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エドガーの章

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 その頃、エドガーとルトガーは今住んでいるのとは街をはさんで反対側に位置する小さな別荘へ運ばれていた。

 「すぐ用意しますからね」

御者はそういうと、鍋に野菜とベーコンを入れたスープを作り、鉄鍋に丸いパンを入れて軽く温める。ふとエドガーはおやつの紙袋を思い出した。

「マルク、これもあっためて」

マッシュポテトの揚げたのと肉の串を持ってきた。

「おや、ぼっちゃんいいものを持ってますね」

そういうとパンをあたためた鉄なべに薄くバターを塗り、片側に鳥串を串から外し、片側に芋のボールを入れ温めた。

 スープが配られパンも肉や芋も配られた。そこに、エドモンドが入ってきた。エドガーもルトガーも冒険者になってから覚えた匂い、血の匂いがうっすらとする。

「エド、ケガしてないか?」

ルトガーが心配そうに尋ねる。

「あ、私はケガしてません。相手は自分のナイフで自分を切ってたからその血がついたのかも」

としれっとした顔で答える。

「夕飯食べろ」

御者が残してたものを出してきた。

「おや、おいしそうですね。エドガー坊ちゃんが買ってた串、食べなかったんですか?」

エドガーは頷いた。

「ブランカがいるところで食事したくない」

エドガーはきっぱり言った。

 食事をしながらエドモンドが説明してくれる。このところカタリナ二人の母親からの干渉がひどく、住所を知らせていないラルクの現住所を知りたいらしく今日はチンピラまで雇っていたという話と、エドモンドはラルクから言われて二人を迎えに来て馬車でぶっちぎろうとしたもののブランカがいたので旧ウルリッヒ邸につけたあと、もう一つの家が見つからないように、とこちらに来たと。父親は今日は商会に泊まる予定で手紙ですべて知らせてある、らしい。
 今日は御者のマルクとエドモンドの過去の話を聞かせてもらう。マルクとエドモンドはこちらの国の生まれ育ちで、エドモンドは父母が商会に勤めていて、母親がこちらの支店で事務をやっていて、エドガー達が生まれた国にはいたことがないということ。エドモンドの母親はこちらの人だということ。マルクとエドモンドは中学から20才になるまで二人で組んで冒険者をやっていた事。そんな話を聞いていた。

 「そろそろ遅いですね。明日は学校には行けないのと我々はおとりになります」

ルトガーとエドガーは顔を見合わせた。

「旦那様が奥様に与えてるお金はそう、ものすごく潤沢とは言えません。なんでそれを削ってまで旦那様の住居を知りたいのか、現状商会に行けば会えるし顔も見られるのですけどね」

 エドガーは思いついたことを口にした。

「そういえば、母さんって友達っているの?」

エドモンドとマルクは顔を見合わせた。

「外にも出ないし」

ルトガーも疑問を口に出した。

「母さんが街に出てるの見たことないんだけど」
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