悪役令嬢、冒険者になる 【完結】

あくの

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第四章

そろそろと動き始める。

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 皆、各々用意を済ませ外に出る。ドームの中と違い体が冷える。

「今日はまず神殿の裏側に沸いているモンスの掃除だな」

北の侯爵がそう指示する。他の騎士と兵士たちは先行隊の確保と捕縛をするという。

「捕縛したやつらはどこに?」

「廃寺院の建物に入れときます。温かくはないけど、凍える事は無いから。というかそうする。このドームは、っと」

エリクがドームを撫でるとドームはみえなくなった。

「……なにしたの?」

マドレーヌの眼が丸くなっている。フロランは精霊に『あれは『ストレージ』にいれたのだ』と耳打ちされた。アルはするりとドーム全体がエリクの手に吸い込まれていくのが見えて驚いていた。ドニとグランサニュー公爵は知っているようで驚く事もなかったし騎士達や神官、神殿関係者はエリクがなにかしでかすのはいつもの事、扱いだった。

「ま、僕たちも宿舎は必要でしょ?」

そのあとエリクはにんまり笑った。

「言ってみれば天然のマジックバッグ。そう思えばいいよ」

エリクとマドレーヌが会話している様はここから先が切ったはったの鉄火場になりかねない,修羅場直前とも思えないのんびりとした空気だった。

「はぁ……」

周りもなにかのんびりとした空気でいい感じに心も体もほぐれる。

「エリクたちはどう動くんだ?」

「え?自分が神官のふりをして先行隊の所行って」

「君は神官」

思わずウージェーヌが突っ込んだ。

「あ、そうだった」

エリクは素であった。

「ま、正面突破。一応あそこ神殿の持ち物だしね。責任者と話をしつつ眠りの術をかけて残った人員がいるなら背後の騎士が対処、と。騎士には認知阻害の魔法をかける。聖騎士を二人ほどはお供にしてね」

エリクは茶目っ気たっぷりであった。

「ドニ様は侯爵と一緒に。……アルノー伯爵対策ですね」

「今日はとりあえずモンスター一掃だな。そうじゃないと動けん」

侯爵の言葉に冒険者たちは同意を返す。ドームの当たりも既に雪角ウサギがかなりの数いる。

「で、ウジェは一緒に来てね。先行隊の冒険者に知った顔があるか確認」

「わかった」


 各々準備も終わり、ざっくりとエリクは3人の聖騎士以外に認識阻害の術をかける。

「ウジェはお得意の気配遮断で」

「……いや、俺は案内人の体で一緒に行こうかなって。で、俺が冒険者の責任者と話してる間にエリクは責任者と話すといいさ。多分冒険者は案内人も兼ねてるだろうしね」

「そうだな」

エリクとウージェーヌは無造作に神殿に向かった。

「あれ?どなたですか?」

どうみてもひよひよとした神官が案内人の冒険者を案内に廃神殿の前庭に入って来たとそこにいた先行隊は思ったようだ。ウジェは早速顔見知りの冒険者をみつけ目礼をする。それだけで彼らは悟ったらしく荷物から手ぬぐいを出している。

「誰が」

どう見ても軍人に見える男ががエリクを誰何する。

「あ、ここの管理者です」

「は?ここは使われてないと聞いているぞ」

「廃棄されたといっても神殿の持ち物なので定期的に調査に来てるんですよ」

坊ちゃん風の外見の神官を軍人は舐めてかかる。

「ここはぁわが軍がぁ接収ぅしたぁ」

無駄な大声だ。エリクはへらっとしたまま答える。

「接収もなにも、そんな書類出てませんよ」

「ほば……」

全てを軍人は口にする言葉なかった。緩やかに入口からかけられていた術が効果を発する。
この神殿の前庭にいるもので耐性のないもの、術に対する準備をしてないものはみな倒れて落ちた。冒険者の数人、ウージェーヌに目礼を返した数人、は口元と鼻を抑えて耐えている。

「ウジェ、どういうことだよ」

冒険者のリーダーらしき人物がウージェーヌに訴える。

「こいつらは隣国の兵隊だろ?」

ウージェーヌは先ほどエリクを誰何した軍人の方へ顎をしゃくった。冒険者のリーダーも術に耐えき
れなくなり崩れおちた。

「一応成功だな」
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