153 / 212
第四章
精霊の呪い
しおりを挟む
侯爵は妻が変わったのではなくこちらが妻の本性だったのであろうと妻を見下ろす。
「嘘よ」
「何故そう思う?」
「冒険者なんてやくざ集団の嘘を貴方は信じるの?」
じろりと北の侯爵は妻を見る。
「何故冒険者からの情報だと思うのだ?」
「だって」
「黙れ。仕事に口をだすな。家の事は君に、国境やその他は俺にってのは結婚してからずっと分担してきたことだろう?それを今更口をだすのか?どのタイミングで軍をだすかは俺の仕事だ。それにな俺達の領地を護るために来てくれてる冒険者をそこまで嫌う理由はなんだ?」
まだ不服そうな夫人に侯爵は言い渡す。
「このタイミングで悪さはするなよ。……横領の疑いがかかってる。執事が帳簿を調べるからな、これから」
夫人は青い顔でそのまま周りに挨拶もせず部屋から飛び出した。
「ま、もう帳簿は裏帳簿まで抑えてるんだけどな」
と北の侯爵はエリク張りに悪い顔でにやりとした。
「おっちゃん、手早い」
ウージェニーの言葉に北の侯爵は不敵にほほ笑む。
「負けてばかりはおれんからな。……舅殿と義弟殿が心配ではあるな」
公爵は北の侯爵の肩を軽くたたく。
「他人の心配より奥方の暴走が心配だろう?」
「……どうなんでしょうな。時々王都に遊びに行かせてたのも悪かったのでしょうなぁ」
北の侯爵は遠い目になる。ああ変わる前の妻を思い出していた。若いころから堅苦しいくらいのきっちりした娘だったのに、とか思い出すといつも肌の見えない恰好だったのが5年くらい前から胸元を露出した、昔のメリッサなら『はしたない』というような恰好になってたな、と。
「ともかく」
エリクが声を出す。
「奥方の部屋の扉には呪いをかけてます」
エリクがにやっと笑う。
「『怠惰なる眠り』ってやつですよ。他にも保険かけましたし」
有名な呪いだった。それは精霊の呪いでその呪いがかかった場所で眠り込んでしまうという呪いである。このあたりで精霊のその呪いに巻き込まれればこの時期だと命が無くなる事確実な『呪い』である。
「あれは精霊しか使えないのでは?」
ウージェーヌの疑問にエリクが答える。
「あの魔法陣に普通に魔力を流しても発動しないんだ」
「そもそも普通の人間はあれが魔法陣で引き起こされる事を知らんのだが?」
「ああ」
エリクは事も無げにいう。
「そりゃ神殿が公開してる魔法陣には入ってないもの。神殿に入った頃に森で見つけてそのまま持って帰って研究したからね。ま、面倒くさい代物でさ。いくつかの属性の魔法をピンポイントで魔法陣の対応するポイントに流さないと発動しないんだよ」
「ほう」
ウージェーヌは感心して話を聴いている。
「精霊は各属性の精霊がいるから複数の精霊で」
エリクの額に衝撃が加わる。フロランがエリクを見ている。
「精霊がそれ以上喋るなって」
フロランがエリクに忠告する。
「オヤジにそんなこと教えたら何をしでかすか判らん、って」
エリクは精霊の言葉に納得しウージェーヌは心外だとフロランの精霊を見ながら精霊に伝えた。
「嘘よ」
「何故そう思う?」
「冒険者なんてやくざ集団の嘘を貴方は信じるの?」
じろりと北の侯爵は妻を見る。
「何故冒険者からの情報だと思うのだ?」
「だって」
「黙れ。仕事に口をだすな。家の事は君に、国境やその他は俺にってのは結婚してからずっと分担してきたことだろう?それを今更口をだすのか?どのタイミングで軍をだすかは俺の仕事だ。それにな俺達の領地を護るために来てくれてる冒険者をそこまで嫌う理由はなんだ?」
まだ不服そうな夫人に侯爵は言い渡す。
「このタイミングで悪さはするなよ。……横領の疑いがかかってる。執事が帳簿を調べるからな、これから」
夫人は青い顔でそのまま周りに挨拶もせず部屋から飛び出した。
「ま、もう帳簿は裏帳簿まで抑えてるんだけどな」
と北の侯爵はエリク張りに悪い顔でにやりとした。
「おっちゃん、手早い」
ウージェニーの言葉に北の侯爵は不敵にほほ笑む。
「負けてばかりはおれんからな。……舅殿と義弟殿が心配ではあるな」
公爵は北の侯爵の肩を軽くたたく。
「他人の心配より奥方の暴走が心配だろう?」
「……どうなんでしょうな。時々王都に遊びに行かせてたのも悪かったのでしょうなぁ」
北の侯爵は遠い目になる。ああ変わる前の妻を思い出していた。若いころから堅苦しいくらいのきっちりした娘だったのに、とか思い出すといつも肌の見えない恰好だったのが5年くらい前から胸元を露出した、昔のメリッサなら『はしたない』というような恰好になってたな、と。
「ともかく」
エリクが声を出す。
「奥方の部屋の扉には呪いをかけてます」
エリクがにやっと笑う。
「『怠惰なる眠り』ってやつですよ。他にも保険かけましたし」
有名な呪いだった。それは精霊の呪いでその呪いがかかった場所で眠り込んでしまうという呪いである。このあたりで精霊のその呪いに巻き込まれればこの時期だと命が無くなる事確実な『呪い』である。
「あれは精霊しか使えないのでは?」
ウージェーヌの疑問にエリクが答える。
「あの魔法陣に普通に魔力を流しても発動しないんだ」
「そもそも普通の人間はあれが魔法陣で引き起こされる事を知らんのだが?」
「ああ」
エリクは事も無げにいう。
「そりゃ神殿が公開してる魔法陣には入ってないもの。神殿に入った頃に森で見つけてそのまま持って帰って研究したからね。ま、面倒くさい代物でさ。いくつかの属性の魔法をピンポイントで魔法陣の対応するポイントに流さないと発動しないんだよ」
「ほう」
ウージェーヌは感心して話を聴いている。
「精霊は各属性の精霊がいるから複数の精霊で」
エリクの額に衝撃が加わる。フロランがエリクを見ている。
「精霊がそれ以上喋るなって」
フロランがエリクに忠告する。
「オヤジにそんなこと教えたら何をしでかすか判らん、って」
エリクは精霊の言葉に納得しウージェーヌは心外だとフロランの精霊を見ながら精霊に伝えた。
7
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説

