悪役令嬢、冒険者になる 【完結】

あくの

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第五章

くみかわす

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 「さっきの守護者様の『解呪』と関係あるのか?」

マドレーヌの祖父は頷いた。

「マリアンヌの魅了の封印が解けたようだ。北から帰ってきたらみんな変になってた」

マドレーヌの祖父は話す。昔から素地はあった、と。マドレーヌとフロランを放置してクロードとマリアンヌにかかりきりだった妻とジョアンの話をする。

「あの二人は嫡男と体の弱い子が大事で愛おしい、それは別にいい。ただマドレーヌやフロランは母親、ジョアンとの心のつながりを育む時間もなく過ごした」

「エマも気にしてたな。マリアンヌ嬢が側に来るたびに自分に対する『圧』がある、と。あとマドレーヌ嬢は育ってない部分があるみたい、と」

「おんならしさとか?」

グランサニュー公爵は首を横に振る。

「情緒だな。安定はしてるし理性的で論理は解する、ただこう……詩や音楽に動く心というような部分の情緒だな。……あんたもウジェも苦手そうだがね」

マリアンヌの祖父はそっぽを向いている。

「フロランもだな。それでも精霊様に護られている分、マドレーヌよりはましかも」

ごまかすようにそう言う祖父に公爵は落ち着いて返した。

「エマに任せる。エマは育てる事が得意だよ。ただし、矯めるような事はしない。その子がその子らしくあるように育てるのが得意だ。……お陰で長男はあれだし次男はあれだし」

公爵もかなり遠い目になる。

「お嬢さんは?新聞王の所に嫁いだんじゃ?」

「ちがう。その会社の雑誌編集長になったんだよ」

公爵は遠い目のまま答える。

「あの子は……好きな男の子を産む為に家から出て、ロマンス作家になってそのまま新聞王の下で『編集長』とやらをしてるんだ。新聞王には奥方がいてな、天涯孤独で体が悪い女性らしくて離婚はできない、と。なら子供を産むわってことで家をでて、我が家と縁を切って」

「……うちの子らはよっぽど大人しく見える」

「おとなしいとおもうぞ」

公爵は話を続ける。

「一時な、貴族令嬢が平民の金持ちと結婚するというロマンス小説が流行ったんだ。令嬢の生活が貴族の生活を垣間見させて庶民にも人気になって。……そういうのをうちの娘は書いて流行らせてな……」

マドレーヌの祖父は公爵に少し同情した。

「……しっかりしたお嬢さんだな」

「しっかりはしてるが……、家を捨てるほどあの男に惹かれてるとは思わなんだ」

「……孫娘の男関係がここまで大事になるとは思わなんだよ」

マドレーヌの祖父の愚痴返しに公爵は頷くしかなかった。

「お陰で何代もに渡った闇カジノの正体もわかったしな」

公爵は続けた。

「アルノーのカジノの系譜が潰れても他のが出てくるだろうけどな」

「闇カジノも節度を守ってくれちゃ、庶民の息抜きになるんだがな」

「結局権力者が噛むかどうかあたりか……」

「そうさな」

二人はなにかしんみりとした顔になっている。

「そうか……、そうだな」

公爵が顔を上げる。

「公営のカジノを作ろう。闇ではなく。計画着手まで色々炙りだせそうだな」

マドレーヌの祖父は呆れた、という表情で公爵を見る。

「俺は巻き込むなよ。ウジェはどうせ、ジェラール坊やや神官長を巻き込むなら巻き込まれるな」

マドレーヌの祖父の言葉に公爵はにんまり頷いた。
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