悪役令嬢、冒険者になる 【完結】

あくの

文字の大きさ
上 下
149 / 212
第四章

ヒイラギのおまもり

しおりを挟む
 翌朝、神殿の伝手というか神殿の転送装置で移動した神官が沢山のヒイラギと月桂樹、セージと今ある精霊と契約した農園のジャム用のベリーの実を持って帰ってきてくれた。

「そうね、マドレーヌちゃんとフロラン、手伝って。殿下は旦那様の買い物に付き合ってあげて。それと……侯爵、今ある毛皮のストック出してください。出来る限りの防寒具を作ります。それはうちのメイドがやりますね。……侯爵家のメイドは夫人の影響が強いかもしれないので。エリク、ドニ様達を連れてくる前に細工物とか裁縫が得意な神官をこっちによこして。あ、侯爵様、聖別された月桂樹を使ってポトフを大量に作ってもらって。うちの厨房と冒険者溜まりで。貴方の息のかかった冒険者複数人にポトフを嫌がった冒険者の特徴や名前をチェックしてもらっておいて」

エマはてきぱきと指示をする。前陛下達とマドレーヌの祖父は冒険者溜まりでポトフを嫌がる様子の冒険者に知り合いがいないかをチェックしてくれと指示される。エリクは感心していた。

「それを使って班を作りましょう。信頼のおける人間に信頼のおけない人間をみててもらうの。というか信頼のおけない人同士を組ませない感じの班分けね。……ま、ギルドの責任者が信用に値するか、判らないけども」

エリクは少し考えていたがそこに瑠璃色の蝶手紙が届いた。

「ああ……。一晩で薄く靄を纏った冒険者が増えたってルカが……、グランジエのおじさん、ルカと合流してくれる?」

エリクがマドレーヌの祖父に子供の時の様に呼びかける

「なんだ?」

「ルカと組んで薄い靄を纏ったやつらにポトフか聖水を飲ませる手伝いをしてもらえますか?」

「わかった」



 エリクが忙しく立ち働く。マドレーヌとフロランと二人の神官はエマが集めたヒイラギと雪の中のベリーの実をつかいおまもりをつくるがマドレーヌが基本的に使い物にならないことが判った。

「マドレーヌちゃんは手仕事苦手なのね」

「ええ……」

マドレーヌは少しだけ恥ずかしそうだ。フロランは器用にこなしていく。結局マドレーヌはそこにあるヒイラギを二枚一組にして神官とフロランとエマの前に置いていく役目になった。これは意外と反射神経と観察眼が必要だったがマドレーヌは卒なくこなした。

「マドレーヌちゃんはこの騒動が終わったら私に付き合ってね。……刺繍をどうにかごまかせるようにしてあげる。……騎士科のカリキュラムに貴族女子は必須でしょ、刺繍。他の手芸が出来れば問題ないんだけど」

「……ロクサーヌ先輩と一緒にやってもらえますか?先輩もいまいちで」

エマはベルティエ公爵夫人の名誉の為に、公爵夫人も刺繍で苦労した、とはマドレーヌに言わなかった。

「お母様に基礎を習ったんですけど、競って言っても難しくて全然駄目だったんですよ」

マドレーヌは肩を竦めた。そしてエマの前にヒイラギを2枚置く。

「しかし大量のヒイラギですね」

「えっと、神殿の中のヒイラギの半分くらいを取ってきました」

フロランが心配そうに訊ね神官がにっと笑う。

「時間、かかったんでは?」

「そこは神殿ならでは、人海戦術ですよ」

確かに王都の神殿は広いし人もかなり多いのだ。

「ほー」


エマ達はかなりの数のおまもりを作った。

「ギルド職員と、屋敷で清浄な人に持ってもらって。余ったら冒険者にも配る感じですね」

 公爵夫妻についてきた使用人の一人がワゴンにポトフを大きな鍋に入れて運んできた。ワゴンの下の段は銀器が収まっている。扉があるのだが装飾にしか見えない。公爵が外の領地に泊まる時使用人が持ち歩いているものだった。

「さて、あったかいポトフで体を温めてから午後からもおまもりつくりはあるわよ」

エマが声をかけて昼食となった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

元婚約者が「俺の子を育てろ」と言って来たのでボコろうと思います。

音爽(ネソウ)
恋愛
結婚間近だった彼が使用人の娘と駆け落ちをしてしまった、私は傷心の日々を過ごしたがなんとか前を向くことに。しかし、裏切り行為から3年が経ったある日…… *体調を崩し絶不調につきリハビリ作品です。長い目でお読みいただければ幸いです。

姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました

饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。 わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。 しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。 末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。 そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。 それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は―― n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。 全15話。 ※カクヨムでも公開しています

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ

karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。 しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

野生児少女の生存日記

花見酒
ファンタジー
とある村に住んでいた少女、とある鑑定式にて自身の適性が無属性だった事で危険な森に置き去りにされ、その森で生き延びた少女の物語

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜

福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。 彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。 だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。 「お義姉さま!」           . . 「姉などと呼ばないでください、メリルさん」 しかし、今はまだ辛抱のとき。 セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。 ──これは、20年前の断罪劇の続き。 喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。 ※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。 旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』 ※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。 ※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

(完結)「君を愛することはない」と言われて……

青空一夏
恋愛
ずっと憧れていた方に嫁げることになった私は、夫となった男性から「君を愛することはない」と言われてしまった。それでも、彼に尽くして温かい家庭をつくるように心がければ、きっと愛してくださるはずだろうと思っていたのよ。ところが、彼には好きな方がいて忘れることができないようだったわ。私は彼を諦めて実家に帰ったほうが良いのかしら? この物語は憧れていた男性の妻になったけれど冷たくされたお嬢様を守る戦闘侍女たちの活躍と、お嬢様の恋を描いた作品です。 主人公はお嬢様と3人の侍女かも。ヒーローの存在感増すようにがんばります! という感じで、それぞれの視点もあります。 以前書いたもののリメイク版です。多分、かなりストーリーが変わっていくと思うので、新しい作品としてお読みください。 ※カクヨム。なろうにも時差投稿します。 ※作者独自の世界です。

新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!

月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。 そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。 新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ―――― 自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。 天啓です! と、アルムは―――― 表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

処理中です...