元婚約者が「俺の子を育てろ」と言って来たのでボコろうと思います。
音爽(ネソウ)
恋愛
結婚間近だった彼が使用人の娘と駆け落ちをしてしまった、私は傷心の日々を過ごしたがなんとか前を向くことに。しかし、裏切り行為から3年が経ったある日……
*体調を崩し絶不調につきリハビリ作品です。長い目でお読みいただければ幸いです。

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ
karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。
しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました
饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。
わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。
しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。
末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。
そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。
それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は――
n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。
全15話。
※カクヨムでも公開しています

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

(完結)「君を愛することはない」と言われて……
青空一夏
恋愛
ずっと憧れていた方に嫁げることになった私は、夫となった男性から「君を愛することはない」と言われてしまった。それでも、彼に尽くして温かい家庭をつくるように心がければ、きっと愛してくださるはずだろうと思っていたのよ。ところが、彼には好きな方がいて忘れることができないようだったわ。私は彼を諦めて実家に帰ったほうが良いのかしら?
この物語は憧れていた男性の妻になったけれど冷たくされたお嬢様を守る戦闘侍女たちの活躍と、お嬢様の恋を描いた作品です。
主人公はお嬢様と3人の侍女かも。ヒーローの存在感増すようにがんばります! という感じで、それぞれの視点もあります。
以前書いたもののリメイク版です。多分、かなりストーリーが変わっていくと思うので、新しい作品としてお読みください。
※カクヨム。なろうにも時差投稿します。
※作者独自の世界です。
新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!
月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。
そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。
新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ――――
自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。
天啓です! と、アルムは――――
表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜
福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。
彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。
だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。
「お義姉さま!」 . .
「姉などと呼ばないでください、メリルさん」
しかし、今はまだ辛抱のとき。
セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。
──これは、20年前の断罪劇の続き。
喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。
※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。
旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』
※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。
※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる