悪役令嬢、冒険者になる 【完結】

あくの

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第三章

ネイサン第三王子

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 守護者はアルに耳打ちをする。

「もしかして俺が座ってないから皆立ってる?」

とおそるおそる訊ねる。皆笑っているのでアルは不味い事をしてしまった、と思いながら客間の椅子の一つに腰かけるとみなそれぞれ適切な位置に座った。
 ロクサーヌとジェラールがネイサンがアルマンに対して臣下として振舞っている事に安堵した。少しずつ聖女からの暗示から抜けている証拠に見えるからだ。

 ネイサンは幼いころ、アルが王子宮におり自分は母親の宮で育っている、その一事で自分は父から跡継ぎ候補から外されていると思っていた。自分以外の王子達は側妃宮の側の王子宮におり、王子宮にいる事、が跡継ぎ候補になっているからだと。だから子供の頃のネイサンの世界はなにか寂しい世界だった。母親の正妃は育児はせず甘やかす事だけに熱心だった、がそれはそれで心地よいとネイサンは思っていた。そう、他の王子王女達と同じ、母親の愛は歪であったが十分に与えられていた。
 暫くはベルティエ家でも育てられ一応の行儀を身に着けた。そして4年前から「王太子」は貴方よという母親と一部貴族たちの注ぐ毒に染められていく。聖女が施す閨教育での洗脳もあいまってネイサンは傲慢に傲岸になっていった。そう、ネイサンは気が付いていなかったがネイサンに毒を注ぐ貴族の中にアルノー伯爵と元バスチエ男爵夫人の夫も含まれていた。彼らが家名も告げず、『お母様のお友達』としか紹介されていない事も一因ではあるが。
 ネイサンは聖女の顔や体を全く覚えていたい。それが記憶に残っていない事が異常だと気が付いていなかった。
 ネイサンが高等部に入った頃には母親そっくりの享楽的で性的な事にしか興味がないという表面ができあがっていた。ロクサーヌはネイサンの元を知っていたので高等部に入学した頃のネイサンに違和感を持っていた。

 そうして今回の事でネイサンの状態が改善し、ロクサーヌはグランジエ家に感謝していた。色々話も大がかりになったし、問題も多いとしても、ロクサーヌには一番の気がかりのネイサンの様子が落ち着いたからだ。しかし、父親から簡単に説明された森の魔物の事は友人のアレンが関わっているようでそれはそれで気がかりなり、今回の捕り物には加わるつもりで来た。が、アル達に会いに行く前に父親にはっきり言われた。

「捕り物ではなくネイサン王子とアルマン王子の護衛に回ってくれ。エリクが表に出ると言ってるので誰か聖属性の人間が側に居ててほしい」

父親がそういうことを言うのでロクサーヌは反抗しなかった。

「もしアレンがアランと同じものを纏っているならせっかくかなり聖女やアグネスの影響から抜けたネイサンの心身に悪い」

そう言われたのも大きい。

「皆揃ってるね」

ウージェーヌが帰ってきて皆が集められている客間に顔をだした。
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