悪役令嬢、冒険者になる 【完結】

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第四章

王都への帰還

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 「おかえりなさい、マドレーヌ」

ロクサーヌがマドレーヌを迎える。

「たっぷり狩りをしてきました」

「来年は私も行きたいな」

「ジェラールおじ様の許可がとれれば」

マドレーヌが笑う。

「それが一番の難関よね」

「うちの父親使いましょうか」

「いいね、それ」

美しい二人の令嬢は令嬢らしからぬ会話をしていた。ネイサンとアルは顔を見合わせて笑うしかなかった。この2~3年は暴君と化していたネイサンがロクサーヌを振り回す形であったがそもそも子供の頃はロクサーヌの方がネイサンを振り回していたのだ。

「僕もついていっていいかな」

ネイサンが言う。アルは、『ああそうだ、ネイサンはネイサンだものな』と思った。

「ジェラールおじ様の許可がでたら」

マドレーヌは冷たく言った。ロクサーヌに対して言った言葉とお同じ言葉なのに含まれる感情、温度の差をアルは感じ取った。アルはマドレーヌの事を『なんだ、思ったより『令嬢』じゃないか』と思った。



 「そちらはどうでした?」

アルはジェラールと二人で話している。マドレーヌとロクサーヌ、ネイサンはマドレーヌの家の女性に作る雪角ウサギのコートや帽子やの相談をマドレーヌの家がドレスを作る時に頼むドレスメーカーに家に来てもらってしている。マドレーヌもロクサーヌもあまりそういうセンスはないがネイサンは母親や取り巻きの女性たちのお陰である程度のセンスと知識は身に着けていたのでアドバイザーとして付き添っていた。この家の奥方は外遊に出たソフィア側妃に付き添って国外にいるので彼女の手を借りるのも無理であった。

「そうだね。地下カジノの方で証言はいくつかとれたよ」

闇カジノは何代も前からアルノー伯が仕切っていた事。アルノー伯の先代、先々代は狼国と懇意だったが北方の隣国とは細々と縁が続いていた事。北方の隣国とはもっと昔からの縁だったこと。そもそも狼国の知己はその北方隣国の縁が元で知り合ったようであったこと。
 アルノー伯の闇カジノにバスチエの夫や正妃の母親はずっと出入りしていたようだった事、またバスチエ夫の愛人の母親は正妃の母親であったようだ。正妃の母親の来歴が綺麗とは言い難いのは知っていたが何年か記録がないところがあってその時に産んでいたようだ。そして正妃の母親と前ベルティエ公爵が知り合ったのが闇カジノだった事。

「父親がそう言うところに通ったのも前のアルノー伯の手引きだったようだよ。……世間知らずの父親はあっという間に手玉に取られたようだった」

ジェラールはふっと息を吐いた。

「なんだかんだって私はウジェとエリクに守られていたようなもんだったよ」

「そうなんですか?」

「多少は悪いところにも行ったしね、そういう危険の匂いっていうのかな。そう言うものに近づかないだけの分別も着けられたしな。……結果論だけど、殿下が外を見る事が出来たって言うだけで貴方が飛ばされたのは悪い事だけではなかったと思っているよ、私は」

ジェラールは真面目な顔であった。

「陛下とセイラ妃は心配だったろうけどね。……うちの家が粛清されるべきだったんだが、私は王宮の事を知りすぎていたし、……ロクサーヌがネイサンの婚約者である事もいい風に作用した。そして陛下と側近の皆が『私』個人と正妃達のやった事は違うと判断してくれたお陰だ」

「そうですね……、こういう時大抵の国ではその公爵の立場にいる人は粛清されるでしょうね」

アルは向こうの国いた頃のあの国の近隣の話を思い出す。どの国でもこういうスキャンダルはあるのだ。

「うちの家や領地を王宮が接収して今以上の収益をあげるのも無理だろうしね」

ジェラールは経営者としての腕が一流であった。ウジェに『お前、爵位がなくても商人でのし上がってこれそうだな』と言わしめたのだ。ジェラールは贅沢をするだけの父親に代わり少年の頃から領地の経営に携わっていた。最初はおずおずと、十代後半には父親を隠れ蓑にしっかりと領地を経営していたのだ。それを助けていたのがエリクの父親であった。

「私は周りに恵まれても来たからね」

今回はエリクの家の長子で跡取りの、エリクの姉の夫である聖騎士団長が嘆願もあったとアルは後に聞いた。

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