悪役令嬢、冒険者になる 【完結】

あくの

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第三章

正体に心当たりが出てきた

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 この時期、森にはこの季節しかならないベリーがありフロランは祖母の為にベリーを摘みに森に入っていた。
 精霊に注意を促され、息をひそめ精霊のいう場所に隠れる。黒い靄に包まれた人型がずりずりと動いている。フロランは吐き気を必死で耐える。
 黒魔術の靄そっくりな気配は何かを探すようにずるずると遠ざかっていった。
 フロランは精霊の言う通りにこそこそとかなり遠回りして自宅に戻った。

「あれなんだったんだ」

フロランは父親に報告に行ったが父親は王都に行っていて帰宅予定は夜だという。

「クロード、……森にヤバイもんがいた」

「何だ?」

クロードの顔が厳しくなる。

「……魔の森の中心の黒い靄によく似た……人が作ったああいう靄を濃縮して人の体に纏わせたようなのが森にいた」

「わからん」

「俺だって正体なんかわからん、ただあれは冒険者が対処できるようなもんじゃないって精霊が言ってる。というか、聖なる力がないと対処できないようなものだって」

フロランが続ける。

「あれの『核』は人だって……。ただ領地の人間じゃないって」

フロランが難しい顔になる。

「ここ最近ここに来た事ある人間の気配がするって」

精霊の言葉を聞いてクロードもフロランも一人の男の事が浮かんだ。

「……でもあいつが?」

「あいつか……一応顔合わせでアルノーの一家は来てるし、グランサニューのおっちゃんか。……考えるよりも先に村に伝令を。あと、マドレーヌたちにも森に近づくなって言わないと」

「そうだな。俺が村にひとっ走りしてくる」

「俺は父さんに緊急招集をかけるよ」

「あいつの所在も確認してもらって」

「わかった」

クロードとフロランは言葉での説明がなくても通じ合ったりするのでマドレーヌやマリアンヌは会話に置いて行かれる事が多い。今回も側にいたマリアンヌが目をぱちくりしてる。

「そだ、マリアンヌ」

「はい」

フロランに名を呼ばれてマドレーヌの背筋が伸びる。

「アレン、アレンから最後に手紙北の葉いつだ?」

「10日くらい前かしら。マドレーヌが帰宅する時にお返事を出したわ」

「……マドレーヌが帰宅する事をアレンに教えたんだね?」

「ええ、いけなかったかしら」

マリアンヌは不安そうだ、クロードが頷く。

「マドレーヌと王太子の帰還は秘密だって知ってただろ?」

「でも、アレンよ?漏らすような人じゃない」

「アレンの人となりは信用してる。が、あいつの周りはきな臭いから極力情報は与えないように、って言ったよな?」

クロードの言葉にマリアンヌはみるみる涙目になっている。フロランはマリアンヌのこういう普通の令嬢である所が苦手だった。そして迂闊過ぎると頭を抱えた。

「俺、村に行ってくるからな。父さんの事お願いする。それとクロード、状況説明してマリアンヌはおばあ様の所に預けたらいい。あの人が説明してくれる。自分が何をしたか、をな」

フロランは軽くため息をついてからジロリとマリアンヌを一睨みし、村に向かった。
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