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ルトガーの章

21 その頃のエドガー達

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 エドガーは通りすがりにジスランとすれ違った。妹の手を握り歩いている。妹とつないでないほうの肩には大き目の布袋、多分エリカに頼まれた買い物だろう、を持っている。

 道を挟んでエドガーと目が合う。今までだと威嚇するように睨むか、近寄ってきて小突く、そんな行動をジスランは取っていた。その日は目を合わすと、ジスランはぺこりと小さく頭を下げた。エドガーは今までとの反応の違いに驚いていた。エドガーは士官学校の帰りに冒険者ギルドによってお使いの肉串と玉ねぎ串、ピーマン串を買って帰っている所だった。
 普段は通らない時間に通ったことでジスランと会ったのだな、とエドガーは考えていた。子供の時のような恐怖感はもうジスランに対して感じていなかった。ジスランが妹の手を引いて買い物をしている姿を見かけるとも考えたこともなかった。
 
 「ただいまー」

帰るとニーアさんが野菜メインのスープを作って待っていてくれた。エドガーは皿を4つ出して串を分ける。ニーアさんは鳥の串と野菜の串を1本ずつでいいという。ニーアさんの分を取り分けるとあとはざくっと肉、野菜、芋と串を分けて各人で取り分けることにする。エドガーはその作業をすると、エドモンドとアークとブラッドを呼びに行った。
 皆で食卓に着くとエドガーはエルフにハーフエルフにドワーフに人間か、かなりバラエティ豊かな人選だよなと思う。これがアキラがやりたいことの一つなんだな、とも考える。
 アキラとはクランで作る村の話をしたりすることがあった。最終的に魔の森に東西、南北に道を通してこの国側とデアード側に大きな基幹の村をつくると。あと森の中の東西と南北の道が交わる所にも、とアキラは考えていた。その村々の中の一つを「クラン 竜の探索者」の村にしたい、と。職人もいて、農民もいて、狩人もいて。ギルドの代理でクランで仕事を受けて所属冒険者に割り振って、というシステムも作りたい、とアキラはきらきらした目で語っている。

 「今日の肉串は少し刺激が少なめかも」

エドガーがいうとブラッドも頷く。

「マルクがいたらスパイスでてくるんだけどな」

とアークも言う。皆、巡礼の一団は無事だろうかと考えていた。そろそろ森の入口に着くころか。10日ほど前、3人のエルフ男性が冒険者ギルドに怒鳴り込んだらしい。巡礼詐欺だ、と。今は巡礼団の帰還待ちなのだが、その3人がクランハウスに怒鳴り込んできたり、ルトガーとエドガーの実家だという事でウルリッヒ商会に悪評をたてようと頑張っている。

 が、クランハウスに怒鳴り込みに来た男たちはブラッドが手斧での戦い方をエドガーに教えているのを見て引き下がった、らしい。エドガーは全くそれは気が付いていなかった。最近のエドガーはかなり集中力が上がっている。ギルドでの裁定待ちなので今は一応クランとしての活動は停止している。エドガーは今は冒険者として動いていない。そしてオールはちょくちょくギルドに行ってなにかしているようだった。

 オールはなにか護符を作っている。家の門に張るらしい。

「クランハウスに害意を抱くとこの家の存在を認知できなくなる」

エドガーは士官学校で習った方法で鍛錬をしながら尋ねる。

「オールは認知阻害っていうの得意なの?」

「そうだな。これは家系に伝わる魔法でね。だから他の魔法よりも自然に使える。それこそ生活魔法よりもね」

エドガーは少し体が硬いのでストレッチを重点的にやっていた。肩のストレッチで少し無理に伸ばした時に関節が『バキッ』と音を立てた。

「いってぇ」

声をあげたエドガーにオールが治療魔術を施す。

「本当にオールって、どんな魔術でも使えるんだね」

オールはにこっと笑った。
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