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ルトガーの章

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 「ってことで魔の森だ。ここからははぐれんじゃないぞ。俺たちも難しいからな、ここ」

アキラが正直に皆を指示する。この森は正しい道を行けば30分もかからないらしい。ジョンが何かを言うとアキラは頷いた。馬車と馬は入口にいるエルフが預かってくれる。帰りにはこの森を出たら馬車と馬が待ってるらしい。門番のエルフは若いのか年寄りかも性別もわかりにくかった。
 アキラはアイテムボックスから縄を何本も取り出した。

「二列に並んで、前の人と横の人と二人に腰の位置で縄をつないで。そうすれば途中ではぐれることはないからな。幸いなことに森の中では魔物はでない。というか魔物が出たらそれは間違った道だからな。俺とルトガーとランディは護衛なので縄とはつながらない。先頭はマルク、殿はジョンで。万が一マルクの目がルトガーを見失ったらこの笛を吹き続けてくれ。俺とランディには聴こえるが他の人には聴こえない」

マルクが試しに笛を吹いてみると確かに聴こえない。ランディとアキラは不快な顔をしている。マルクがそこで言う。

「俺とルトガーもつないでおいてくれ。入ったことないからわからんが…、いくつかある噂だと見えないとかなんとか」

マルクの言葉にアキラは頷きマルクとルトガーもつないだ。

「いたずらっけ起こして縄切ったりしても俺らは探さないからな?」

アキラはそういい、皆で森に入る。入口の門番の

「良い旅を」

との声を背に森の中へ入った。

「あ、これはだめだわ。上下も前後も左右もわからん。目になにか移ってるのに色々認識できない」

マルクの報告にアキラはルトガーに聞く。

「お前どうだ?」

「すっごい皮膚がひりひりしてるけど感覚はある。左側は匂いがしないけどまっすぐと右は嫌な匂いがする」

ランディとアキラは視界は普通だったが、ルトガーの言う『嫌な臭い』は感じられない。ランディとアキラの目は竜の力があるので視界をごまかされないのだ。ルトガーが右だ左だと指示してる途中でアキラが

「ちょっと止まって」

というとミューがいる位置まで走ってきた。

「お前、余裕あるな」

ミューの手にはナイフが握られていて隣の男性の腰ひもを切ろうとしているところだった。

「置いて行ってもいいが、面倒な事になるから王都までは連れていく。ただし、だ」

そういいながらミューの腰ひもをほどき、手首を縛り、肩に担ぎあげた。

「変態、やめて」

ミューはアキラのお尻をける。小柄なアキラにミューが担がれてるのは少しだけ笑える絵面だったが周りの誰もそれを認知できない。ミューはそこそこ背が高いのでかなりおかしな絵面になっている。

 それからも暫く歩いたのだが、出口に着いた時にはミューは芋虫のように縄にまかれ猿ぐつわも噛まされていた。

「ついた…」

マルクが心底疲れた声を出した。皆、地面に足が付いている感覚に喜びを感じている。ミューはそのまま地面に転がされている。迎えの人員がやってくる。

「その…縄でまかれた人は?」

「お仲間だ。ちょっと待ってろ」

ミューのさるぐつわを外すと大声でわめきだした。アキラはまた猿ぐつわを噛ます。

「うるさいんでこうなっている」

と森の中の出来事を話す。

「はぁ…あの森でそんなことができるということはエルフの呪い師の血が入ってますね。この子の出自はわかりますか?」

ダヴィド、ミューの親戚が手をあげる。

「うちの曾祖父が呪い師でした」

「名前は?」

ダヴィドがミューとの関係と曾祖父の名前を告げる。

「わかりました。護衛の皆さんはここで滞在、ということでいいのですか?」

「ああ。ここから先はあんたたちの領分だ」

出迎えのエルフたちは優雅にほほ笑んだ。

「では5日の間、こちらでお過ごしください」
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