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第五章
ロクサーヌたちの卒業式 7
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しかしさすがにレアが近づくと令嬢や貴族たちはフロランとアルの周りから一歩下がる。
「フロラン、約束のダンスを」
フロランとレアは約束もなにもしていないので戸惑いながらも差し出された手を取る。
「兄様はもう少し頑張ってもらうとして」
レアがフロランにだけ聞こえるように言う。
「縁談とかうるさくなりそうなら、『父に任せてますから』とでも言いなさい。馬鹿正直に相手をすることはないわ。あなた、精霊の花婿なんでしょ」
「はい」
レアはすぐにフロランを開放した。そしてアルに近づいた。
「兄様、喉乾いた」
アルは笑いながら給仕を探し果実水のグラスを受け取ってレアの元に戻った。戻ると婚約者持ちの令嬢たちの姿が減っていたし、フロアでダンスをしている人数はかなり増えていた。
「どうやったの?」
アルが小さな声で妹に訊ねるとレアはくすっと笑いこちらも小さな声で耳打ちをする。
「外から見てたら婚約者の男性たちがじりじりして自分の婚約者見てたからね。……フロアの険悪なこと」
レアは肩をすくめる。アルがフロアに目をやるとベルティエ公爵がロクサーヌと踊っていた。
「ネイサンと父親と最後もネイサンかな?」
「ああ、最後はフロラン。これでフロランは高位令嬢も手を出しにくくなる。手を出すなら正式にウージェーヌ様に伺いを立てて、ってなるから」
「ふーん」
アルは今一つ社交界の機微には疎い。フロランは国内の同世代の女性のトップとその次の地位にいる、レアとロクサーヌという二人の女性のお気に入りであると公言されたのだ。不真面目な令嬢は近づきにくくなった。
「レアは最後は誰と踊るの?」
嗜みの良い令嬢は一つのパーティでは3回以上踊らないことになっている。
「お父様よ」
レアはにっこり笑う。
「これ、下手したらフロランが私の婿候補って思われちゃうかも」
レアは楽しそうに笑っている。
パーティも中盤を過ぎると今一つ反応の良くない『王太子』だけに人は構っていられなくなった。アルは人ごみから抜け出してテラスに出た。フロランはなぜか高位貴族の青年たちに囲まれている。その様子を見て少し笑った。ふとテラスの端を見ると見慣れた銀髪が見える。
「マドレーヌ」
「アル殿下。休憩中なんです」
「わかってる、ここは騎士用のテラスだよね」
アルは面白そうにしている。マドレーヌは頷いた。
「下手に貴族用のテラスに行ったら休めないからね」
マドレーヌはくすっと笑う。
「悪い人ですね」
アルはウインクで答える。かすかに中の音楽が聞こえてくる。
「マドレーヌ、一曲いいかな」
「え……。私騎士服ですよ」
「いいから」
アルはマドレーヌの手を取り音楽に合わせてマドレーヌを腕に入れる。
「こうやって踊る相手は……マドレーヌがいいな」
「アル……」
マドレーヌは戸惑いを隠せない。
「全部、俺に委ねなさい。……別に表に出ろって言わない。出なくていいように考えるから。グランサニュー公爵やウジェ殿の手も借りるし。俺の傍ならフロランもいるし」
マドレーヌが困惑しているとレアとロクサーヌもこのテラスに来た。
「私もロクサーヌも協力するし」
レアがきっぱり言う。
「そうだね、マドレーヌはアル殿下の横だとフロランやウジェ様の横にいる程度には安心して見えるよ」
ロクサーヌも後押しする。
「だからって軽々しくはいっていうのも……」
ロクサーヌがアルからマドレーヌを受け取る。
「マドレーヌ、どうしたいの?悩むより動くほうがマドレーヌらしいよ」
ロクサーヌは美しいしドレス姿なのに王子様のように見えた。からといって、マドレーヌが姫、という風情ではなく、王子と王子が絡んでるように見える。
