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第三章
グランサニュー公爵夫人、修復に入る
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のんびりとした日々が続く。アルはじりじりしていた。エディとロゼは結局ここに拠点を置き、グランジエ領を拠点とするクランに参加したという。日々、魔の森の中層まで入っていると聞く。
アルはぎりぎりまで守護者の樹に魔力を吸われ、翌日は温泉に浸かって魔力を回復するというサイクルを繰り返している。アルの魔力のおかげか守護者の樹の幹に黒い靄が絡みついて痛んでいた部分の表面がポロリポロリとはがれて行く。
「お久しぶりです、殿下」
グランサニューの奥方、エマが冒険者のような恰好で現れた。後ろにはキャンプ用具一式を持った使用人が控えている。
「エマ殿!」
「あら、昔みたいにエマおばちゃまでよいのに」
エマはくすくす笑う。
「いや、その……」
「おかえりなさい、アル殿下。再会を祝したいところですが守護者様の『別荘』の手入れをします。これから21日間、私はこの場所で寝泊りするので……、殿下の負担も減ると思います」
エマは有無を言わさずアルを屋敷へ帰らせた。そして使用人を遠くに下がらせて儀式を開始した。途端に眉を顰める。
基幹石であるダイヤの原石が既に役に立たない石ころになっている。
「辛かったでしょ」
そう言ってエマは樹自身を慰めた。エマは樹に己の力を注ぐ。少しずつ靄が巻き付いた後の残っていた黒い樹皮がはがれ若い樹皮が現れる。
「こんなところかな」
エマの呟きは守護者に届いていた。
「それと、今日から21日、儀式をやりなおしますよ。今日は1つめの石の入れ替え。基幹石と1つめの2つの石の入れ替えをするからごっそり持っていかれちゃうから……寝てる時の魔力補給は控えめにお願いしますね。私が温泉に行ってる間はエチが来てくれますから」
銀色の葉が同意したというようにさやさやと動いた。
「まずは西の石から」
今回損傷が酷いはずの西の石を文言を唱えながら入れ替えた。今回は一人でやっているので魔力の消耗が激しい。石を入れ替えると虚脱感が酷いが、事前に用意していたポーションを飲み耐える。そしてゆっくりとハンモックに横になる。簡易の屋根と壁が三方にあり、守護者の樹に向かっている面には壁も何もなく素通しだった。
「暫く温泉に行ってくるといい」
陛下の声だった。セイラ妃とレア王女をアルに引き合わせる為に連れてきたのだという。後ろにはジョアンが控えていた。
「フロランが送ってくれると」
そうしてエマは温泉に向かう。陛下は本体となにか打合せをしていたらしく、木の幹に手をおいていた。
フロランの御する馬車で温泉につく。
「これは沁みるわぁ」
エマとジョアンはゆるりと湯に浸かる。
「魔力が減っていると特に沁みますね」
「急速にぐんぐん何かが体に入ってきてる感じがするわ」
「入ってきてますよ」
ジョアンはコロコロ笑う。この数日でジョアンはかなりやつれていたが温泉の心地よさに堅くなっていた心がほぐれているようだった。エマはあえて何が起こっていたかは訊ねない。話したければジョアンが話すだろうし話さないというなら聞かないという姿勢であった。二人は言葉少なに湯に浸かっていた。
「そろそろ湯あたりしますよ」
ジョアンについてきた侍女が注意する。二人が湯から上がると、たっぷりの水分を取らされる。
「では、お手入れしましょう」
ジョアンとエマの侍女達が手ぐすね引いて香油とエッセンシャルウォーターを持って待っていた。王都で流行っているものらしい。二人は顔を合わせてうふふと笑い侍女に身を任せた。
アルはぎりぎりまで守護者の樹に魔力を吸われ、翌日は温泉に浸かって魔力を回復するというサイクルを繰り返している。アルの魔力のおかげか守護者の樹の幹に黒い靄が絡みついて痛んでいた部分の表面がポロリポロリとはがれて行く。
「お久しぶりです、殿下」
グランサニューの奥方、エマが冒険者のような恰好で現れた。後ろにはキャンプ用具一式を持った使用人が控えている。
「エマ殿!」
「あら、昔みたいにエマおばちゃまでよいのに」
エマはくすくす笑う。
「いや、その……」
「おかえりなさい、アル殿下。再会を祝したいところですが守護者様の『別荘』の手入れをします。これから21日間、私はこの場所で寝泊りするので……、殿下の負担も減ると思います」
エマは有無を言わさずアルを屋敷へ帰らせた。そして使用人を遠くに下がらせて儀式を開始した。途端に眉を顰める。
基幹石であるダイヤの原石が既に役に立たない石ころになっている。
「辛かったでしょ」
そう言ってエマは樹自身を慰めた。エマは樹に己の力を注ぐ。少しずつ靄が巻き付いた後の残っていた黒い樹皮がはがれ若い樹皮が現れる。
「こんなところかな」
エマの呟きは守護者に届いていた。
「それと、今日から21日、儀式をやりなおしますよ。今日は1つめの石の入れ替え。基幹石と1つめの2つの石の入れ替えをするからごっそり持っていかれちゃうから……寝てる時の魔力補給は控えめにお願いしますね。私が温泉に行ってる間はエチが来てくれますから」
銀色の葉が同意したというようにさやさやと動いた。
「まずは西の石から」
今回損傷が酷いはずの西の石を文言を唱えながら入れ替えた。今回は一人でやっているので魔力の消耗が激しい。石を入れ替えると虚脱感が酷いが、事前に用意していたポーションを飲み耐える。そしてゆっくりとハンモックに横になる。簡易の屋根と壁が三方にあり、守護者の樹に向かっている面には壁も何もなく素通しだった。
「暫く温泉に行ってくるといい」
陛下の声だった。セイラ妃とレア王女をアルに引き合わせる為に連れてきたのだという。後ろにはジョアンが控えていた。
「フロランが送ってくれると」
そうしてエマは温泉に向かう。陛下は本体となにか打合せをしていたらしく、木の幹に手をおいていた。
フロランの御する馬車で温泉につく。
「これは沁みるわぁ」
エマとジョアンはゆるりと湯に浸かる。
「魔力が減っていると特に沁みますね」
「急速にぐんぐん何かが体に入ってきてる感じがするわ」
「入ってきてますよ」
ジョアンはコロコロ笑う。この数日でジョアンはかなりやつれていたが温泉の心地よさに堅くなっていた心がほぐれているようだった。エマはあえて何が起こっていたかは訊ねない。話したければジョアンが話すだろうし話さないというなら聞かないという姿勢であった。二人は言葉少なに湯に浸かっていた。
「そろそろ湯あたりしますよ」
ジョアンについてきた侍女が注意する。二人が湯から上がると、たっぷりの水分を取らされる。
「では、お手入れしましょう」
ジョアンとエマの侍女達が手ぐすね引いて香油とエッセンシャルウォーターを持って待っていた。王都で流行っているものらしい。二人は顔を合わせてうふふと笑い侍女に身を任せた。
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