悪役令嬢、冒険者になる 【完結】

あくの

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第五章

眼が覚めるとそこは……

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 目の前に滑らかな女の背中と赤い髪がみえた。

「う、うぉっ」

「え?なんで?アル?まず眼をつぶって」

アルは素直に眼を瞑る。声の主がロゼであったし、声に命令の気配が混ざっていたので多少の強制力もあった。

「……フロランがエディに抱きしめられて苦しんでるわ」

ロゼがアルをつついて眼を開けさせる。ロゼが指を指した方を見ると床に男二人が転がっている。

「……苦しそうっていうか嫌がってる?」

アルは起き上がって自分の状態を確認し、一安心した。チュニックも鹿皮のスパッツも着けたまま、ベルトも固く締まっている。このベルトを外すには少しこつがいるのだ。
 エディはと見ると全裸であったがこれはいつもの事だった。エディは屋内で眠れるときは何も着ない。フロランは上半身裸であった。そして腹に化粧品で顔が描かれている。
エディの腹も同様だった。

「……何やってたかは理解できた気がする」

「アル、理解はしなくていい。こいつらアホだろ」

ロゼが呆れている。

「ちょっとまって。珈琲?お茶?」

「ロゼがいつも飲む方で」

「……アホふたり起こすのならパンを焼く匂いと珈琲かな。アルはこっちおいで」

 ここはロゼとエディの小屋であるとロゼはあるに説明をする。北の領地での仕事が長引いているのでクランのメンバーで交代で休みを取って自分の家に帰っている事、この領地に戻ってギルドに一端よったらどんちゃん騒ぎだったとロゼは話す。

「はい、朝食。二日酔い、ってことば無いみたいね」

「ああ。ちょっとまだ残ってる感じはあるけどな」

「とりあえずは朝食お腹にいれてから、かな」

ロゼはにっこり笑った。

「で、あんたたちと合流してうちの家で飲もうってなったのは覚えてる?」

アルは昨夜のうっすらとした記憶を思い出す。

「ぼんやりと」

アルは正直に言う。

「腹踊りがいつからだったか私も覚えてないんだよね……」

「俺も記憶にないな」

目玉焼きが乗った四角いパンをアルとロゼはぱくついている。

「……最悪の気分だ」

フロランがチュニック姿で起きて来た。

「……服に色がつくよ、ちゃんと拭きとってあげるから上脱いで」

フロランは有無を言わさず台所で上着をはがれ、腹の顔の絵を落された。

「なんで腹に絵を?」

アルに大真面目に聞かれてフロランは憮然と答える。

「昨日はなんでか精霊が止めないから飲み過ぎて記憶ない……。産まれて初めてだ」

「今は精霊は?」

アルが訊ねるとフロランは憮然としたまま答える。

「笑ってる。大爆笑してる」

「うん、なんかちょっと聞こえるね。私に力を貸してくれてる風の子もちょっと笑ってる」

ロゼが言う。ロゼは風の精霊の力を借りれるがこれは加護と言うほど強いものではないと言う。

「うちの精霊が……『加護をさずけようかって言ってる精霊がいるよ』って。そうすると魔の森で便利だからお勧めはする」

「どの辺境の魔の森でも」

ロゼに問われフロランは頷いた。

「結構稼ぎは良くなるよ」

「うーん、それは魅力的だわ」

「七日後にまた来るからその時に」

ロゼはにっと笑った。

「わかった。時間くれてありがとう。エディとも相談して決める」


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