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第五章
ロクサーヌたちの卒業式 5
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「これを持って帰って寝かせといて。勝手に起きるから」
どうしようか悩んでいたら隣のタウンハウスに住む子爵子息が騎士科の生徒の中にいたのでそこにいた教諭の許可をとり、王都内のグランジエのタウンハウスに馬車を呼びに行ってもらった。フロランは馬車の中に母親を寝かせると御者に言いつけて家に『持って帰らせる』。
「最近奥様とメイド長の外出が多いです。一日置きに出ておられて……。マリアンヌ様もさみしそうですし。マドレーヌ様に少し顔を出すようにお伝えいただけませんか?」
詳しい事情を知らないというかメイド長とジョアンにマドレーヌは王都で遊び歩いているから親が在宅中のタウンハウスに帰らないのだと吹き込まれているようだった。
「爺さんかオヤジに言ってくれ。母上とマドレーヌは接触させてはならんって言われてないか?何を聞いているか知らんが、今回の件は母上が原因の事だ。今一度オヤジに説明を入れてもらうようにする」
いつもにこにこしているフロランが厳しい表情で御者に告げ御者は奥様何をしでかしたんだろうとひっそりと考えた。母子喧嘩かねぇ。おとなしい嬢ちゃんと公平な坊ちゃんだと思ったが、と御者はのんびりと考えながら馬車を出した。
「さて、と俺たちが帰る足は」
精霊が言う。グランサニューの樹のところに公爵がいたので守護者を通じて目立たない家紋の入ってない馬車を出してもらうようにしたからと。『さすが!ありがとう』とフロランが告げると『マドレーヌも心配だしね』と精霊は照れくさそうに言う。
マドレーヌの話をフロランとアルで聞く。ここはグランサニュー公爵領の守護者の樹の下である。
「マドレーヌ、……オフクロが今日みたいに殴ることはしょっちゅうだったのか?」
「年に1回ないくらい。かーっとなってなにかわめいて殴って、正気に戻る感じ?ストレス抱えてたんでしょ」
マドレーヌはこれと言ってひどいことだと思っていないようだ。
「ちょっとまて、……もしかしてメイド長にも折檻されてた?」
「うん。誰かがお皿割ったりしてたの、私だと思った時とかだけだよ」
「……わかった」
フロランの空気が怖い感じでマドレーヌは不思議だった。アルはマドレーヌが周りと一枚膜を隔てたような反応なのは何かの守護を受けて心を守ってもらっているのか、と思った。一度エリク神官長に見てもらおうと心に決める。
「なぁ……君達の母上、最近感情の激化がすごいのだけど」
「俺もそう思う」
何度か顔を合わせているアルがいい、フロランが同意する。マドレーヌはきょとんとしている。
「とりあえず神官長に聞くしかないか」
「心理操作ならあの人に勝つ人はいないだろうね」
アルがにこっと笑う。アルとフロランは王都内でのマドレーヌの通学も馬車で、とマドレーヌに頼み込む。
「できたら演習の時は教えてくれ。オフクロを止める」
「でも、お母様、私に用があるのでは?」
「俺が聞いておくから」
「……フロラン、握りつぶさない?」
さすがに兄妹でマドレーヌはフロランのやり方を心得ていた。
「わかった。オヤジの許可があればマドレーヌに伝える。許可が出なかったら伝えない」
マドレーヌはくすっと笑う。
「許可出さないと思うな、父様」
「マドレーヌ……」
アルは静かに兄妹のやり取りを見ている。
「一緒にいると親子兄弟、手の内ってわかるもんなんだな」
アルがつぶやくとフロランがずばっという。
「陛下は無理。うちのオヤジも大概だけど陛下とグランサニュー公爵は無理。あ、エリク神官長も無理」
アルの脳内で守護者がげらげら笑っている。マドレーヌも同意なのかくすくす笑っている。唐突にマドレーヌがフロランに言った。
「ね、私、マリアンヌと会いたい。母様がいないところで」
どうしようか悩んでいたら隣のタウンハウスに住む子爵子息が騎士科の生徒の中にいたのでそこにいた教諭の許可をとり、王都内のグランジエのタウンハウスに馬車を呼びに行ってもらった。フロランは馬車の中に母親を寝かせると御者に言いつけて家に『持って帰らせる』。
「最近奥様とメイド長の外出が多いです。一日置きに出ておられて……。マリアンヌ様もさみしそうですし。マドレーヌ様に少し顔を出すようにお伝えいただけませんか?」
詳しい事情を知らないというかメイド長とジョアンにマドレーヌは王都で遊び歩いているから親が在宅中のタウンハウスに帰らないのだと吹き込まれているようだった。
「爺さんかオヤジに言ってくれ。母上とマドレーヌは接触させてはならんって言われてないか?何を聞いているか知らんが、今回の件は母上が原因の事だ。今一度オヤジに説明を入れてもらうようにする」
いつもにこにこしているフロランが厳しい表情で御者に告げ御者は奥様何をしでかしたんだろうとひっそりと考えた。母子喧嘩かねぇ。おとなしい嬢ちゃんと公平な坊ちゃんだと思ったが、と御者はのんびりと考えながら馬車を出した。
「さて、と俺たちが帰る足は」
精霊が言う。グランサニューの樹のところに公爵がいたので守護者を通じて目立たない家紋の入ってない馬車を出してもらうようにしたからと。『さすが!ありがとう』とフロランが告げると『マドレーヌも心配だしね』と精霊は照れくさそうに言う。
マドレーヌの話をフロランとアルで聞く。ここはグランサニュー公爵領の守護者の樹の下である。
「マドレーヌ、……オフクロが今日みたいに殴ることはしょっちゅうだったのか?」
「年に1回ないくらい。かーっとなってなにかわめいて殴って、正気に戻る感じ?ストレス抱えてたんでしょ」
マドレーヌはこれと言ってひどいことだと思っていないようだ。
「ちょっとまて、……もしかしてメイド長にも折檻されてた?」
「うん。誰かがお皿割ったりしてたの、私だと思った時とかだけだよ」
「……わかった」
フロランの空気が怖い感じでマドレーヌは不思議だった。アルはマドレーヌが周りと一枚膜を隔てたような反応なのは何かの守護を受けて心を守ってもらっているのか、と思った。一度エリク神官長に見てもらおうと心に決める。
「なぁ……君達の母上、最近感情の激化がすごいのだけど」
「俺もそう思う」
何度か顔を合わせているアルがいい、フロランが同意する。マドレーヌはきょとんとしている。
「とりあえず神官長に聞くしかないか」
「心理操作ならあの人に勝つ人はいないだろうね」
アルがにこっと笑う。アルとフロランは王都内でのマドレーヌの通学も馬車で、とマドレーヌに頼み込む。
「できたら演習の時は教えてくれ。オフクロを止める」
「でも、お母様、私に用があるのでは?」
「俺が聞いておくから」
「……フロラン、握りつぶさない?」
さすがに兄妹でマドレーヌはフロランのやり方を心得ていた。
「わかった。オヤジの許可があればマドレーヌに伝える。許可が出なかったら伝えない」
マドレーヌはくすっと笑う。
「許可出さないと思うな、父様」
「マドレーヌ……」
アルは静かに兄妹のやり取りを見ている。
「一緒にいると親子兄弟、手の内ってわかるもんなんだな」
アルがつぶやくとフロランがずばっという。
「陛下は無理。うちのオヤジも大概だけど陛下とグランサニュー公爵は無理。あ、エリク神官長も無理」
アルの脳内で守護者がげらげら笑っている。マドレーヌも同意なのかくすくす笑っている。唐突にマドレーヌがフロランに言った。
「ね、私、マリアンヌと会いたい。母様がいないところで」
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