「やっぱり、マドレーヌはロクサーヌとよね」
レアはなにか怪しいことを呟いている。
「フロラン、約束のダンスを」
フロランとレアは約束もなにもしていないので戸惑いながらも差し出された手を取る。
「兄様はもう少し頑張ってもらうとして」
レアがフロランにだけ聞こえるように言う。
「縁談とかうるさくなりそうなら、『父に任せてますから』とでも言いなさい。馬鹿正直に相手をすることはないわ。あなた、精霊の花婿なんでしょ」
「はい」
レアはすぐにフロランを開放した。そしてアルに近づいた。
「兄様、喉乾いた」
アルは笑いながら給仕を探し果実水のグラスを受け取ってレアの元に戻った。戻ると婚約者持ちの令嬢たちの姿が減っていたし、フロアでダンスをしている人数はかなり増えていた。
「どうやったの?」
アルが小さな声で妹に訊ねるとレアはくすっと笑いこちらも小さな声で耳打ちをする。
「外から見てたら婚約者の男性たちがじりじりして自分の婚約者見てたからね。……フロアの険悪なこと」
レアは肩をすくめる。アルがフロアに目をやるとベルティエ公爵がロクサーヌと踊っていた。
「ネイサンと父親と最後もネイサンかな?」
「ああ、最後はフロラン。これでフロランは高位令嬢も手を出しにくくなる。手を出すなら正式にウージェーヌ様に伺いを立てて、ってなるから」
「ふーん」
アルは今一つ社交界の機微には疎い。フロランは国内の同世代の女性のトップとその次の地位にいる、レアとロクサーヌという二人の女性のお気に入りであると公言されたのだ。不真面目な令嬢は近づきにくくなった。
「レアは最後は誰と踊るの?」
嗜みの良い令嬢は一つのパーティでは3回以上踊らないことになっている。
「お父様よ」
レアはにっこり笑う。
「これ、下手したらフロランが私の婿候補って思われちゃうかも」
レアは楽しそうに笑っている。
パーティも中盤を過ぎると今一つ反応の良くない『王太子』だけに人は構っていられなくなった。アルは人ごみから抜け出してテラスに出た。フロランはなぜか高位貴族の青年たちに囲まれている。その様子を見て少し笑った。ふとテラスの端を見ると見慣れた銀髪が見える。
「マドレーヌ」
「アル殿下。休憩中なんです」
「わかってる、ここは騎士用のテラスだよね」
アルは面白そうにしている。マドレーヌは頷いた。
「下手に貴族用のテラスに行ったら休めないからね」
マドレーヌはくすっと笑う。
「悪い人ですね」
アルはウインクで答える。かすかに中の音楽が聞こえてくる。
「マドレーヌ、一曲いいかな」
「え……。私騎士服ですよ」
「いいから」
アルはマドレーヌの手を取り音楽に合わせてマドレーヌを腕に入れる。
「こうやって踊る相手は……マドレーヌがいいな」
「アル……」
マドレーヌは戸惑いを隠せない。
「全部、俺に委ねなさい。……別に表に出ろって言わない。出なくていいように考えるから。グランサニュー公爵やウジェ殿の手も借りるし。俺の傍ならフロランもいるし」
マドレーヌが困惑しているとレアとロクサーヌもこのテラスに来た。
「私もロクサーヌも協力するし」
レアがきっぱり言う。
「そうだね、マドレーヌはアル殿下の横だとフロランやウジェ様の横にいる程度には安心して見えるよ」
ロクサーヌも後押しする。
「だからって軽々しくはいっていうのも……」
ロクサーヌがアルからマドレーヌを受け取る。
「マドレーヌ、どうしたいの?悩むより動くほうがマドレーヌらしいよ」
ロクサーヌは美しいしドレス姿なのに王子様のように見えた。からといって、マドレーヌが姫、という風情ではなく、王子と王子が絡んでるように見える。
「やっぱり、マドレーヌはロクサーヌとよね」
レアはなにか怪しいことを呟いている。
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