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第五章
アプローチ開始
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マドレーヌは今日も学園で補習を受けて疲れた顔で帰ってきた。
「おかえり」
アルが図書室から声をかける。
「……ただいま。王宮に帰らないんですか?」
「まだね。アルノー伯の件がおさまるまでは辺境でっていうかこの領地の守護者様の樹のケアをってさ。エマ様が今、北の樹のケアしておられるし」
アルが手に持っている本を見てマドレーヌは思わず溜息をついた。
「この本がどうかしたの?」
アルに問われてマドレーヌはつらつらと答える。今日の補習の範囲で会ったと。
「算術なんかは答えがきっちりあるのでわかりやすいんですけど……基礎教養の古典文学が苦手なんですよね。物語の中の人の思った事を書けとか言われても」
マドレーヌは深くため息を着いた。アルは笑いながら言う。
「そういう時はね、当該登場人物に関する文章で『〇〇だと思っていた』っていう文章所前後にいかにも教師が気に入りそうなおためごかしを付け加える、って言う事をするのさ。何問かそうやって解いたらその教師が気に入る答えが判るからそれにそって解答を作成するといいよ」
マドレーヌは少し笑顔になる。
「……なんか殿下、性格悪い」
「そうかな?解釈なんて読んだ人の数だけあるんだしそんなもので点数をつけなきゃいけない教師も面倒だろうから少しでも気に入るものを読んで気分を良くしえもらおうというサービス精神だよ」
アルはこの解答の書き方を教えてくれたのはエリクだったなと思い出す。アルの基礎教養はエリクに教わったのだが本当に物語や史実の骨子を教えるだけだった。『私の解釈を殿下に伝授する必要は無いと思います』とエリクは言ったうえで『他人に対しての見栄と満足を与える解答』を教えてくれる。一見耳に心地よいが内容を<相手が好きに>解釈はできるが肝心なところで言質を与えない解答、あくまで一般論を教えてくれるそんな授業をエリクから受けたのだ。
これはアルにとって他国に飛ばされてからも有用だった授業だった。エリクとの授業で悟った『言質を与えてはいけない人間はいる』という感覚は冒険者を続けていくのにも必要な感覚だと思っている。ましてや妖怪のような貴族たちとやりあわなければいけないという炊いt場に立つなら特にそうだと最近は覚悟を決めている。
父親のあの妙に軽いへらっとした感じはそれはそれで防具なのだと考えていた。自分の正確だとあんな風に軽やかには動けないなと思っていたが、父親の世代の人間、エリク神官長もウージェーヌも軽やかだったのでこれから付き合いを深める貴族たちもあんな風に軽やかなのかなと思う。この国にいた少年時代、自分はあまり貴族子弟と関わらずに生きて来た。正妃から疎まれていたのもあるしセイラ妃がひっそりとした人であったのも大きかったのだと思う。南の辺境伯の嫡男は自分の従弟にあたるんだなと思い至りフロランにどんな人物か聞いたりして少しは情報を集めてはいる。
フロランは『うちの兄妹、……人付き合い、上手いとは言えないからなぁ。俺も数人の子爵男爵の子弟と仲良くしてたんだけど、うちの爵位が上がった事で付き合いづらいっつか相手に避けられるようになっちゃって』と肩を竦めている。話を聞くとグランジエ家は夜会に出る事も稀で貴族づきあいは辺境4家とグランサニュー公爵家とだけだったらしい。ウージェーヌが正妃に粘着されていたので逃げていたという。
フロランは貴族関係ならベルティエ公爵に聞くのが一番じゃないのかと言う。彼が一番、常識があるから、と。
「エリク神官長は忙しいし、グランサニュー公爵でもいいとは思うけど」
フロランがそんなことを言ってるとウージェーヌが二人がいる部屋に入って来て教えてくれる。
「あのじーさん、このところ社交界から逃げてるから情報が古いぞ。ジェラールに聞いとけ」
とさっさとベルティエ公爵家に約束を取り付けてくれたので明後日公爵自らがグランジエ領に来るという。アルは目の前のマドレーヌに意識を戻す。
「さて、荷物置いて来るといい。俺とフロランは居間で夕食前に話してるよ。着替えて出ておいでよ」
「夕食前には姉様の所で軽いお茶をしてるので。……姉様、フロラン兄様と顔合わせたくないらしくて……」
マドレーヌは心配そうに眉を寄せる。アルは、フロランとマリアンヌ、意外と性格も似てるよなと思いつつマドレーヌと別れる。
「では、夕食の席で」
