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第四章
北の『守護者の樹』
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「アルバートよ」
グランサニュー公爵が少し厳しめな声で北の侯爵に声をかける。同時に二人の周りに高度な遮音結界が張られる。結界の中の話は周りに折れないしそばを通った人間んは二人の他愛のない雑談をしているようにみえるし聞こえる。
エマは少し庭を見て回り、庭の隅に捨てられて織られて朽ちかけた守護者の樹を見つけ怖い顔になっている。少しでも生きてる部分がないかを天幕の外側で雪の上にしゃがみこんで探っている。
「あの木は陛下に頂いたものだろう?……詰め腹を切る覚悟はあるか」
「公爵様……」
北の侯爵はここまで冷たい声を出されるとは思ってなかった。たかが植物、だと。妻が銀
の葉の植物を嫌がり、植物の鉢から若木を引っこ抜かせて『今の流行はこれなの』と妙に
ねじくれた幹に取ってつけたような緑色の葉っぱの樹をもってきたのだ。今までの鉢はい
つの間にか侯爵の部屋に鉢だけでおかれていた。元の位置におかれた植物は黒い靄の塊に
みえた。公爵は顛末をエリクに送った。
侯爵はぼつぼつと話始めた。家の中は妻が取り仕切っていた。そして控えめで大人しいと思っていた妻が『流行』の鉢植をうっとりと見つめる事が増えた。時々『アルフレッド』と気に向かって呟くので誰の名前かと訊ねると『樹につけた名前よ?』と答える。そして館内のメイドや預かっている娘たちの一部も侯爵の妻と同じように『流行』の樹をアルフレッドと呼び、妻と一緒に『アルフレッド』をうっとりと眺めているという。
公爵はだまって北の侯爵が話すままにしている。
そして預かっている領民の娘や従姉の娘など複数人の娘の妊娠が同時に機能発覚し、どの娘も頑なに相手の名を言わないのだが全ての妊娠した娘たちは侯爵の妻と一緒に『流行』の樹を崇めているという。侯爵は『宗教ごっこなぞ好きにさせればいいと思ってましたが……。今回のはなにか不気味で』とのたまう。
「……ちゃんと嫁と向き合ってなかったな?」
「え?いや、相手の方が……」
北の侯爵が色々と言い訳をし始めて段々言葉が少なくなる。とうとう観念した。
「そう、です。子供が出来てから妻は子供にかかりきりで」
「当たり前だろう。生まれたての赤子は親がいないといきられんがお前は妻に全部してもらわんと生きていけないわけではなかろう?」
侯爵はしょんぼりと下を向いた。
「ちゃんと見てないから他の男や信仰に奪われるんだよ」
公爵ははっきりきっぱりと北の侯爵に言い渡した。
「他の男……_」
北の侯爵は衝撃を受けたようだった。
「『アルフレッド』って名前を皆出してるだろうが。従姉とか預かった子の親元とかとっとと連絡せんか。……お主の妻も、その」
北の侯爵は首を横に振る。
「それは大丈夫。10年ほど前に最後の子供を流した時に……子供が産めなくなったと医療神官がはっきりと」
「そうか……。立ち入った事をすまん」
公爵は謝った。そして小さく呟く。
「ほんの数か月前は穏やかだったのにな」
北の侯爵も頷く。
「あの樹が来てからおかしくなった」
北の侯爵は溜息と共に吐き出した。
グランサニュー公爵が少し厳しめな声で北の侯爵に声をかける。同時に二人の周りに高度な遮音結界が張られる。結界の中の話は周りに折れないしそばを通った人間んは二人の他愛のない雑談をしているようにみえるし聞こえる。
エマは少し庭を見て回り、庭の隅に捨てられて織られて朽ちかけた守護者の樹を見つけ怖い顔になっている。少しでも生きてる部分がないかを天幕の外側で雪の上にしゃがみこんで探っている。
「あの木は陛下に頂いたものだろう?……詰め腹を切る覚悟はあるか」
「公爵様……」
北の侯爵はここまで冷たい声を出されるとは思ってなかった。たかが植物、だと。妻が銀
の葉の植物を嫌がり、植物の鉢から若木を引っこ抜かせて『今の流行はこれなの』と妙に
ねじくれた幹に取ってつけたような緑色の葉っぱの樹をもってきたのだ。今までの鉢はい
つの間にか侯爵の部屋に鉢だけでおかれていた。元の位置におかれた植物は黒い靄の塊に
みえた。公爵は顛末をエリクに送った。
侯爵はぼつぼつと話始めた。家の中は妻が取り仕切っていた。そして控えめで大人しいと思っていた妻が『流行』の鉢植をうっとりと見つめる事が増えた。時々『アルフレッド』と気に向かって呟くので誰の名前かと訊ねると『樹につけた名前よ?』と答える。そして館内のメイドや預かっている娘たちの一部も侯爵の妻と同じように『流行』の樹をアルフレッドと呼び、妻と一緒に『アルフレッド』をうっとりと眺めているという。
公爵はだまって北の侯爵が話すままにしている。
そして預かっている領民の娘や従姉の娘など複数人の娘の妊娠が同時に機能発覚し、どの娘も頑なに相手の名を言わないのだが全ての妊娠した娘たちは侯爵の妻と一緒に『流行』の樹を崇めているという。侯爵は『宗教ごっこなぞ好きにさせればいいと思ってましたが……。今回のはなにか不気味で』とのたまう。
「……ちゃんと嫁と向き合ってなかったな?」
「え?いや、相手の方が……」
北の侯爵が色々と言い訳をし始めて段々言葉が少なくなる。とうとう観念した。
「そう、です。子供が出来てから妻は子供にかかりきりで」
「当たり前だろう。生まれたての赤子は親がいないといきられんがお前は妻に全部してもらわんと生きていけないわけではなかろう?」
侯爵はしょんぼりと下を向いた。
「ちゃんと見てないから他の男や信仰に奪われるんだよ」
公爵ははっきりきっぱりと北の侯爵に言い渡した。
「他の男……_」
北の侯爵は衝撃を受けたようだった。
「『アルフレッド』って名前を皆出してるだろうが。従姉とか預かった子の親元とかとっとと連絡せんか。……お主の妻も、その」
北の侯爵は首を横に振る。
「それは大丈夫。10年ほど前に最後の子供を流した時に……子供が産めなくなったと医療神官がはっきりと」
「そうか……。立ち入った事をすまん」
公爵は謝った。そして小さく呟く。
「ほんの数か月前は穏やかだったのにな」
北の侯爵も頷く。
「あの樹が来てからおかしくなった」
北の侯爵は溜息と共に吐き出した。
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