100 / 212
第三章
父と子の再会
しおりを挟む
陛下は何も言わずアルを抱きしめた。
「とりあえず、樹の所にいるぞ。気が済んだら出てこい』
グランサニュー公爵がそう言ってフロランと外に出た。
「うちや側妃宮の樹よりはかわいらしいな」
銀の葉の樹を公爵は撫でる。
「マダムエマの魔法には驚きました。気が付くと樹が大きくなってるって感じで」
「魔石やダイヤモンドの原石の利用もするのだよ。一般の農家や植物に関する魔法を使う人間はそこまで出来ないというのもあるな」
「魔法も色々あるんですね。俺ら、魔法と相性わるいから」
フロランは銀の葉の元に設えられた椅子とテーブルに公爵を案内した。
「閣下はおひとりで?」
「ああ、打合せもあるしな。ほっといてもらえるとありがたい」
フロランはアルの時と同じように少し離れた位置に立つ。公爵家の騎士が鳴れた手つきでお茶をいれ、テーブルに小菓子をセッティングする。ふわふわと小さな守護者が出てきてテーブルの小菓子をつついている。
フロランは遠くからそれを見て薄っすらと笑っている。小さな守護者を見ていると小妖精を連想するのだ。そこに陛下とアルマンが複数人の騎士を連れて歩いてきた。アルは多少憮然としているようだった。フロランに妖精が伝えてくるには父親、陛下に子供扱いされて機嫌が悪いだけだと。3人が着席すると騎士に紛れていたメイドがあれこれと用意している。
「……茶は入れなおせ。薬がしこまれている。そこのメイドをひったててな」
陛下が物騒な事をいいだしたがその場にいた陛下たちとフロランには理由が伝わっていた。今お茶を入れた陛下が連れて来たメイドがアルマンが陛下を狙って媚薬を茶に仕込んだらしい。グランジエ家には預かり知らぬ話であり内々で処理すると守護者が言っている。
陛下がお茶の入ったポットに手を当てて暫くすると掌に青い結晶が握られていた。
「ふむ、ちゃんと出来たかは魔法師団長の分析次第だな」
陛下は呟く。魔法師団長に習ったところの魔法で色々な薬物を対象から抽出する魔法であった。陛下自身はわかっていないが陛下の魔法センスは高く、魔法陣を脳内に正確に描きだせるのでいちいち羊皮紙に描きださなくても魔法が使えるのだ。
多分移動魔法も使えあるのだがそれだけはつかわないで欲しいと子供の時に守護者との誓約であった。『万が一に間違えて手と足と頭がばらばらに違うところに飛んでいったらいくら我でも治せぬからな』とさらっと言われて子供の陛下は恐怖した。
『グランジエ家の陞爵は難しいぞ』
守護者がいると陛下、公爵、アルの間でも思念で会話が交わせる。これも王太子の条件、王位を継げる証であるがこれは守護者だけが知っていることだった。そう考えると公爵にはまだ『王位』になにかあった時の備えの機能が残っているという事であった。
『少し前に爵位をあげた所だからな。マドレーヌ嬢に直接爵位をと提案したら断られたな。どうもあの娘はどう扱っていいか……』
陛下が遠い目になる。美しい女性に対する対応をとってもなんというか暖簾に腕押しなのだ。
『無理ですよ。それこそ5才の時のレアよりもそう言う面では幼いです』
『……人の事いえんだろう、アルは』
アルの思念に公爵が突っ込む。
『女性に対する手ほどきはした方がよさそうだな。……閨だけではなく、対女性の扱いも含めてな』
陛下がきっぱりと申し渡す。
守護者の枝を一枝持って屋敷に戻る。その枝があるなら枝のある部屋の中の話はちゃんと聞き取れるので、と守護者が言ったのだ。陛下の胸に銀の葉が揺れている。
媚薬を盛ったメイドは陛下かアルの閨に忍び込みたかったと言う。王族の子供を身ごもれば一生安泰だから、と。下級貴族の娘でもあるメイドの狙いはアルであろうと尋問した騎士は言った。
「殿下は婚約者もおられないのであわよくば、と考えたらしいです」
陛下は暫く考えていた。ウージェーヌがさらっと言い切る。
「ま、暫くは我が家で拘束ですかね」
「いや。拘束するならベルティエの家だな。あそこは色々堅牢な上に……罠も張り巡らせているから」
グランサニュー公爵が口を挟む。
「ああ、ネイサン王子が餌ですか」
「そういうこと。アルノー伯爵本人がアランの謝罪にベルティエ公爵家に日参してる。その上でバスチエの小娘をロクサーヌ嬢のメイド見習いで雇ってるよ」
ウージェーヌが王都から離れている間の出来事を公爵が伝えた。
「とりあえず、樹の所にいるぞ。気が済んだら出てこい』
グランサニュー公爵がそう言ってフロランと外に出た。
「うちや側妃宮の樹よりはかわいらしいな」
銀の葉の樹を公爵は撫でる。
「マダムエマの魔法には驚きました。気が付くと樹が大きくなってるって感じで」
「魔石やダイヤモンドの原石の利用もするのだよ。一般の農家や植物に関する魔法を使う人間はそこまで出来ないというのもあるな」
「魔法も色々あるんですね。俺ら、魔法と相性わるいから」
フロランは銀の葉の元に設えられた椅子とテーブルに公爵を案内した。
「閣下はおひとりで?」
「ああ、打合せもあるしな。ほっといてもらえるとありがたい」
フロランはアルの時と同じように少し離れた位置に立つ。公爵家の騎士が鳴れた手つきでお茶をいれ、テーブルに小菓子をセッティングする。ふわふわと小さな守護者が出てきてテーブルの小菓子をつついている。
フロランは遠くからそれを見て薄っすらと笑っている。小さな守護者を見ていると小妖精を連想するのだ。そこに陛下とアルマンが複数人の騎士を連れて歩いてきた。アルは多少憮然としているようだった。フロランに妖精が伝えてくるには父親、陛下に子供扱いされて機嫌が悪いだけだと。3人が着席すると騎士に紛れていたメイドがあれこれと用意している。
「……茶は入れなおせ。薬がしこまれている。そこのメイドをひったててな」
陛下が物騒な事をいいだしたがその場にいた陛下たちとフロランには理由が伝わっていた。今お茶を入れた陛下が連れて来たメイドがアルマンが陛下を狙って媚薬を茶に仕込んだらしい。グランジエ家には預かり知らぬ話であり内々で処理すると守護者が言っている。
陛下がお茶の入ったポットに手を当てて暫くすると掌に青い結晶が握られていた。
「ふむ、ちゃんと出来たかは魔法師団長の分析次第だな」
陛下は呟く。魔法師団長に習ったところの魔法で色々な薬物を対象から抽出する魔法であった。陛下自身はわかっていないが陛下の魔法センスは高く、魔法陣を脳内に正確に描きだせるのでいちいち羊皮紙に描きださなくても魔法が使えるのだ。
多分移動魔法も使えあるのだがそれだけはつかわないで欲しいと子供の時に守護者との誓約であった。『万が一に間違えて手と足と頭がばらばらに違うところに飛んでいったらいくら我でも治せぬからな』とさらっと言われて子供の陛下は恐怖した。
『グランジエ家の陞爵は難しいぞ』
守護者がいると陛下、公爵、アルの間でも思念で会話が交わせる。これも王太子の条件、王位を継げる証であるがこれは守護者だけが知っていることだった。そう考えると公爵にはまだ『王位』になにかあった時の備えの機能が残っているという事であった。
『少し前に爵位をあげた所だからな。マドレーヌ嬢に直接爵位をと提案したら断られたな。どうもあの娘はどう扱っていいか……』
陛下が遠い目になる。美しい女性に対する対応をとってもなんというか暖簾に腕押しなのだ。
『無理ですよ。それこそ5才の時のレアよりもそう言う面では幼いです』
『……人の事いえんだろう、アルは』
アルの思念に公爵が突っ込む。
『女性に対する手ほどきはした方がよさそうだな。……閨だけではなく、対女性の扱いも含めてな』
陛下がきっぱりと申し渡す。
守護者の枝を一枝持って屋敷に戻る。その枝があるなら枝のある部屋の中の話はちゃんと聞き取れるので、と守護者が言ったのだ。陛下の胸に銀の葉が揺れている。
媚薬を盛ったメイドは陛下かアルの閨に忍び込みたかったと言う。王族の子供を身ごもれば一生安泰だから、と。下級貴族の娘でもあるメイドの狙いはアルであろうと尋問した騎士は言った。
「殿下は婚約者もおられないのであわよくば、と考えたらしいです」
陛下は暫く考えていた。ウージェーヌがさらっと言い切る。
「ま、暫くは我が家で拘束ですかね」
「いや。拘束するならベルティエの家だな。あそこは色々堅牢な上に……罠も張り巡らせているから」
グランサニュー公爵が口を挟む。
「ああ、ネイサン王子が餌ですか」
「そういうこと。アルノー伯爵本人がアランの謝罪にベルティエ公爵家に日参してる。その上でバスチエの小娘をロクサーヌ嬢のメイド見習いで雇ってるよ」
ウージェーヌが王都から離れている間の出来事を公爵が伝えた。
7
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説

