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第四章
侯爵は落ち着いている。
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エリクたちは徒歩で山に向かう一行から半日以上遅れて移動する事になった。ロゼとルカには救護班で帰ってきた人員の汚染具合をチェックしてもらう事になった。聖水を飲ませる程度で祓える穢れはどんどん祓ってくれとも頼む。出発前にエリクは夫人の部屋の窓と扉、その上の部屋の床にグランジエ領で使った『トリモチ』のような結界をはった。
「これで現地からアルノー伯が何らかの形で侯爵の奥方に接触しようとしても捕縛できる」
「相変わらずえげつない」
「ウジェ、それは誉め言葉だな」
エリクはとてもうれしそうだった。
「どういう経緯があってそういう輩と知り合うのかとか訊ねたいことはたっぷりあるんだ。バスチエ夫、いや元夫は淫魔にかわっちゃってるからまともに話せなくてな」
「そういやアレ、どうしてるんだ?」
グランジエ領で捕まえた淫魔がバスチエ男爵夫人元夫の顔だと証言したのはアランだった。アランは記憶はそのままに性格を矯正するように『育てなおし』をしているのは。アランは淫魔を移送している時に小さな羽を持った赤ん坊の体に男の顔をしたそれをドニと一緒に診てドニに『あの妖魔の顔はバスチエ男爵と似てます』と告げたのだ。元夫は対外的には自分の事を『バスチエ男爵』と名のっていたとアランは言ったのだ。
「元夫本人なのか、アレ」
「ぽい。聖騎士とジェラールの捜索で見つかるといいのだけど」
「……廃教会にあったりしてな」
「カチカチに凍って?」
エリクとウジェは顔を合わせる。
「で、あの淫魔どうやってるの?」
「どうやってるって?」
エリクとウジェは軽く会話を交わしながら移動までの時間を過ごしている。
「あー、どんな状態でアレは過ごしてる?」
「聖銀と聖句を書き込んだテープを巻いた鉄で作った大き目の鳥かごに入れてる。止まり木と底にもびっしりと聖句を刻んであるんだ。時々は疲れるらしく止まり木に止まったりするんだけどさそうするといてもたってもいられなくてまた中に浮くんだ」
「うん」
「どうも聖句や聖銀に触れるのは苦痛なようでよく『ダセ』『カラダ、モドセ』とか言ったり宙に浮いたまま滂沱の涙で『カラダ、モドレナイ』って泣いてたりしてる。宙に浮く努力をしてるとそれ以外に魔力を使えないらしくて」
「ふーん」
ウジェはぼんやりと周りを見ている。エマが皆に靴の中敷きとヒイラギのおまもりを配っている。おまもりは胸ポケットに、中敷きは今手に入る雪角ウサギの毛皮でつくったものだった。確かにそれがあると雪山を歩く時にも足裏からの冷えはかなり軽くなる。
「私はこれぐらいしか出来ないからね」
今日はエマも冒険者の格好だ。ロゼとルカを手伝うという。
「この屋敷内に一人取り残されるのも、ね」
公爵家から連れて来た使用人達も用事を言いつけて用事が終われば冒険者ギルドに宿を借りて止まらせたり、エマの手伝いと称してギルドを手伝ったりするそうだ。
「その方が安全だと思ってな」
公爵も北の侯爵も頷いている。そこにノックもせず侯爵夫人が現れる。
「ちょっと、貴方。領軍を動かすって何」
冒険者のような恰好の集団にドレスの胸元を大きくぎりぎりまで開け、コルセットで胸を持ち上げ無理矢理に作った谷間を強調し濃い化粧と香水の匂いをさせた侯爵夫人は異質だった。
「隣国の斥候が入り込んでる」
北の侯爵は場にそぐわない姿の自分の妻を冷たい目で見ていた。
「これで現地からアルノー伯が何らかの形で侯爵の奥方に接触しようとしても捕縛できる」
「相変わらずえげつない」
「ウジェ、それは誉め言葉だな」
エリクはとてもうれしそうだった。
「どういう経緯があってそういう輩と知り合うのかとか訊ねたいことはたっぷりあるんだ。バスチエ夫、いや元夫は淫魔にかわっちゃってるからまともに話せなくてな」
「そういやアレ、どうしてるんだ?」
グランジエ領で捕まえた淫魔がバスチエ男爵夫人元夫の顔だと証言したのはアランだった。アランは記憶はそのままに性格を矯正するように『育てなおし』をしているのは。アランは淫魔を移送している時に小さな羽を持った赤ん坊の体に男の顔をしたそれをドニと一緒に診てドニに『あの妖魔の顔はバスチエ男爵と似てます』と告げたのだ。元夫は対外的には自分の事を『バスチエ男爵』と名のっていたとアランは言ったのだ。
「元夫本人なのか、アレ」
「ぽい。聖騎士とジェラールの捜索で見つかるといいのだけど」
「……廃教会にあったりしてな」
「カチカチに凍って?」
エリクとウジェは顔を合わせる。
「で、あの淫魔どうやってるの?」
「どうやってるって?」
エリクとウジェは軽く会話を交わしながら移動までの時間を過ごしている。
「あー、どんな状態でアレは過ごしてる?」
「聖銀と聖句を書き込んだテープを巻いた鉄で作った大き目の鳥かごに入れてる。止まり木と底にもびっしりと聖句を刻んであるんだ。時々は疲れるらしく止まり木に止まったりするんだけどさそうするといてもたってもいられなくてまた中に浮くんだ」
「うん」
「どうも聖句や聖銀に触れるのは苦痛なようでよく『ダセ』『カラダ、モドセ』とか言ったり宙に浮いたまま滂沱の涙で『カラダ、モドレナイ』って泣いてたりしてる。宙に浮く努力をしてるとそれ以外に魔力を使えないらしくて」
「ふーん」
ウジェはぼんやりと周りを見ている。エマが皆に靴の中敷きとヒイラギのおまもりを配っている。おまもりは胸ポケットに、中敷きは今手に入る雪角ウサギの毛皮でつくったものだった。確かにそれがあると雪山を歩く時にも足裏からの冷えはかなり軽くなる。
「私はこれぐらいしか出来ないからね」
今日はエマも冒険者の格好だ。ロゼとルカを手伝うという。
「この屋敷内に一人取り残されるのも、ね」
公爵家から連れて来た使用人達も用事を言いつけて用事が終われば冒険者ギルドに宿を借りて止まらせたり、エマの手伝いと称してギルドを手伝ったりするそうだ。
「その方が安全だと思ってな」
公爵も北の侯爵も頷いている。そこにノックもせず侯爵夫人が現れる。
「ちょっと、貴方。領軍を動かすって何」
冒険者のような恰好の集団にドレスの胸元を大きくぎりぎりまで開け、コルセットで胸を持ち上げ無理矢理に作った谷間を強調し濃い化粧と香水の匂いをさせた侯爵夫人は異質だった。
「隣国の斥候が入り込んでる」
北の侯爵は場にそぐわない姿の自分の妻を冷たい目で見ていた。
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