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第三章
友達はいなかった
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誰もネイサンの発言をフォローできなかった。空気を読まないエリクでさえ藪をつついて蛇を出したなと悟る。ロクサーヌが明るく言う。
「これからだよ。変わったっていうか元に戻ったネイサンを見てもらうといいよ。評価は変わるからね」
ロクサーヌはあくまで明るい。彼女としてはネイサンは王宮に帰す気はなかった。
「ウジェ、出来たらアレンは生け捕りにしてほしい」
エリクが要求する。ジェラールとウージェーヌはエリクの意図を読んだが他の人間は皆『さすが神官長。慈悲深い』と考えていた。
「アランの漂白と同じ事が出来るか、ってのとアルノーの情報を引き出したい」
エリクは指先同士をあわせて手が丸いボールを作っている。その中で魔力が渦巻いているのが判る。
「エリクは神官長より諜報部員の方が合ったるな」
ジェラールが言うとエリクがにやりとする。
「出世したのは予想外だったな。俺は神殿の情報を集めるために入り込んだだけなんだけど」
エリクは姉の為に教会に送り込まれたようなものだった。長姉の夫はそう言うことに不向きでありエリクがむいていた、というのは大きいのだろう。
「教会も浮世も興味深い事ばかりだよ」
ウージェーヌもジェラールもこの本性を知っているので顔色一つ変えない。他の人間には秀麗な美貌のお優しい神官長様、だったのでそのイメージが瓦解していた。
が、マドレーヌはぼんやりこの部屋に令嬢を引き入れたら面白そうだなと思った。アルはたくましく凛々しいし、ロクサーヌも凛として美しい。実の父ながらウージェーヌは眉目秀麗だし神官長もジェラールも麗しい。ネイサンもネイサンと思わなければハンサムな少年だった。
「ここに令嬢を連れてきたら……」
「バスチエ男爵令嬢とか?」
マドレーヌの一言にロクサーヌが皮肉な表情をする。
「彼女は男爵令嬢をなのれないのだけどね」
とジェラールが説明してくれる。
「バスチエ家の男爵位は夫人のものなのは判ってるね?」
マドレーヌとロクサーヌは頷いた。
「彼女、リディさんは男爵夫人の夫の庶子でね。なので男爵令嬢扱いがおかしかったわけなのだけど普通科にいたアランと仲良くなった経緯が判らんのだよな」
ロクサーヌがちらりとネイサンを見る。ネイサンは俯く。アランとリディと三人で何度か楽しんだからだ。
「ねぇ、ネイサン。迂闊よね」
ロクサーヌがあくまでにこやかだったがネイサンは小さくなっている。
「それはそうとして、ネイサン殿下、訊ねたいことがあるんだが」
ウージェーヌが話を逸らしたかと周りは思ったがそうではなかった。
「リディ嬢と知り合ったのはアランの紹介だよね?」
顔を上げたネイサンはその話題がまだ続くのかと思ったが素直に頷いた。
「アランと殿下はどうやって知り合ったんだ?」
「母の御茶会でアランを紹介された、のかな。母がお友達になれそうな子よって」
「それが高等部に入学する前?」
「直前、だったと思う。……初めての友達で舞い上がってた」
ぽつんとネイサンが言う。
「私もアレンもいたじゃない」
ロクサーヌの言葉にネイサンは首を横に振る。
「ロクサーヌは……婚約者だよ。友達じゃない。アレンは……あくまで婚約者の友達、俺の友達じゃない」
ネイサンの言葉にアルはぽんぽんと頭を撫でる。アルは冒険者生活も悪い事じゃなかったなと思いながら弟の頭を撫でていた。
「これからだよ。変わったっていうか元に戻ったネイサンを見てもらうといいよ。評価は変わるからね」
ロクサーヌはあくまで明るい。彼女としてはネイサンは王宮に帰す気はなかった。
「ウジェ、出来たらアレンは生け捕りにしてほしい」
エリクが要求する。ジェラールとウージェーヌはエリクの意図を読んだが他の人間は皆『さすが神官長。慈悲深い』と考えていた。
「アランの漂白と同じ事が出来るか、ってのとアルノーの情報を引き出したい」
エリクは指先同士をあわせて手が丸いボールを作っている。その中で魔力が渦巻いているのが判る。
「エリクは神官長より諜報部員の方が合ったるな」
ジェラールが言うとエリクがにやりとする。
「出世したのは予想外だったな。俺は神殿の情報を集めるために入り込んだだけなんだけど」
エリクは姉の為に教会に送り込まれたようなものだった。長姉の夫はそう言うことに不向きでありエリクがむいていた、というのは大きいのだろう。
「教会も浮世も興味深い事ばかりだよ」
ウージェーヌもジェラールもこの本性を知っているので顔色一つ変えない。他の人間には秀麗な美貌のお優しい神官長様、だったのでそのイメージが瓦解していた。
が、マドレーヌはぼんやりこの部屋に令嬢を引き入れたら面白そうだなと思った。アルはたくましく凛々しいし、ロクサーヌも凛として美しい。実の父ながらウージェーヌは眉目秀麗だし神官長もジェラールも麗しい。ネイサンもネイサンと思わなければハンサムな少年だった。
「ここに令嬢を連れてきたら……」
「バスチエ男爵令嬢とか?」
マドレーヌの一言にロクサーヌが皮肉な表情をする。
「彼女は男爵令嬢をなのれないのだけどね」
とジェラールが説明してくれる。
「バスチエ家の男爵位は夫人のものなのは判ってるね?」
マドレーヌとロクサーヌは頷いた。
「彼女、リディさんは男爵夫人の夫の庶子でね。なので男爵令嬢扱いがおかしかったわけなのだけど普通科にいたアランと仲良くなった経緯が判らんのだよな」
ロクサーヌがちらりとネイサンを見る。ネイサンは俯く。アランとリディと三人で何度か楽しんだからだ。
「ねぇ、ネイサン。迂闊よね」
ロクサーヌがあくまでにこやかだったがネイサンは小さくなっている。
「それはそうとして、ネイサン殿下、訊ねたいことがあるんだが」
ウージェーヌが話を逸らしたかと周りは思ったがそうではなかった。
「リディ嬢と知り合ったのはアランの紹介だよね?」
顔を上げたネイサンはその話題がまだ続くのかと思ったが素直に頷いた。
「アランと殿下はどうやって知り合ったんだ?」
「母の御茶会でアランを紹介された、のかな。母がお友達になれそうな子よって」
「それが高等部に入学する前?」
「直前、だったと思う。……初めての友達で舞い上がってた」
ぽつんとネイサンが言う。
「私もアレンもいたじゃない」
ロクサーヌの言葉にネイサンは首を横に振る。
「ロクサーヌは……婚約者だよ。友達じゃない。アレンは……あくまで婚約者の友達、俺の友達じゃない」
ネイサンの言葉にアルはぽんぽんと頭を撫でる。アルは冒険者生活も悪い事じゃなかったなと思いながら弟の頭を撫でていた。
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