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第三章
守護者の樹
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アルが頷く。アルとフロランの目が会う。
「魔物はトリモチ結界から離れて守護者の樹に接触。守護者がやつを捕縛、朝日がまともに当たるあの場所で抑えておくのでその腹の中のものを抑えこめと」
ネイサンはさきまで見えていた薄い緑の光がアルの肩の上に居なくなっているのに気が付いてなにか言おうとしたがアルは少しほほ笑んで首を横に振った。守護者はアルから離れる時にさよならを言った。
『ここの樹の力では朝日までが限界だ。ここの樹は力を失うので普通の樹になるか、枯れるかするだろう。俺は本体に戻る。王都かグランサニュー公爵領でな』
そう告げると守護者は消えた。守護者が消えたとたんフロランはかなりぐったりとなった。
「フロラン?」
「アル殿下、守護者様の代わりに結界を部屋にはりましたが……」
「フロランが結界をはったのだな?」
そういうとウージェーヌがフロランの手を取った。
「精霊殿にオヤジの魔力を使ってもいいと伝えてやってくれ」
そうしたらウージェーヌの方も疲れ切った顔になった。
「……まだ薄いの?」
「俺の魔力はどうだ?」
フロランの言葉にクロードが応える。結局祖母と祖父の力まで吸い上げ精霊は強めの結界を部屋に張った。グランジエ家の人々はマドレーヌとマリアンヌを除いて疲れ切った表情をしている。
マリアンヌの腹が時折変に膨らんで時は近いと告げている。夜明けまでも近づいているようだ。エリクとルカはマリアンヌの服を脱がせた。血まみれになるのが判っているからだった。全裸の上にはブランケットをかける。思いやりとかではなく。そのブランケットは四隅に聖なる印が描かれて腹から飛び出した何かを捕縛できるようにしていた。捕縛役はエリクでルカは腹から出た何かを捕縛した瞬間にマリアンヌにヒールを使うのだ。捕縛した後のルカのヒール以降はウージェーヌとマドレーヌたちの祖母、そしてロゼに任された。
使用人の中に1日に1回だけならヒールを使える人間がいるのでその人たちもヒール役に立候補した。
ウージェーヌは無理に食べて魔力を回復している。エリクに教えられてとっさでヒールを数回使えるようにはなっていたのだ。
「俺は無力だな」
ジェラールが苦々しく呟く。
「ジェラールは朝日が上がってから役に立ってもらうよ。僕の魔力タンクとしてね」
エリクが宣言する。
「死なない程度にそのみなぎってる魔力貰うから覚悟しててよ」
ジェラールはふっと笑う。
「そんなことで良かったらいくらでも」
「……先にロクサーヌ嬢から貰うか。ジェラールは一緒に来てもらう」
そんな話をしていると人ではないさりとて獣でもない声が上がる。音としか言いようがない。皆が総毛だった。
「捕縛」
エリクがマリアンヌの周りの結界を解く。柔らかなルカのヒールの術が癒しの光を放っていた。その光は部屋の中を満たした。
ルカがマジックバッグから大き目の壺を出す。エリクはその壺にブランケットの包みを入れた。水が揺れているような音が続いている。ロゼはいち早く動いてマリアンヌに自分が着ていた毛布を体を隠すようにかけた。
「なんだ、それ」
ウージェーヌが壺を見て訊ねる。
「聖水の壺。ドニ様から持っていけって言われてたから」
「神官のおっちゃんの?」
「あの人、時々先見が降りてくるんだって」
王族出身の神官にたまにあることだった。
「魔物はトリモチ結界から離れて守護者の樹に接触。守護者がやつを捕縛、朝日がまともに当たるあの場所で抑えておくのでその腹の中のものを抑えこめと」
ネイサンはさきまで見えていた薄い緑の光がアルの肩の上に居なくなっているのに気が付いてなにか言おうとしたがアルは少しほほ笑んで首を横に振った。守護者はアルから離れる時にさよならを言った。
『ここの樹の力では朝日までが限界だ。ここの樹は力を失うので普通の樹になるか、枯れるかするだろう。俺は本体に戻る。王都かグランサニュー公爵領でな』
そう告げると守護者は消えた。守護者が消えたとたんフロランはかなりぐったりとなった。
「フロラン?」
「アル殿下、守護者様の代わりに結界を部屋にはりましたが……」
「フロランが結界をはったのだな?」
そういうとウージェーヌがフロランの手を取った。
「精霊殿にオヤジの魔力を使ってもいいと伝えてやってくれ」
そうしたらウージェーヌの方も疲れ切った顔になった。
「……まだ薄いの?」
「俺の魔力はどうだ?」
フロランの言葉にクロードが応える。結局祖母と祖父の力まで吸い上げ精霊は強めの結界を部屋に張った。グランジエ家の人々はマドレーヌとマリアンヌを除いて疲れ切った表情をしている。
マリアンヌの腹が時折変に膨らんで時は近いと告げている。夜明けまでも近づいているようだ。エリクとルカはマリアンヌの服を脱がせた。血まみれになるのが判っているからだった。全裸の上にはブランケットをかける。思いやりとかではなく。そのブランケットは四隅に聖なる印が描かれて腹から飛び出した何かを捕縛できるようにしていた。捕縛役はエリクでルカは腹から出た何かを捕縛した瞬間にマリアンヌにヒールを使うのだ。捕縛した後のルカのヒール以降はウージェーヌとマドレーヌたちの祖母、そしてロゼに任された。
使用人の中に1日に1回だけならヒールを使える人間がいるのでその人たちもヒール役に立候補した。
ウージェーヌは無理に食べて魔力を回復している。エリクに教えられてとっさでヒールを数回使えるようにはなっていたのだ。
「俺は無力だな」
ジェラールが苦々しく呟く。
「ジェラールは朝日が上がってから役に立ってもらうよ。僕の魔力タンクとしてね」
エリクが宣言する。
「死なない程度にそのみなぎってる魔力貰うから覚悟しててよ」
ジェラールはふっと笑う。
「そんなことで良かったらいくらでも」
「……先にロクサーヌ嬢から貰うか。ジェラールは一緒に来てもらう」
そんな話をしていると人ではないさりとて獣でもない声が上がる。音としか言いようがない。皆が総毛だった。
「捕縛」
エリクがマリアンヌの周りの結界を解く。柔らかなルカのヒールの術が癒しの光を放っていた。その光は部屋の中を満たした。
ルカがマジックバッグから大き目の壺を出す。エリクはその壺にブランケットの包みを入れた。水が揺れているような音が続いている。ロゼはいち早く動いてマリアンヌに自分が着ていた毛布を体を隠すようにかけた。
「なんだ、それ」
ウージェーヌが壺を見て訊ねる。
「聖水の壺。ドニ様から持っていけって言われてたから」
「神官のおっちゃんの?」
「あの人、時々先見が降りてくるんだって」
王族出身の神官にたまにあることだった。
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