悪役令嬢、冒険者になる 【完結】

あくの

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第三章

仕掛けは全て一度分解されている

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 「つまり……、正妃の責任をバスティエ公爵家が取ってるという事ですか」

アルが状況がつかめていないながらに公爵に訊ねる。

「いや、あの本宅には色々仕掛けがあってな。それを利用して色々やってるんだ。今の神官長のエリクがジェラールの従弟でな。屋敷のそういう仕組みとか全部調べてある……。ってことはウジェも知ってるって事だろう?」

グランサニュー公爵がじろりとウージェーヌを見る。

「さぁ?」

ウージェーヌはにっこり笑う。アルはその笑顔にどきりとした。マドレーヌそっくりだったからだ。

「そういえばマドレーヌ、嬢は?」

「一緒にきたロゼとエディを落ち着き先に連れて行ってから帰ってきてないね。この時期しか取れないベリーでも摘みに行ったかな?あのジャムは母さんの好物だから」

ウージェーヌは笑顔のままで答える。

「……その笑顔胡散臭いぞ、ウジェ」

公爵が注意をする。陛下は声を殺して笑っている。

「エリクとウジェには悪い事を沢山教わったな」

陛下が楽し気に言う。

「悪い事?」

アルが不思議そうに尋ねると王宮の抜け道を使って下町に遊びに行ったり、レポートを書く時のこつを教わったりと学生らしい話ばかりだった。

「アルには学院を体験させてやれなかったのは残念だな。生涯の友と出会えたり、友の別の側面がみえたり……」

と陛下は残念そうであった。公的には陛下の側近筆頭はジェラール、現バスティエ公爵であった、が、学生時代の話を聞くとウージェーヌや神官長エリクなどとかかわりが深かったようだ。

「ウージェーヌは王都に来なくなったからな。正妃のせいで」

グランサニュー公爵が言う。

「大叔父殿も来なくなりましたよね」

陛下が片眉を上げる。

「いや、ちょっと療養が……」

「モーリスがいるからってさぼらないでください」

陛下がこれ幸いと本音を言う。ここでは側妃、特に第二側妃のミシェルがいないので自由に発言できて陛下は気楽そうだ。ミシェルはエリクの姉で、気を回しすぎる嫌いがあるからだ。

 「とにかくベルティエ公爵家だな」

グランサニュー公爵はごまかすように咳払いをしてから言った。

「俺も」

「アルはまだ駄目だ。……ネイサンとロクサーヌ嬢が明日来るからネイサンとは逢える。レアとセイラはもう少し後だな。この家と王宮を繋ぐ様に魔導師団長と交渉中だ」

「魔法陣の作成ですか……」

ウージェーヌが提案する。

「うち用のも描いてもらえるとありがたいかも。そうすると魔法師団長が一番欲しいものも手に入りますよ。なんならこれから見に行きますか?」




 そう言ったウージェーヌが陛下たちを連れてきたのは温泉だった。

「なんだ、この魔素の強さは」

「冒険者用だったんですよ、最初は。で、我が家専用の浴場を作ったというわけです」

ウージェーヌが解説する。

「魔法師団用の浴場を作っていいので、我が家にも羊皮紙は欲しいなと」

「誰が使えるんだ?」

「さぁ?ただ魔法師団の方がいききしやすくなるかなと。俺達はギルドので行き来するし。どうせ陛下はアルに逢いにくるでしょ、暇見て。……陛下たちが気楽にギルドを使うからギルド長の胃に穴が空きかねんのですよ」

陛下と公爵が顔を見合わせる。

「神殿の方をつかったらいいのに。エリクなら気楽に使わせてくれると思いますよ」

ウージェーヌの一言で公爵と陛下は神殿という手があったかと思い出した。
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