悪役令嬢、冒険者になる 【完結】

あくの

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第三章

ネイサン、意外な事で役に立った、かもしれない

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 「で、アランからリディ嬢を紹介されたんだね」

ウージェーヌが割って入った。

「あ、うん、そう」

ネイサンの口調が幼くなっている。

「アランはリディ嬢とどうやって知り合ったか話した?」

ネイサンは暫く考えていたが、ああ、と顔を上げる。

「表向きは中等部の時の初恋っていう事になってるけど中等部の時に父親に連れて行かれた会合にいた子だって言ってた。アランがちょっと不味い事言ったかもって顔になったから気が付かないふりしたけど……」

中等部からの付き合いも言い寄ってきたのも本当だが、他人が想定していた舞台ではないという事だなとウージェーヌは思っていた。アランはエリクによってかなり情報を抜かれ代わりに貴族が偉い理由や、他人を尊重する事の意味などを刷り込まれた。こういう作業が出来るのはエリクの魔法と神殿の『薬』のお陰だったが、その話は大人、エリク、ジェラール、ウージェーヌの間の秘密だった。人格を変えられたアランの処遇をどうするか決まっていなかった。そして今は自責の念でほぼ廃人になっている。自分がして来たこと、マドレーヌに対してしでかした事の重大さを今更感じているようだ。

「リディ嬢が学生に対しての、貴族に対しては聖女?正妃?……夫人に対してはアルフレッドとバスチエの夫、いや、元夫か」

ウージェーヌが頭の中を口に出す。こういう時はウージェーヌの頭が働いている時なので家族、kロードとマドレーヌと友人ジェラールとエリクは知っているし他の客人は邪魔をする理由もないので客間は静かだった。
 ウージェーヌが落ち着いた頃エリクが言葉を発した。

「多分黒幕、もしくは黒幕に一番近いのは聖女か元バスチエ夫か」

ウージェーヌがきっぱりと言う。

「両方だろ」

「あそこが中心か」

「ああ。そのすぐ下がアルノー伯爵だな。うちにアルノーとの縁談が来たのは偶然だと思うが。北の侯爵の縁者が夫人で、夫人自身は真っ白だったからな」

 アルノー伯爵自身の評価も悪くなかった。女癖も娼館に偶に通っている位でそこは下級貴族の娘が身売りする場所であったこと位だった。娼館は情報交換も兼ねているので夫の娼館通いを問題院竹刀妻も多い。ウージェーヌは『そんな暇ない。当主で通ってるなんて領地経営がよほどうまくいってるんだな』という。ジェラールは社交も兼ねて高給娼館に行くことはある。ただしその時のパートナーはベルティエ家の秘密部隊の女性だった。

「ただな、バスチエの元夫、どこに潜んでるかわからんのだよ」

「あの」

ネイサンがおずおずと口を挟む。

「リディの下宿の地下にいるかも。アランには内緒だと一度だけ連れて行かれたことがあるんで」

「ルディ」

「はい」

どこからともなく声が聞こえる。

「チェック」

「了解」

ウージェーヌはそれだけ言う。

「うちの諜報部隊に調べさせる。俺達はアレンだったかもしれない魔物と対峙だな」

ウージェーヌの言葉に皆頷いた。
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