「……わかりません、姉様が寂しいなら私と姉様とおばあ様で夕食を共にするので」
マドレーヌはなんの他意もなくそう言って自室へ向かった。
「おかえり」
アルが図書室から声をかける。
「……ただいま。王宮に帰らないんですか?」
「まだね。アルノー伯の件がおさまるまでは辺境でっていうかこの領地の守護者様の樹のケアをってさ。エマ様が今、北の樹のケアしておられるし」
アルが手に持っている本を見てマドレーヌは思わず溜息をついた。
「この本がどうかしたの?」
アルに問われてマドレーヌはつらつらと答える。今日の補習の範囲で会ったと。
「算術なんかは答えがきっちりあるのでわかりやすいんですけど……基礎教養の古典文学が苦手なんですよね。物語の中の人の思った事を書けとか言われても」
マドレーヌは深くため息を着いた。アルは笑いながら言う。
「そういう時はね、当該登場人物に関する文章で『〇〇だと思っていた』っていう文章所前後にいかにも教師が気に入りそうなおためごかしを付け加える、って言う事をするのさ。何問かそうやって解いたらその教師が気に入る答えが判るからそれにそって解答を作成するといいよ」
マドレーヌは少し笑顔になる。
「……なんか殿下、性格悪い」
「そうかな?解釈なんて読んだ人の数だけあるんだしそんなもので点数をつけなきゃいけない教師も面倒だろうから少しでも気に入るものを読んで気分を良くしえもらおうというサービス精神だよ」
アルはこの解答の書き方を教えてくれたのはエリクだったなと思い出す。アルの基礎教養はエリクに教わったのだが本当に物語や史実の骨子を教えるだけだった。『私の解釈を殿下に伝授する必要は無いと思います』とエリクは言ったうえで『他人に対しての見栄と満足を与える解答』を教えてくれる。一見耳に心地よいが内容を<相手が好きに>解釈はできるが肝心なところで言質を与えない解答、あくまで一般論を教えてくれるそんな授業をエリクから受けたのだ。
これはアルにとって他国に飛ばされてからも有用だった授業だった。エリクとの授業で悟った『言質を与えてはいけない人間はいる』という感覚は冒険者を続けていくのにも必要な感覚だと思っている。ましてや妖怪のような貴族たちとやりあわなければいけないという炊いt場に立つなら特にそうだと最近は覚悟を決めている。
父親のあの妙に軽いへらっとした感じはそれはそれで防具なのだと考えていた。自分の正確だとあんな風に軽やかには動けないなと思っていたが、父親の世代の人間、エリク神官長もウージェーヌも軽やかだったのでこれから付き合いを深める貴族たちもあんな風に軽やかなのかなと思う。この国にいた少年時代、自分はあまり貴族子弟と関わらずに生きて来た。正妃から疎まれていたのもあるしセイラ妃がひっそりとした人であったのも大きかったのだと思う。南の辺境伯の嫡男は自分の従弟にあたるんだなと思い至りフロランにどんな人物か聞いたりして少しは情報を集めてはいる。
フロランは『うちの兄妹、……人付き合い、上手いとは言えないからなぁ。俺も数人の子爵男爵の子弟と仲良くしてたんだけど、うちの爵位が上がった事で付き合いづらいっつか相手に避けられるようになっちゃって』と肩を竦めている。話を聞くとグランジエ家は夜会に出る事も稀で貴族づきあいは辺境4家とグランサニュー公爵家とだけだったらしい。ウージェーヌが正妃に粘着されていたので逃げていたという。
フロランは貴族関係ならベルティエ公爵に聞くのが一番じゃないのかと言う。彼が一番、常識があるから、と。
「エリク神官長は忙しいし、グランサニュー公爵でもいいとは思うけど」
フロランがそんなことを言ってるとウージェーヌが二人がいる部屋に入って来て教えてくれる。
「あのじーさん、このところ社交界から逃げてるから情報が古いぞ。ジェラールに聞いとけ」
とさっさとベルティエ公爵家に約束を取り付けてくれたので明後日公爵自らがグランジエ領に来るという。アルは目の前のマドレーヌに意識を戻す。
「さて、荷物置いて来るといい。俺とフロランは居間で夕食前に話してるよ。着替えて出ておいでよ」
「夕食前には姉様の所で軽いお茶をしてるので。……姉様、フロラン兄様と顔合わせたくないらしくて……」
マドレーヌは心配そうに眉を寄せる。アルは、フロランとマリアンヌ、意外と性格も似てるよなと思いつつマドレーヌと別れる。
「では、夕食の席で」
「……わかりません、姉様が寂しいなら私と姉様とおばあ様で夕食を共にするので」
マドレーヌはなんの他意もなくそう言って自室へ向かった。
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