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ルトガーの章

13 あるいは 閑話 マルク 03

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 何日も歩いたり、偶に宿屋に泊まったり。エドガーは毎日何かしら獣を狩っていた。この旅の間でエドガーはウサギや鳥ならさばけるようになっていた。

「やっぱ実践が一番かな」

アキラの言葉にマルクも頷く。

「俺もブラッドたちといる時に森で獲物取って覚えたよ。魚釣りもそうだな」

「へぇ。森の生活楽しかった?」

エドガーの問いかけにマルクは考えつつ言った。

「楽しい、とかわかんなかったな、あのころ。その生活しか知らないからね。あ、でもオールと一緒に行くベリー摘みは好きだったな。最後には飽きたけど。毎日摘みに行ってジャムつくって…って夏場に一年分のジャムを作るんだ。秋には栗拾ったりな。冒険者時代にかなり役に立ったさ」

アキラが遠慮なく聞く。

「結婚したってことは安定した生活に入るってこと?」

マルクは少し首を傾げる。

「別にニーアは俺が変わる事は期待してないからな。だから結婚しようと思ったんだよ。他人が変わる事を期待する女性は俺には向かない」

マルクはそういいながら腰を伸ばした。そろそろ森に一番近い村に着く。村に着いたら宿屋に馬車を預け、森まで歩く。ニーアさんもいつものワンピースではなく歩きやすい冒険者スタイルだ。




 「あと一息だから」

女性のニーアに合わせて三人は歩みを進める。時折マルクは離れて行って木の実を摘んできてはニーアの口に入れる。

「甘いだろ?」

ニーアが頷くと嬉しそうだ。

「なんだろう、…俺たちあおられてる?」

「ねー」

アキラとエドガーが笑いながら二人の後ろからついている。そこから半時ほどの移動で開けた場所に出た。その奥にこじんまりとした一軒家があった。

「オヤジどもー帰ってきたぞー」

 マルクの大声でその一軒家からエルフ、ハイエルフの青年が飛び出してきた。が、女性と少年2人連れを見ていぶかし気な顔をし、アキラを認めてもっといぶかし気な顔になった。

「おかえり、その一緒の方は誰かな?」

「嫁と仲のいい冒険者二人」

「ニーアと申します」

「エドガーです」

「アキラだ」

自己紹介をするとエルフは

「そうですか。私の事はオール、ともう一人の事はブラッドと呼んでください。アキラさんは一度お会いしたことありますよね?」

「ああ、昔のパーティのメンバーの斧のメンテナンスで来たことがある」

エルフの青年、オールは四人を家に招き入れた。

 マルクはマイペースで

「途中でジャムにできる実を採ってきたよ」

と茶色の素焼きの壺を老ドワーフ、ブラッドに渡す。

「で、誰が奥さんなんだ?」

とオールがマルクに尋ねる。

「あ、うん。ニーア、おいで。こちらが俺の奥さんのニーア、半エルフの女性だ」

オールはニーアの頬に触れると瞳の中を覗き込んでいる。二人ともずっと動かない。いきなりオールとニーアはエルフの言葉で会話を始めた。他の人間には全くわからない。15分もやり取りをしていた。その間にドワーフは見事な手つきでお茶を入れる。

「あ、煎茶」

アキラの言葉にドワーフは頷いた。

「偶に、街から取り寄せる」

低い声でドワーフが答えた。

ややあって、オールとニーアも落ち着き、全員がテーブルに着く。

「一度ニーアをエルフの首都に連れて行かないといけない。帰ってくるまでマルク、お前の家でブラッドを預かってほしい。ここに一人で置いておくと、際限なく仕事受けるからな、ブラッドは」

「うち、街中の寮なんだよなぁ」

とマルクが悩む。アキラが

「部屋あるし、うちのクランハウスで暮らしてもらったらいいよ。庭もあるし、かなり広いし。な、エドガー」

煎茶の味におっかなびっくりだったエドガーは

「いいと思う。あそこなら一人になりたいなら部屋にこもればいいしね」

と答えた。
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