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閑話 1

ジスラン 3

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 最近のジスランは兄の補佐に回っている。兄はエドモンドの補佐で雑用をしている、そうするとそれまで兄の役目だった家のことがジスランに回ってくる。弟妹の面倒も屋敷の外に出られないジスランには楽しみになっていた。

「妹が弟と一緒なら買い物に行っても良い」

家庭教師役のエリカにそう告げられジスランは喜びよりも先に困惑した。

「俺、ずっと外に出られないかと思ってた」

  ジスランが素直に言うとエリカが笑う。

「今、エドガー坊ちゃんに会ったらどうする?横にはミカ、妹がいるの」

ジスランは少し考えた。

「挨拶する。ミカと一緒だし。ミカに危ないとこ見せたくないし、危ない目に合わせたくない」

エリカは言う。

「今までのあなたは家族に守られるだけだった。今は『家族』を守ろうとしてる」

エリカは続ける。

「そうなると、あなたは自分がしてきた事、何かわかってるよね?」

ジスランは頷いた。

「エドガー坊ちゃんに謝れとは言わない。坊ちゃんも謝罪は要求しないと思う。あなたが真面目に暮らす事、奥様に関わらない事を旦那様も坊ちゃん方も希望してる」

ジスランは真面目に話を聞いている。

「まだ、あなたを独り立ちさせる事は出来ないけど、まずは街に出る事から始めましょう。ミカちゃんは女の子だし、買い物とか外出はジスランと一緒の方が安全だしね」

 ジスランはここに来た当初、二度と屋敷の外には出られないんだなと思っていた。

 最初は母親がエドガーに優しいから気に食わなかった。だんだん、お小遣い目当て、ストレスの解消とエドガーを殴る理由にしていた。

 ジスランはエドガーに思い切り蹴られた日から、彼我の差を考え続けている。エドガーの事がむかつかないというと嘘になるけど、奥様にエドガーを殴るたびに言われていた「ジスランはいい子」という言葉が不気味に思えるようにもなった。

 奥様とエドガーの話に巻き込まれた、という事は今はわかっている。今はあの頃のような暴力衝動はない。今あるのはエドガーと自分の差、だった。

 立場に不平はない。ただ、こんな風に家から出るにも許可が無いと出られないような人間に自分は成り下がっている事、それが虚しく寂しいだけだった。

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