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ルトガーの章

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 アキラと麻袋を抱えたオールは王都方向の門をでた。

「本気の速さで行くぞ」

アキラのスピードもオールのスピードも尋常ではなかった。人目のない草原を思い切りのスピードで歩いていく。

「身体強化もかかっていないのにそのスピード。竜人ではないのに竜の瞳を持っている。かつ魔力はかるく私を凌ぐ」

オールはアキラの事をそう評価する。

「貴方は『何』ですか?」

アキラは少し考えてから返事をする。

「黒龍選抜の関係者、とだけ」




 その頃ルトガーは考えに考え、父親ラルフの元に向かった。今日は父親は多少余裕があるらしく、話があるというルトガーに

「ベルタの店に行こうか」

と誘う。ルトガーも同意し二人でゆっくり道をあるく。子供の頃に思っていた父親と違い意外と背も低いのだと思ったが、改めて自分が成長したのだとルトガーは理解した。
 今日のルトガーはチュニックにパンツにショートブーツというその辺にいる若者とそうは変わりなかった。腰につけてるマジックバッグのベルトにはブラッドが手慰みで作ってくれた革の鞘に短剣が収まっている。

 「父さん、俺、冒険者になろうと思っている。色んなものが見られると思うと…そっちの方がしっくりくるし。商売がしたくなったら自分で稼いで商売をしようと思ってる」

父親は少し寂しげに、しかし嬉し気に答えてくれる。

「わかった。この間、エドガーも『俺は家は継がないからね』って言いに来たしな」

運ばれてきた珈琲をラルフはゆっくりと飲む。

「お前たちが後をつがないなら、商会はエドモンドに残すつもりだ。レドモンドと一緒に作り上げた商会だからそれもいいと思ってる」

父親の言葉にルトガーは頷いた。

 「エドモンドも冒険者になると思ってたんだがな」

 十代の頃はエドモンドは全く父親の仕事にも興味を持たず。15になると同時に王都へ行って冒険者になってしまったと。その頃はまだここは国境の田舎町でギルドの支部もなかったのだという。そして、あのモンスター津波があって、この町は隣国、ルトガー達の故郷からの移民が増え、街の規模も大きくなっていったのだという。
 その時、ジスランの親たちや他の使用人は運よく国境にベリー摘みに出ていて助かったのだとか。ジスランとエドガーが学校の遠足だったので助かった。
 ウルリッヒ商会で隣国にいた人間はほぼ助かったらしい。こちらではない方の隣国、神国デアードに逃げた人員からは海沿いをキャンプしつつこちらに来た人間もいると。その時に護衛にはエドモンドとマルクの居たパーティが着いたという話は初耳だった。

「海沿いなら徒歩でデアードまでいけるんだ?」

「商売に使えるほど実用的ではないけどね。海の魔物と陸の魔物に挟まれる移動だから」

ルトガーは父親から聞く情報も知らない事が多いと思った。ルトガーは知りたいことが何なのかはまだわからないけど、もっと色々な事を見たいな、と考えながら父親の思い出話に付き合っていた。



=== ルトガーの章 完 ===

次の更新は金曜日、18日から再開します。
アキラの章です。
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