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エドガーの章

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 馬車の揺れが止まった。どうもかつての自宅だなとエドガーが思った。外ではエドモンドとジョンの声がしている。

「奥様にお届け物だ」

「まだあきらめてないのか」

ジョンの呆れた声だった。

「旦那様と会いたければ商会へ来るといいってお伝えを」

「ああ」

ジョンのため息交じりの声だった。

「俺が行く、のはだめだろうなぁ」

「でしょうね…。商会がいやなら奥様のご両親のところへ、とでも」

エドモンドの言葉にジョンは唸るような声で答えた。

「そろそろ会わせないととは思ってるんだが」

「エドガー坊ちゃんが生まれてからだから10年以上だもんなぁ」

 そのあとはぼそぼそと話しているのでエドガーの耳には届かない。兄も聞いていたようで二人とも互いの顔を見る。エドガーはルトガーの顔を見ながらこの人のしっかりしたあごや首のライン、以外に肉厚の手などは父親とそっくりだな、と思っていた。ルトガーはエドガーの髪のカールの仕方や質は手入れしたら母親そっくりの毛質になりそうだと思った。絹のように細い絡まりやすそうなくせ毛は母親そっくりであった。カタリナとエドガーはよく似た髪質だなとも思ったがそれを言うとエドガーはもちろんカタリナも嫌がりそうだな、とルトガーは思った。ルトガーとユリアーナは父親そっくりの癖のない直毛だった。ルトガーも父親ラルクも髪を長めに伸ばしているのはまっすぐの髪が落ちてきてうるさくないように縛るためだった。


 「今日はどっちに帰るんだろう」

いつもと違う道筋でエドガー達が帰ると、そこは以前住んでいたアパートだった。学校やギルドにも近い場所だった。エドモンドがドアを開けると以前、母方の親戚だと紹介されたことのある1/2エルフの女性がいた。

「今日から通いで家事をしてくれるニーアさん」

ニーア、この人はジョンの母親なのだがエドガーもルトガーもそれを知らない。ニーアはお辞儀をした。

 「結局、ばらけて暮らした方が安全、だと?」

エドモンドの説明を聞いた後ルトガーは聞いた。

「ええ、学期がおわるまではここの方がお二人とも都合がいいだろうということです。ここは建物全部が商会の物なので比較的安全である、というのも大きいですけど」




 今日はルトガーとエドガーは帰宅後に二人で袋を抱えて冒険者ギルドへ行った。アパートには「夕飯はギルドで取るから自分たちの分はなくていい」と伝えて行った。
 この薬草の売上でギルドの食堂で何か食べようというのが二人の計画であった。

「いいタイミングだ」

グリーンポーション草の納品をみて横のカウンターにいた自分と同じ年頃の少年が言った。

「俺はアキラ・クキ。ちょっとどうしもポーションが欲しくてここに来たところなんだ。原料が買えるならそれにこしたことはない」

 「”竜の探索者”さんとは取引をしたいけど…これ納入先が決まってるんですよ」

ギルドも譲らない。

「うちのパーティの錬金術師だとHQ率高いからここで作るより量が増やせる。ポーションを作らせてくれるなら出来上がった半量はそちらに譲る、ならどうだ?」

「そちらに恩は売りたいんですけどねぇ」

職員はもう一声という感じであった。
 竜の探索者、これは最近伸びているパーティで今はAランクだが近いうちにSランクになるだろうと注目されているパーティであった。
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