悪役令嬢、冒険者になる 【完結】

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第三章

グランジエ家 客間

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 「アル殿下もネイサン殿下も第一線には出しませんよ」

ウージェーヌがきっぱりと言った。

「あんたたちが敵の手に堕ちたらお話にならない」

ウージェーヌは一枚の羊皮紙をアルに手渡す。

「もしこの屋敷に魔物が入ってきたらアル殿下、それを守護者様に見せてくれ」

守護者はアルにそれを今見てもいいかと訊けという。

「守護者様が今みたい、って」

「見てもいいですけど、それが何かはアルにも話さない事、いいですね?」

ウージェーヌはそこに守護者がいる、肩の上を見て言った。

「ウジェおじ様みえてらっしゃいます?」

ロクサーヌが訊ねる。

「見えてるというかいるのは判る。マドレーヌも判ってるんだろ?」

マドレーヌは不承不承という感じで頷いた。

「みえてはいない?」

マドレーヌは訊ねるロクサーヌに頷いた。

「気配を感じます。悪いものでないのも」

マドレーヌは首を少し傾げる。

「そう言えばアルにまとわりついてた黒い靄と……ネイサン殿下の周りに時折現れる黒い影、似てる気がします」

「ああ、そうだね。あの時の呪いって言うか妬みっていうかの影と似てるね」

ロゼが同意しじっとネイサンを見る。

「ただこちらの殿下の影は殿下を取り込もうとしてるけどロクサーヌ様の力が跳ね返して弾き飛ばしてる感じ。それと……なにか護符もってらっしゃるでしょ?その護符はちゃんと効果あるようです」

ロクサーヌがロゼに訊ねる。

「聖なる力を?」

「いえ、あたしは黒魔法と相性悪くて。避けるために黒魔法の気配を覚えたら、少し見えるようになったんです。うちの国は土着の死体操者がいて。そういう家の前で体調崩したりしてたから」

これはマドレーヌたちも初めて聞いた。

「冒険者としては結構便利な力ですね」

ロゼはそう締めくくった。

「近寄ってもこない」

エリクが魔法師団の一人に連れられて転移してきた。暫く外で森の様子を見ていたのだ。

「そうか。……餌が必要か」

ウージェーヌの言葉にマドレーヌが顔を番ませる。

「マドレーヌ、あれの核はアレンだ。お前じゃ餌にならんのだよ」

フロランがマドレーヌに言い渡す。

「マドレーヌとクロードでマリアンヌを守れば良い。俺はマリアンヌは護る気ないぞ」

フロランは言い捨てて部屋を出た。

「どうにもマリアンヌとフロランは相性が悪」

ウージェーヌはおっとりと言う。エリクがそれを聞いて返す。

「姉弟のうちの家と一緒だね。二番目と三番目は仲が悪いのさ」

エリクはしたり顔で続ける。

「ジュスト殿下とネイサン殿下もダメでしょう」

ネイサンは肩を竦める。

「俺を兄弟扱いしてくれるのはアル兄上だけですから」





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