元婚約者が「俺の子を育てろ」と言って来たのでボコろうと思います。
音爽(ネソウ)
恋愛
結婚間近だった彼が使用人の娘と駆け落ちをしてしまった、私は傷心の日々を過ごしたがなんとか前を向くことに。しかし、裏切り行為から3年が経ったある日……
*体調を崩し絶不調につきリハビリ作品です。長い目でお読みいただければ幸いです。

新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!
月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。
そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。
新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ――――
自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。
天啓です! と、アルムは――――
表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました
饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。
わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。
しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。
末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。
そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。
それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は――
n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。
全15話。
※カクヨムでも公開しています
拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~
藤原ライラ
ファンタジー
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――
子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。
彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。
「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」
四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。
そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。
文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!?
じれじれ両片思いです。
※他サイトでも掲載しています。
イラスト:ひろ様(https://xfolio.jp/portfolio/hiro_foxtail)

家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。

私のお父様とパパ様
棗
ファンタジー
非常に過保護で愛情深い二人の父親から愛される娘メアリー。
婚約者の皇太子と毎月あるお茶会で顔を合わせるも、彼の隣には幼馴染の女性がいて。
大好きなお父様とパパ様がいれば、皇太子との婚約は白紙になっても何も問題はない。
※箱入り娘な主人公と娘溺愛過保護な父親コンビのとある日のお話。
追記(2021/10/7)
お茶会の後を追加します。
更に追記(2022/3/9)
連載として再開します。

前代未聞のダンジョンメーカー
黛 ちまた
ファンタジー
七歳になったアシュリーが神から授けられたスキルは"テイマー"、"魔法"、"料理"、"ダンジョンメーカー"。
けれどどれも魔力が少ない為、イマイチ。
というか、"ダンジョンメーカー"って何ですか?え?亜空間を作り出せる能力?でも弱くて使えない?
そんなアシュリーがかろうじて使える料理で自立しようとする、のんびりお料理話です。
小説家になろうでも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる