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第四章
金の蜜の玉
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「ああ、彼女なら伝手はありそうだな」
エリクの母親は新聞王の娘であった。伯爵家という中位貴族の娘だ。エリクの両親はこの時代には珍しい学園時代からの恋愛結婚であった。そしてエリクの母親は実家の事業も手伝っいて人づきあいが広い。
「そろそろ皆集まるかな」
結局、マドレーヌたちの祖父は前陛下が心配で徒歩で登頂する組に加わって早朝に出発していた。
「じーちゃん、大丈夫かな」
フロランが精霊に聴いている。精霊は肯定的な返事を返したようでフロランが安心した顔になっている。アルは全てを『聴く』と情報が混乱するので一時的にエリクにそういう回路を閉じてもらっている。エリク曰く、自分で出来るようにこの騒動が終わったら教えると言っていた。アルはこの騒動が終わるのかな、とほんの少し考えていた。
マドレーヌは薄いグレーと濃いグレーと白の格子状の柄の上着を着ている。
「暖かそうだね」
アルが声をかけると嬉しそうン頷いた。
「あったかいですよ。公爵様が買って下さったの」
一緒に買い物に行ったアルは気が付いていなかった。
「今までのより保温効果の高い鳥の羽つかったやつだって」
嬉しそうなマドレーヌ見てアルがふふっと笑う。
「なあに?」
マドレーヌが不思議そうに訊ねる。
「あ、いや。レアが新しいドレス買ってもらった時みたいだなって」
「そりゃ新しい装備は嬉しいわよ?ドレスは令嬢の装備でしょ?」
「そう、なのかな?」
アルは難しい顔になった。マドレーヌは大まじめだ。
「そうよ。令嬢は夜会やお茶会で情報収集して戦うの。私は得意じゃないからそっちは放棄しちゃった。マリアンヌ姉様がそう言うこと出来ないから私が頑張らなきゃいけなかったんだけど……」
マドレーヌはあまり反省していない顔で笑っている。
一行がエリクと共に第一次キャンプに着いた時、皆はドニが作った雪のブロックで一つ
のドームを作っていた。ドニは自分も転移を覚えて使っているようだ。
「廃神殿を奪取できるまでの基地ですね」
エリクの言葉にドニは頷く。
「ま、一応目くらましの魔法をかけてある。それとマドレーヌ嬢の寝る部屋も別に作っている」
ドニの言葉に公爵が返す。
「ってことはここに泊まる必要がでてくる、と?」
「そうだ。どちらにしても今日は動けんからな」
ウージェーヌが小型ボウガンを腰に下げる。公爵と同じものだった。
「じゃ、ちょっと」
「オヤジは行かなくていい。神官長は視点の共有出来るっていうから精霊に行ってもらう。その方が安全だし」
ドニが片眉をあげる。
「そうやって命を削るのか。……精霊の花婿にはありがちだがね。さて、精霊よ、聴いているね?聞こえているならエリクの髪の毛を乱してやってくれ」
ドニの問いかけに精霊は応えエリクの髪形がくしゃくしゃになっている。
「ここに君の好物があるんだ。……一粒で何年ならフロランの命を返せる?それと今回の使役に対する報酬にこれを一粒渡す」
「精霊は命は返せない。なのでそれは一粒だけもらう、と」
フロランの返事にドニは考える。
「では、これからフロランの命を削らずに一緒に居てくれるならここいある10粒の金の蜜の玉を、というのはどうかな」
そこにいる全員が精霊の意思、同意を認知させられる。ドニの渡した金の蜜の粒はドニの手から消え一瞬、なにかの印が浮かんで消えた。
「……なんで、こんな高価なものを」
フロランやウージェーヌ、祖父が呆然とドニを見ている。
エリクの母親は新聞王の娘であった。伯爵家という中位貴族の娘だ。エリクの両親はこの時代には珍しい学園時代からの恋愛結婚であった。そしてエリクの母親は実家の事業も手伝っいて人づきあいが広い。
「そろそろ皆集まるかな」
結局、マドレーヌたちの祖父は前陛下が心配で徒歩で登頂する組に加わって早朝に出発していた。
「じーちゃん、大丈夫かな」
フロランが精霊に聴いている。精霊は肯定的な返事を返したようでフロランが安心した顔になっている。アルは全てを『聴く』と情報が混乱するので一時的にエリクにそういう回路を閉じてもらっている。エリク曰く、自分で出来るようにこの騒動が終わったら教えると言っていた。アルはこの騒動が終わるのかな、とほんの少し考えていた。
マドレーヌは薄いグレーと濃いグレーと白の格子状の柄の上着を着ている。
「暖かそうだね」
アルが声をかけると嬉しそうン頷いた。
「あったかいですよ。公爵様が買って下さったの」
一緒に買い物に行ったアルは気が付いていなかった。
「今までのより保温効果の高い鳥の羽つかったやつだって」
嬉しそうなマドレーヌ見てアルがふふっと笑う。
「なあに?」
マドレーヌが不思議そうに訊ねる。
「あ、いや。レアが新しいドレス買ってもらった時みたいだなって」
「そりゃ新しい装備は嬉しいわよ?ドレスは令嬢の装備でしょ?」
「そう、なのかな?」
アルは難しい顔になった。マドレーヌは大まじめだ。
「そうよ。令嬢は夜会やお茶会で情報収集して戦うの。私は得意じゃないからそっちは放棄しちゃった。マリアンヌ姉様がそう言うこと出来ないから私が頑張らなきゃいけなかったんだけど……」
マドレーヌはあまり反省していない顔で笑っている。
一行がエリクと共に第一次キャンプに着いた時、皆はドニが作った雪のブロックで一つ
のドームを作っていた。ドニは自分も転移を覚えて使っているようだ。
「廃神殿を奪取できるまでの基地ですね」
エリクの言葉にドニは頷く。
「ま、一応目くらましの魔法をかけてある。それとマドレーヌ嬢の寝る部屋も別に作っている」
ドニの言葉に公爵が返す。
「ってことはここに泊まる必要がでてくる、と?」
「そうだ。どちらにしても今日は動けんからな」
ウージェーヌが小型ボウガンを腰に下げる。公爵と同じものだった。
「じゃ、ちょっと」
「オヤジは行かなくていい。神官長は視点の共有出来るっていうから精霊に行ってもらう。その方が安全だし」
ドニが片眉をあげる。
「そうやって命を削るのか。……精霊の花婿にはありがちだがね。さて、精霊よ、聴いているね?聞こえているならエリクの髪の毛を乱してやってくれ」
ドニの問いかけに精霊は応えエリクの髪形がくしゃくしゃになっている。
「ここに君の好物があるんだ。……一粒で何年ならフロランの命を返せる?それと今回の使役に対する報酬にこれを一粒渡す」
「精霊は命は返せない。なのでそれは一粒だけもらう、と」
フロランの返事にドニは考える。
「では、これからフロランの命を削らずに一緒に居てくれるならここいある10粒の金の蜜の玉を、というのはどうかな」
そこにいる全員が精霊の意思、同意を認知させられる。ドニの渡した金の蜜の粒はドニの手から消え一瞬、なにかの印が浮かんで消えた。
「……なんで、こんな高価なものを」
フロランやウージェーヌ、祖父が呆然とドニを見ている。
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