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第四章
精霊の呪い
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侯爵は妻が変わったのではなくこちらが妻の本性だったのであろうと妻を見下ろす。
「嘘よ」
「何故そう思う?」
「冒険者なんてやくざ集団の嘘を貴方は信じるの?」
じろりと北の侯爵は妻を見る。
「何故冒険者からの情報だと思うのだ?」
「だって」
「黙れ。仕事に口をだすな。家の事は君に、国境やその他は俺にってのは結婚してからずっと分担してきたことだろう?それを今更口をだすのか?どのタイミングで軍をだすかは俺の仕事だ。それにな俺達の領地を護るために来てくれてる冒険者をそこまで嫌う理由はなんだ?」
まだ不服そうな夫人に侯爵は言い渡す。
「このタイミングで悪さはするなよ。……横領の疑いがかかってる。執事が帳簿を調べるからな、これから」
夫人は青い顔でそのまま周りに挨拶もせず部屋から飛び出した。
「ま、もう帳簿は裏帳簿まで抑えてるんだけどな」
と北の侯爵はエリク張りに悪い顔でにやりとした。
「おっちゃん、手早い」
ウージェニーの言葉に北の侯爵は不敵にほほ笑む。
「負けてばかりはおれんからな。……舅殿と義弟殿が心配ではあるな」
公爵は北の侯爵の肩を軽くたたく。
「他人の心配より奥方の暴走が心配だろう?」
「……どうなんでしょうな。時々王都に遊びに行かせてたのも悪かったのでしょうなぁ」
北の侯爵は遠い目になる。ああ変わる前の妻を思い出していた。若いころから堅苦しいくらいのきっちりした娘だったのに、とか思い出すといつも肌の見えない恰好だったのが5年くらい前から胸元を露出した、昔のメリッサなら『はしたない』というような恰好になってたな、と。
「ともかく」
エリクが声を出す。
「奥方の部屋の扉には呪いをかけてます」
エリクがにやっと笑う。
「『怠惰なる眠り』ってやつですよ。他にも保険かけましたし」
有名な呪いだった。それは精霊の呪いでその呪いがかかった場所で眠り込んでしまうという呪いである。このあたりで精霊のその呪いに巻き込まれればこの時期だと命が無くなる事確実な『呪い』である。
「あれは精霊しか使えないのでは?」
ウージェーヌの疑問にエリクが答える。
「あの魔法陣に普通に魔力を流しても発動しないんだ」
「そもそも普通の人間はあれが魔法陣で引き起こされる事を知らんのだが?」
「ああ」
エリクは事も無げにいう。
「そりゃ神殿が公開してる魔法陣には入ってないもの。神殿に入った頃に森で見つけてそのまま持って帰って研究したからね。ま、面倒くさい代物でさ。いくつかの属性の魔法をピンポイントで魔法陣の対応するポイントに流さないと発動しないんだよ」
「ほう」
ウージェーヌは感心して話を聴いている。
「精霊は各属性の精霊がいるから複数の精霊で」
エリクの額に衝撃が加わる。フロランがエリクを見ている。
「精霊がそれ以上喋るなって」
フロランがエリクに忠告する。
「オヤジにそんなこと教えたら何をしでかすか判らん、って」
エリクは精霊の言葉に納得しウージェーヌは心外だとフロランの精霊を見ながら精霊に伝えた。
「嘘よ」
「何故そう思う?」
「冒険者なんてやくざ集団の嘘を貴方は信じるの?」
じろりと北の侯爵は妻を見る。
「何故冒険者からの情報だと思うのだ?」
「だって」
「黙れ。仕事に口をだすな。家の事は君に、国境やその他は俺にってのは結婚してからずっと分担してきたことだろう?それを今更口をだすのか?どのタイミングで軍をだすかは俺の仕事だ。それにな俺達の領地を護るために来てくれてる冒険者をそこまで嫌う理由はなんだ?」
まだ不服そうな夫人に侯爵は言い渡す。
「このタイミングで悪さはするなよ。……横領の疑いがかかってる。執事が帳簿を調べるからな、これから」
夫人は青い顔でそのまま周りに挨拶もせず部屋から飛び出した。
「ま、もう帳簿は裏帳簿まで抑えてるんだけどな」
と北の侯爵はエリク張りに悪い顔でにやりとした。
「おっちゃん、手早い」
ウージェニーの言葉に北の侯爵は不敵にほほ笑む。
「負けてばかりはおれんからな。……舅殿と義弟殿が心配ではあるな」
公爵は北の侯爵の肩を軽くたたく。
「他人の心配より奥方の暴走が心配だろう?」
「……どうなんでしょうな。時々王都に遊びに行かせてたのも悪かったのでしょうなぁ」
北の侯爵は遠い目になる。ああ変わる前の妻を思い出していた。若いころから堅苦しいくらいのきっちりした娘だったのに、とか思い出すといつも肌の見えない恰好だったのが5年くらい前から胸元を露出した、昔のメリッサなら『はしたない』というような恰好になってたな、と。
「ともかく」
エリクが声を出す。
「奥方の部屋の扉には呪いをかけてます」
エリクがにやっと笑う。
「『怠惰なる眠り』ってやつですよ。他にも保険かけましたし」
有名な呪いだった。それは精霊の呪いでその呪いがかかった場所で眠り込んでしまうという呪いである。このあたりで精霊のその呪いに巻き込まれればこの時期だと命が無くなる事確実な『呪い』である。
「あれは精霊しか使えないのでは?」
ウージェーヌの疑問にエリクが答える。
「あの魔法陣に普通に魔力を流しても発動しないんだ」
「そもそも普通の人間はあれが魔法陣で引き起こされる事を知らんのだが?」
「ああ」
エリクは事も無げにいう。
「そりゃ神殿が公開してる魔法陣には入ってないもの。神殿に入った頃に森で見つけてそのまま持って帰って研究したからね。ま、面倒くさい代物でさ。いくつかの属性の魔法をピンポイントで魔法陣の対応するポイントに流さないと発動しないんだよ」
「ほう」
ウージェーヌは感心して話を聴いている。
「精霊は各属性の精霊がいるから複数の精霊で」
エリクの額に衝撃が加わる。フロランがエリクを見ている。
「精霊がそれ以上喋るなって」
フロランがエリクに忠告する。
「オヤジにそんなこと教えたら何をしでかすか判らん、って」
エリクは精霊の言葉に納得しウージェーヌは心外だとフロランの精霊を見ながら精霊に伝えた。
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追記(2021/10/7)
お茶会の後を追加します。
更に追記(2022/3/9)
連載として再開します。
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