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第五章
ロクサーヌとネイサンの結婚式
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「マドレーヌちゃん。綺麗よ」
銀の髪は片側に流したみつあみにされ、そこここに白い花が刺されている。これはアルノー夫人とマリアンヌが刺繍の技を駆使して作った花であった。ドレスは真珠色で領下で切り替えるデザインでコルセットは使わなかった。これはロクサーヌの結婚式の時に実家のドレスを利用してネイサンがロクサーヌのためにコルセットを使わないドレスを考えて作ってから王都で流行っているデザインであった。
ロクサーヌのコルセットが嫌だなと行った小さなつぶやきをネイサンは拾い上げ、ネイサンは色々と考え、いあっまでになくまともに歴史を勉強し、コルセット以前の女性の服のデザインからデザイン画を起こし、ベルティエ公爵に提案をした。元より娘に甘い公爵はロクサーヌが満足するならばと先祖伝来のウェディングドレスにネイサンがハサミを入れることを許した。『そもそも、時代に合わせて細かい所は修正してるからね』とジェラールはいう。『今回はちょっと大がかりだったけど』とジェラールは笑っていた。
ベルティエ前公爵は寝たままベッドごと式を挙げる神殿に転移させられる。傍には同じように温情でネイサンの式を見ることを許可されたネイサンの母親である正妃がついている。二人とも表舞台には出られないので神殿の隠し部屋に通されていた。
「アグネスと二人きり、か」
「そうですね。……嘘、なんでウジェが」
ウージェーヌとベルティエ公爵が談笑しているのを部屋の窓越しに見て部屋の外に走り出ようとしたが正妃の願いは叶わなかった。エリクによって外から完全にロックされていたのだ。狂乱している娘の姿を見ても前公爵は見ているだけだった。孫息子と孫娘の晴れ姿を見たいだけだったのだ。
「ネイサンの晴れ姿は見んのか?」
平坦な前公爵の声で正妃は正気に戻った。前公爵はかなり弱っていた。正直、通ってくる神官たちの力でぎりぎり生きている状態だった。孫たちの式が終われば神官の力を借りるのも辞めるつもりであった。ただ目の前の娘の事は心配であった。
蟄居させられている館には下級貴族がほかに数人いるが基本的には女性と男性がわかれている。そして王都内なのはわかるがいつも館に霧がかかっているというのが正妃の愚痴であった。前公爵の部屋から見えるのは大きな木が揺れている空が見えるばかりであった。
前公爵は娘の目が悪くなったのだろうと考えていたがこれは正妃が外に出て衛兵などを見て自分がどこにいるのか悟らないようにかけられた暗示であった。なので療養所というか蟄居場所を出ると暗示は関係なくなる。また移動は魔導師による移動だったので部屋から部屋であり、位置を悟られる恐れはなかった。
「ロクサーヌも綺麗だわ」
正妃は別に姪を嫌ってるわけでなかったので普通の感想を述べる。
「ネイサンもちゃんとやってるな」
前公爵はもごもごと言う。
「ネイサンは以外と陛下と似てるのねぇ。もっと私に似た子だと思ってた」
式が終わり、前公爵と正妃が部屋に戻る前にジェラールが部屋に顔を出す。エリクも入ってくる。
「思ったよりお元気そうで」
息子にそう声をかけられた前公爵は皮肉な表情になった。が、口をついて出たのは憎まれ口であった。
「死にかけの爺の顔を見に来たのか?」
「……入っておいで」
ジェラールが声をかけネイサンとロクサーヌが入ってきた。さすがに前公爵の目に涙が浮かぶ。
「今日をもって王族でなく、ロクサーヌの夫となりました」
ネイサンが神妙に挨拶をする。この後正妃を加えしばらく新郎新婦と罪人二人は話し、ジェラールと新婚夫婦が先に部屋を辞してエリクだけが残った。
「では部屋に戻りますよ。この程度しかしてあげられません。神殿の最大の温情です」
前公爵は鷹揚に頷き正妃は肩をすくめた。
「お茶とか出ないの?」
