ここはどこですか?』
と聞き返し、そのまま冒険者ギルドに連れて行かれたという次第だったらしい。で、ギルドの厨房で働いてる時にこの国の台所用語を覚えたり、少し給料を貯めて街を彷徨いていろんな食料品店を覗いたりを繰り返して色々な知識を手に入れた、と。
「ギルドのな、芋の揚げた串はおっちゃんが考案したんや。芋の揚げ物もない、コロッケも。直ぐに冒険者ギルドの支店に広まったわ」
と楽しそうに日本語で話している。アキラに言うにはこっちの言葉、20年以上話してても細かいニュアンスが通じないから今日は久々に喋りまくってる、と。
マルクは宗介の名前、フルネームを初めて知ったし、こんなに喋る男だとも思ってなくて目を白黒させている。
「んな、アキラちゃん、また来てな」
店を出てからマルクは
「あんなに喋るオヤジ初めて見た」
と呟いた。
0
お気に入りに追加
64
あなたにおすすめの小説
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした
桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。
S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る
神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】
元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。
ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、
理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。
今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。
様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。
カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。
ハーレム要素多め。
※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。
よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz
他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。
たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。
物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz
今後とも応援よろしくお願い致します。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?
桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」
その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。
影響するステータスは『運』。
聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。
第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。
すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。
より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!
真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。
【簡単な流れ】
勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ
【原題】
『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』
俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜
平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。
『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。
この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。
その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。
一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。
元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜
一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。
しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた!
今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。
そうしていると……?
※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる