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第五章
演習場の出来事
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「みつけた!」
ジョアンは騎馬で演習に向かう騎士科の生徒たちに混じるマドレーヌを見つける。
「……どこへ行くのかしら」
ジョアンはウージェーヌに『マリアンヌを引っ張りまわすな。疲れが抜けてないだろう』と叱られそれはそうだと納得した。そして学園への出入口が見える安宿の二階の一室を借りて腹心のメイド長と交代で学園を見張っていたのだ。
フロランの精霊はそのあたりにいる精霊に頼みジョアンを見張っていた。しかしジョアンが辻馬車を借りて騎士科の演習についていくとまでは思ってなかったので動くのが少し遅れた。
フロランが演習場所の郊外の演習場に着いた時には事が起こっていた。
「マドレーヌ!」
ヒステリックな声が演習場に響く。教官がマドレーヌに訊ねる。
「グランジエ嬢、君の関係者かね?」
「……母親だと思います」
マドレーヌは周りが母親を自分に近づけないようにしてる音を知らないので教官に許可をとって演習の列を離れ母親の元に行く。
「どうし」
マドレーヌは最後まで言えなかった。右頬を平手で張られぐらついたところにジョアン渾身のこぶしがこめかみを襲った。ジョアンが怒りの余り手を出したのだ。
演習場の芝生の上にマドレーヌが頽れたのとフロランが最短距離を精霊の力を借りて滑りこみジョアンの手足を押さえつけるのが同時だった。ジョアンはマドレーヌを踏みつけようとしたところだった。
「オフクロ、何やってんの」
「フロラン、止めないで。あたしはこの子のせいでマリアンヌにお乳をやれなかったのよ。マリアンヌの体が弱いのはこの子せいだ」
ジョアンは積年の心に秘めていた悲鳴のような本音を叫んだ。やっとフロランに追いついたアルが呆然としたマドレーヌを抱き上げる。
「頭くらくらしてるか?」
「少し」
アルはフロランとジョアンのののしりあいが外に漏れないよういと二人の周りに習いたての遮音結界をはる。心の中ではこれ変に利用されなきゃいいけどと思いつつであった。
目に入ったベンチにマドレーヌを寝かせて魔法で濡らしたハンカチをマドレーヌの額に乗せる。マドレーヌがくすっと笑う。
「どうした?」
アルが少し焦っているがマドレーヌは笑ったまま返す。
「殿下、すっかり魔法を自然に使うようになりましたね」
「……笑ってないで。何があったんだ?」
マドレーヌはけろっとしている。
「ああいって急に感情を爆発させて殴るのはお母様の癖みたいなもんです。あの爆発したら少しは落ち着くでしょう」
「昔からか?ウジェ殿はなんと?」
マドレーヌは感情を見せない目で答える。
「知らないんじゃないですか。人の目があるところでああいう風にわめくのは初めて……でもないか。メイド長と二人でいるときにもああなってたから。まぁすっきりしhたら理由も聞けると思いますよ」
「マドレーヌ……」
フロランはわめく母親を抑えるのを止めた。アルが遮音結界を張ってくれたので母親のヒステリーをじっくり聞くいい機会だと思ったのだ。精霊は『聞くに値しないと思うよ』と言っている。ともかく、マドレーヌを妊娠したおかげでマリアンヌを母乳で育てられなかったこと、ヤギの乳で育てたからあんなに体が弱いのか、とかマドレーヌは他人であるが人の母乳で育ったがら丈夫なんだや、マドレーヌが受ける幸せはマリアンヌに全部来るべきだなどと気がくるってんなぁとフロランが思うよう事を口走り続ける。が、少し落ち着いてきたのでフロランは母親を演習場の事務所に誘い座らせた。
フロランはマジックバッグに入れていた水をマジックバッグの中に入れている木製のカップに注いで渡す。
「まず、落ち着いて飲んで」
カップにれたのは水は水でも聖水であった。
「なにこれ。まずい」
「ああ、ごめん。バッグに入れてたやつ」
「ちゃんと綺麗にした水でしょうね?」
「うん。沸かしすぎたみたい」
ジョアンが聖水をまずいと言ったことは精霊を通じ神殿の精霊に伝えられている。
「で、母さんはなんでここに来たの?」
ジョアンは騎馬で演習に向かう騎士科の生徒たちに混じるマドレーヌを見つける。
「……どこへ行くのかしら」
ジョアンはウージェーヌに『マリアンヌを引っ張りまわすな。疲れが抜けてないだろう』と叱られそれはそうだと納得した。そして学園への出入口が見える安宿の二階の一室を借りて腹心のメイド長と交代で学園を見張っていたのだ。
フロランの精霊はそのあたりにいる精霊に頼みジョアンを見張っていた。しかしジョアンが辻馬車を借りて騎士科の演習についていくとまでは思ってなかったので動くのが少し遅れた。
フロランが演習場所の郊外の演習場に着いた時には事が起こっていた。
「マドレーヌ!」
ヒステリックな声が演習場に響く。教官がマドレーヌに訊ねる。
「グランジエ嬢、君の関係者かね?」
「……母親だと思います」
マドレーヌは周りが母親を自分に近づけないようにしてる音を知らないので教官に許可をとって演習の列を離れ母親の元に行く。
「どうし」
マドレーヌは最後まで言えなかった。右頬を平手で張られぐらついたところにジョアン渾身のこぶしがこめかみを襲った。ジョアンが怒りの余り手を出したのだ。
演習場の芝生の上にマドレーヌが頽れたのとフロランが最短距離を精霊の力を借りて滑りこみジョアンの手足を押さえつけるのが同時だった。ジョアンはマドレーヌを踏みつけようとしたところだった。
「オフクロ、何やってんの」
「フロラン、止めないで。あたしはこの子のせいでマリアンヌにお乳をやれなかったのよ。マリアンヌの体が弱いのはこの子せいだ」
ジョアンは積年の心に秘めていた悲鳴のような本音を叫んだ。やっとフロランに追いついたアルが呆然としたマドレーヌを抱き上げる。
「頭くらくらしてるか?」
「少し」
アルはフロランとジョアンのののしりあいが外に漏れないよういと二人の周りに習いたての遮音結界をはる。心の中ではこれ変に利用されなきゃいいけどと思いつつであった。
目に入ったベンチにマドレーヌを寝かせて魔法で濡らしたハンカチをマドレーヌの額に乗せる。マドレーヌがくすっと笑う。
「どうした?」
アルが少し焦っているがマドレーヌは笑ったまま返す。
「殿下、すっかり魔法を自然に使うようになりましたね」
「……笑ってないで。何があったんだ?」
マドレーヌはけろっとしている。
「ああいって急に感情を爆発させて殴るのはお母様の癖みたいなもんです。あの爆発したら少しは落ち着くでしょう」
「昔からか?ウジェ殿はなんと?」
マドレーヌは感情を見せない目で答える。
「知らないんじゃないですか。人の目があるところでああいう風にわめくのは初めて……でもないか。メイド長と二人でいるときにもああなってたから。まぁすっきりしhたら理由も聞けると思いますよ」
「マドレーヌ……」
フロランはわめく母親を抑えるのを止めた。アルが遮音結界を張ってくれたので母親のヒステリーをじっくり聞くいい機会だと思ったのだ。精霊は『聞くに値しないと思うよ』と言っている。ともかく、マドレーヌを妊娠したおかげでマリアンヌを母乳で育てられなかったこと、ヤギの乳で育てたからあんなに体が弱いのか、とかマドレーヌは他人であるが人の母乳で育ったがら丈夫なんだや、マドレーヌが受ける幸せはマリアンヌに全部来るべきだなどと気がくるってんなぁとフロランが思うよう事を口走り続ける。が、少し落ち着いてきたのでフロランは母親を演習場の事務所に誘い座らせた。
フロランはマジックバッグに入れていた水をマジックバッグの中に入れている木製のカップに注いで渡す。
「まず、落ち着いて飲んで」
カップにれたのは水は水でも聖水であった。
「なにこれ。まずい」
「ああ、ごめん。バッグに入れてたやつ」
「ちゃんと綺麗にした水でしょうね?」
「うん。沸かしすぎたみたい」
ジョアンが聖水をまずいと言ったことは精霊を通じ神殿の精霊に伝えられている。
「で、母さんはなんでここに来たの?」
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