「お帰りになってから、ですね」
エリクは外に待っていた魔導師に声をかけて二人を部屋に送っていった。
銀の髪は片側に流したみつあみにされ、そこここに白い花が刺されている。これはアルノー夫人とマリアンヌが刺繍の技を駆使して作った花であった。ドレスは真珠色で領下で切り替えるデザインでコルセットは使わなかった。これはロクサーヌの結婚式の時に実家のドレスを利用してネイサンがロクサーヌのためにコルセットを使わないドレスを考えて作ってから王都で流行っているデザインであった。
ロクサーヌのコルセットが嫌だなと行った小さなつぶやきをネイサンは拾い上げ、ネイサンは色々と考え、いあっまでになくまともに歴史を勉強し、コルセット以前の女性の服のデザインからデザイン画を起こし、ベルティエ公爵に提案をした。元より娘に甘い公爵はロクサーヌが満足するならばと先祖伝来のウェディングドレスにネイサンがハサミを入れることを許した。『そもそも、時代に合わせて細かい所は修正してるからね』とジェラールはいう。『今回はちょっと大がかりだったけど』とジェラールは笑っていた。
ベルティエ前公爵は寝たままベッドごと式を挙げる神殿に転移させられる。傍には同じように温情でネイサンの式を見ることを許可されたネイサンの母親である正妃がついている。二人とも表舞台には出られないので神殿の隠し部屋に通されていた。
「アグネスと二人きり、か」
「そうですね。……嘘、なんでウジェが」
ウージェーヌとベルティエ公爵が談笑しているのを部屋の窓越しに見て部屋の外に走り出ようとしたが正妃の願いは叶わなかった。エリクによって外から完全にロックされていたのだ。狂乱している娘の姿を見ても前公爵は見ているだけだった。孫息子と孫娘の晴れ姿を見たいだけだったのだ。
「ネイサンの晴れ姿は見んのか?」
平坦な前公爵の声で正妃は正気に戻った。前公爵はかなり弱っていた。正直、通ってくる神官たちの力でぎりぎり生きている状態だった。孫たちの式が終われば神官の力を借りるのも辞めるつもりであった。ただ目の前の娘の事は心配であった。
蟄居させられている館には下級貴族がほかに数人いるが基本的には女性と男性がわかれている。そして王都内なのはわかるがいつも館に霧がかかっているというのが正妃の愚痴であった。前公爵の部屋から見えるのは大きな木が揺れている空が見えるばかりであった。
前公爵は娘の目が悪くなったのだろうと考えていたがこれは正妃が外に出て衛兵などを見て自分がどこにいるのか悟らないようにかけられた暗示であった。なので療養所というか蟄居場所を出ると暗示は関係なくなる。また移動は魔導師による移動だったので部屋から部屋であり、位置を悟られる恐れはなかった。
「ロクサーヌも綺麗だわ」
正妃は別に姪を嫌ってるわけでなかったので普通の感想を述べる。
「ネイサンもちゃんとやってるな」
前公爵はもごもごと言う。
「ネイサンは以外と陛下と似てるのねぇ。もっと私に似た子だと思ってた」
式が終わり、前公爵と正妃が部屋に戻る前にジェラールが部屋に顔を出す。エリクも入ってくる。
「思ったよりお元気そうで」
息子にそう声をかけられた前公爵は皮肉な表情になった。が、口をついて出たのは憎まれ口であった。
「死にかけの爺の顔を見に来たのか?」
「……入っておいで」
ジェラールが声をかけネイサンとロクサーヌが入ってきた。さすがに前公爵の目に涙が浮かぶ。
「今日をもって王族でなく、ロクサーヌの夫となりました」
ネイサンが神妙に挨拶をする。この後正妃を加えしばらく新郎新婦と罪人二人は話し、ジェラールと新婚夫婦が先に部屋を辞してエリクだけが残った。
「では部屋に戻りますよ。この程度しかしてあげられません。神殿の最大の温情です」
前公爵は鷹揚に頷き正妃は肩をすくめた。
「お茶とか出ないの?」
「お帰りになってから、ですね」
エリクは外に待っていた魔導師に声をかけて二人を部屋に送っていった。
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