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エドガーの章

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 「ふう、よく食った」

アキラは両掌を合わせると『ゴチソウサマデシタ』と呟いた。食べる前には『イタダキマス』と言っていた。

「それは?」

アキラのしぐさにエドガーが不思議そうな顔になる。

「うちの国の食後の挨拶。さっきの『イタダキマス』は食前の挨拶」

「食前食後で挨拶があるんですね。僕らは食前の祈りだけですね」

アキラは

「それと変わんないと思う。でも宗教というより我々のは習慣、かな。宗教的な云々もあるんだろうけど」

 ふと無言になった。そのタイミングで、食後のお茶が運ばれてくる。エドガーには紅茶だった。アキラを見ると濃い目の珈琲が運ばれてきたが素直に多めの砂糖とミルクを入れていた。アキラは自分より年上ではあるけれど無理に大人ぶらないんだなとエドガーは思った。

 「ま、よくある事だな。あいつらはそろそろ結婚や家の事を考えないといけない。俺はそういう点は自由な身だからな。ここで袂を分かつことにしたわけだ」

ざっくりとアキラが説明する。

「『竜の探索者』の名前は俺が継続して使う。あいつらは故郷なり、街なりに住んで今みたいに飛び回らない生活をする、って事になった。あの中にこの街出身の奴が2人いてな。そいつらが里心ついたみたいで。そのうちの片方、ポーション作ってた男はそのままギルドお抱えの錬金術師をするって言ってた。職員が古なじみで口をきいてくれるんだって」

アキラは肩をすくめる。

「こうやって別れたりするのは寂しいなぁ。近い将来はクランを作ってクランで村を作るんだ。冒険者もいて、農業してる人もいたり、商売もしてたり…、そんな夢があるんだよ、俺」

 クランで村を作る、そんなことを考えているのかこの人はとエドガーは思った。各クランはクランハウスを持っている。それは常識だったがクラン村なんて聞いたこともない、エドガーはそう思いながらアキラはそれを実行するだろうな、と思った。
 アキラにはなにか特別なエネルギーを感じるのだ。それがなにかはエドガーにはわからないが、アキラに引きずられつつあるのは理解していた。

 「エドガーはどこかクランとかパーティ組んでるの?」

「俺はまだF級で15になったらE級を受けて独り立ちするひよっこなんで。今のところ基本は採取任務、偶に川で大魚ビッグフィッシュの鱗狙うくらいなんで」

エドガーは正直に自分の事を話す。ここで飾っても意味はないと思っている。過度に期待されるのもごめんだった。今持っている武器、短剣はギルドに入った時に支給される品だし、厚手のチュニックも商会のB級品で自分の防具もない、そんな状態であった。

「一緒にいる金髪のやつは、兄貴?従兄?よく似てるけど」

「兄です」

「彼もF級?」

「そう」

アキラは口をとがらせてる。

「そっか。即戦力にはならないもんだな。エドガーは素直だし、性格も穏やかだから一緒に組みたかったのになぁ」

アキラは残念そうだった。

「ま、いっか。一旦今のパーティの件落ち着いたらこの辺りでしばらくだらだらしておく。エドガーが試験受けて合格したら、記念にどこかの迷宮もぐろうよ。ここの近場の迷宮もそこの頃にはおちつくだろ。ってか落ち着かせる」

「迷宮、どうなってるんですか?」

アキラがさらりと言う。

「スタンビートおきかけてるか、ダンジョンコアの書き換えが起きてるか。そのあたりの探査任務なんだ。これが成功したら竜の探索者の構成員全員S級認定になるから引退してもらえる年金が跳ね上がるから、降格とかする前に引退したいっていうのが他のやつらの意向」

エドガーは素直に疑問を口にする。

「失敗したら、とか思わないんですか?」

アキラはにかっと笑う。

「失敗?するわけないじゃん。俺がいるのに」

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