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第四章
かつては……
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「これは?」
陛下がお忍びで廃神殿に来た時にはアルノー伯は捕縛されていた。正確にいえば、かつてはアルノー伯であったものだ。一抱えある壺の中に黒い靄に人の眼と口、そして髪の毛が着いた物体が入っている。
「それが元アルノー伯」
公爵は陛下に言う。廃神殿の元の礼拝所の真ん中に浮かんでいたのだ。辺境で魔獣を生み出している黒い靄。それに合体した人型の何か。
「取り込まれたか」
北の侯爵とウージェーヌにはなにか一発でわかったようだった。
「靄の中心に近づきすぎるとこうやって取り込まれるんだ。……取り込まれて三日位ならなんとか助けられるんだが。これは……アルノー伯の意識があるかどうか」
「……神殿に話は来てない」
エリクの言葉にドニも頷く。
「そりゃ、大抵平民の事故だからね。我が国の辺境に来るクランには毎回、この靄の中心には近づくなって話はしてる。理由も。……自殺する勇気のないやつが偶にこうやって取り込まれに行くんだよ」
侯爵がエリクに言う。
「それにな……神殿にこの話をしたら絶対都合悪い人間をこれに食わせるだろ。今回はモンスターの知識が殆どないアルノー伯だから出てくるモンスターが雪狼と雪角ウサギがメインになってるんだと思う」
ウージェーヌが続ける。
「俺とか侯爵が喰われたり、経験のある冒険者が喰われたら……、出てくるモンスターの
質が上がっちまうんだ」
エリクとドニが顔を見合わせる。
「……ってことはこれは瘴気だまりってことかな」
「ああ。……アルノー伯がくわれちまったが、まだ小さいな」
「瘴気だまり……」
エリクがぶつぶつ言い始めた。が、ふっと元アルノー伯の周りに障壁を張った。
「瘴気溜まりならこの場所からはがしていいよね?これ、自然発生したやつなのかなぁ?」
「っていうかここが廃神殿になった理由って雪熊じゃなくてこれじゃろ」
ドニは障壁をつんつんつつきながら言う。
「その方がつじつまがあう、か」
「まぁ、十年に一度くらい。モンスターの異常発生はあったが」
「これが育たなかった理由がわからんな」
侯爵が言ったことにエリクがへらっと笑いながら返す。
「寒いからじゃないの?」
「そんなの関係あるか?」
ウージェーヌはエリクと侯爵がどうも素で言ってると気が付いて答えを二人に与える。
「あのな。他の瘴気だまりは吹き出し口が地面にあるだろ。ここにはそれがないからこれ以上の成長がないのだと思うぞ」
フロランが障壁の中を見た。
「げ、眼があった」
「……アルノー伯」
エリクが声をかけると目玉がエリクをみる。
「私が判りますか」
あらぬところに着いた口が開く。
「ししししししんんんんんん」
「理解はしてる、と」
「あああああああ」
「とりあえず。神殿に行きますか?」
「いいいいいいいいい」
「治すって確約はできませんよ?」
「いいいいいいいいいい」
かくしてアルノー伯と合体した瘴気はエリクの空間魔術でまとめられ壺に入れられたのであった。
「いくって言いたいのか嫌って言いたいのかいいって言いたいのか分かんないんで自分が解釈したいようにしました」
「次は神殿かぁ。また隙を見て見に行くよ。……ウジェとかアルは?」
「あの人たちは裏の獣の掃除してます。ちょっと増えすぎてるので」
「俺もそっちが良かった」
フロランが不満げであったが、精霊の力を借りられるフロランをエリクは自分たちの方へ組み込んだのだ。
陛下は苦笑しつつ、片手を上げる。
「ま、バレない内に王宮に帰るよ」
陛下はそう言って転移で王宮の執務室へ戻っていった。
陛下がお忍びで廃神殿に来た時にはアルノー伯は捕縛されていた。正確にいえば、かつてはアルノー伯であったものだ。一抱えある壺の中に黒い靄に人の眼と口、そして髪の毛が着いた物体が入っている。
「それが元アルノー伯」
公爵は陛下に言う。廃神殿の元の礼拝所の真ん中に浮かんでいたのだ。辺境で魔獣を生み出している黒い靄。それに合体した人型の何か。
「取り込まれたか」
北の侯爵とウージェーヌにはなにか一発でわかったようだった。
「靄の中心に近づきすぎるとこうやって取り込まれるんだ。……取り込まれて三日位ならなんとか助けられるんだが。これは……アルノー伯の意識があるかどうか」
「……神殿に話は来てない」
エリクの言葉にドニも頷く。
「そりゃ、大抵平民の事故だからね。我が国の辺境に来るクランには毎回、この靄の中心には近づくなって話はしてる。理由も。……自殺する勇気のないやつが偶にこうやって取り込まれに行くんだよ」
侯爵がエリクに言う。
「それにな……神殿にこの話をしたら絶対都合悪い人間をこれに食わせるだろ。今回はモンスターの知識が殆どないアルノー伯だから出てくるモンスターが雪狼と雪角ウサギがメインになってるんだと思う」
ウージェーヌが続ける。
「俺とか侯爵が喰われたり、経験のある冒険者が喰われたら……、出てくるモンスターの
質が上がっちまうんだ」
エリクとドニが顔を見合わせる。
「……ってことはこれは瘴気だまりってことかな」
「ああ。……アルノー伯がくわれちまったが、まだ小さいな」
「瘴気だまり……」
エリクがぶつぶつ言い始めた。が、ふっと元アルノー伯の周りに障壁を張った。
「瘴気溜まりならこの場所からはがしていいよね?これ、自然発生したやつなのかなぁ?」
「っていうかここが廃神殿になった理由って雪熊じゃなくてこれじゃろ」
ドニは障壁をつんつんつつきながら言う。
「その方がつじつまがあう、か」
「まぁ、十年に一度くらい。モンスターの異常発生はあったが」
「これが育たなかった理由がわからんな」
侯爵が言ったことにエリクがへらっと笑いながら返す。
「寒いからじゃないの?」
「そんなの関係あるか?」
ウージェーヌはエリクと侯爵がどうも素で言ってると気が付いて答えを二人に与える。
「あのな。他の瘴気だまりは吹き出し口が地面にあるだろ。ここにはそれがないからこれ以上の成長がないのだと思うぞ」
フロランが障壁の中を見た。
「げ、眼があった」
「……アルノー伯」
エリクが声をかけると目玉がエリクをみる。
「私が判りますか」
あらぬところに着いた口が開く。
「ししししししんんんんんん」
「理解はしてる、と」
「あああああああ」
「とりあえず。神殿に行きますか?」
「いいいいいいいいい」
「治すって確約はできませんよ?」
「いいいいいいいいいい」
かくしてアルノー伯と合体した瘴気はエリクの空間魔術でまとめられ壺に入れられたのであった。
「いくって言いたいのか嫌って言いたいのかいいって言いたいのか分かんないんで自分が解釈したいようにしました」
「次は神殿かぁ。また隙を見て見に行くよ。……ウジェとかアルは?」
「あの人たちは裏の獣の掃除してます。ちょっと増えすぎてるので」
「俺もそっちが良かった」
フロランが不満げであったが、精霊の力を借りられるフロランをエリクは自分たちの方へ組み込んだのだ。
陛下は苦笑しつつ、片手を上げる。
「ま、バレない内に王宮に帰るよ」
陛下はそう言って転移で王宮の執務室へ戻っていった。
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