悪役令嬢、冒険者になる 【完結】

あくの

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第三章

引きが強いネイサン

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 「うちの娘とネイサンは?」

クロードが答える。

「ネイサン殿下はさっきまでそこにいたんだけど?」



 ネイサンはマドレーヌたちの祖父と一緒に図書室にいた。

「そんなに大きな所じゃないですが」

「あそこで待ってるのも手持無沙汰ですから」

ネイサンは本来の愛想のいい少年の顔で答えた。何冊かの本を選び客間に戻る。一番に着なった本を手に取った瞬間、フロランが客間に走り込み、エリクがその本を開かせなかった。

「な」

「……お手柄、かな」

エリクがにんまり笑う。

「みつけたか」

ウージェーヌが顔をあげた。

「ああ。ネイサン殿下の引きがよかったな」

ネイサンがぽかんとしている。

「殿下、この本が夢魔の出入り口になっていたものだと思われます」

エリクが説明する。

「マリアンヌが毎日と言ったので出入り口がどこにあるか、を探す予定にしていました」

それをネイサンが見つけたというか持ってきたのだと教える。密かに何にも役に立てていない事を気にしていたネイサンは少しほっとする。

「私は少しだけ役にたったんだな」

ネイサンがにこっと笑う。

「少しじゃないですよ。沢山です。どこでみつけたんですか」

図書室の棚にあったと棚の場所を説明する。

「俺が再チェックしてくる。そういう違和感をさがしたらいいんだな?」

「私も行きます。二人でやった方が早い」

ルカは指示されてこの本を一度聖水をかけてから布で包み布の上に魔法で封印をする。

「もっとふえるけど……どうしようか」

「カーテン引っぺがしてそこに入るだけ入れて封印しようよ」

ウージェーヌが提案する。そのタイミングで不躾に魔法師団副団長が入って来た。ジェラールとエリクの幼馴染でもある元伯爵令嬢、で現在は自分の爵位で子爵位をもっているミーカという半分異国の血を持つ女性だ。

「数人の教会の人員と前神官長からの荷物を持ってきたよ」

そこには沢山の魔法陣が描かれた紙があった。

「また先見か」

「あれいつでも使えたらべんりなのにね」

ミーカは笑いながら言った。

「ウージェーヌ様に伝言です。『明日から石持ってうちの奥方がしばらくそっちいくから。今回は治療がメイン。育成はまた春以降に』って」

「……あの樹の事だと思います」

アルがウージェーヌに告げる。

「あら?初めまして、の方達が。魔法師団副団長のミーカです。よろしく」

「冒険者のアルだ」

「エディ」

「ロゼと申します」

ネイサンは少しいぶかし気な表情だったがここで口を出さない程度には頭がまわったようだ。もちろんウージェーヌ達も何も言わない。

「とりあえずドニ様に感謝だな」

エリクは紙をフロランと分けて持ち部屋を出た。

「あいつ逃げたな」

ジェラールが小さくつぶやいた。
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