97 / 212
幕間 2
エディ、腹を括る
しおりを挟む
地上に戻ると、ギルドにはマドレーヌに手紙が溜まっていた。
「ロクサーヌ先輩の元に蝶はとどいたけど手紙が全く読めなかったって」
「やはり距離が遠いのかな」
「魔力がもっと強いなら行けるのだけど」
「オヤジとか、グランサニュー公爵レベルじゃないと無理かな」
アルはマドレーヌの言葉に、どこか心無い返事をかえしている。アルは熱い茶を飲みながらまったりしている。明日には特殊手段で帰宅の途につくとアキラに言われているので少し緊張していたので、無理にゆったりとしているのだ。
「へぇ、ネイサン王子は王宮ではなくて先輩のおうちで過ごしてるんだって」
エディとロゼは無言で変な緊張感を間に漂わせている。マドレーヌもアルも触れなかった。マドレーヌはロゼに『ちょっと空気悪くしちゃうけど、明日までにけりつけちゃう』と言われていた。
『ここでお別れかも。こことディアーヌ王国の西の端の街は直通馬車があるし。王国の王都に落ち着いたらギルド伝いで連絡入れるよ』
ロゼは勝負かけるんだな、と思ってマドレーヌは黙って頷いた。アルはそういう空気を感じてフォローするには恋愛面で幼かった。マドレーヌは国に帰ったら令嬢に良いようにされそうだなと思っていたがこれ以上のプレッシャーを与えても、と思って何も言わなかった。そして、セイラ妃とレア王女がなんとかするだろうと思っている。
「ロゼ、ちょっと散歩に行こうか」
エディはロゼの圧に耐えかねて、外に誘う。ロゼは頷いてエディと共に外にでた。マドレーヌは心の中でロゼを応援している。
「アキラ、来ないね」
気を逸らすようにマドレーヌが言う。アルはどこか一部分が抜けているように返事をする。
「ああ」
そのまま二人は黙りこくる。食堂のその一角は美男美女がまったりと座っているように見周りには見えている。それを見てなにか得した気分にになっていた冒険者はそのふたりを邪魔しないようにそっと静かに自分たちの食事を終わらせた。ギルドの宿舎の食堂とも思えない静かさであった。
「長い事旅してるように思うけど……そこまでたってないんだよな、ロゼと一緒に旅する用意なって」
「そうね」
食堂での圧が嘘のようにロゼは穏やかな態度であった。エディは目を合わさずにこの辺境の外れにある冒険者自治区の風景を見ている。
「その……、あの……」
エディはくるりとロゼの方に体ごと向き直る。そして自分の大きな手両方でロゼの手を包み込む。
「ロゼ、俺でいいなら……一緒に冒険者をやらないか」
エディはつっかえて居た言葉を一気に吐き出した。
「……そうね。貴方は私を冒険のパートナーとして欲しいってこと?」
ロゼの態度にエディは伝え方が良くなかったと悟る。
「いや、その……あの……、ずっと一緒に居て欲しい」
「それは妻としてって事?」
ロゼは容赦をせずエディの言葉を確定させる。
「そ、そう。それです」
エディは緊張のあまり声が裏返っている。
「わかった。あたしはエディの妻、パートナーになる」
ロゼの返答にエディはその場にしゃがみこんだ。
「よかった……、なあ、ロゼ、なんで俺なんだ」
「嘘がつけないから。それとさ、あたしの両手を包み込めるだけ手が大きい男だから」
エディは子犬のような目でしゃがみこんだまま下からロゼを見る。
「アルだって結構大柄だし……あいつの方がいい男だろ」
「あたしはエディがいいの」
ロゼはぽんぽんとエディの頭を撫でた。
「ロクサーヌ先輩の元に蝶はとどいたけど手紙が全く読めなかったって」
「やはり距離が遠いのかな」
「魔力がもっと強いなら行けるのだけど」
「オヤジとか、グランサニュー公爵レベルじゃないと無理かな」
アルはマドレーヌの言葉に、どこか心無い返事をかえしている。アルは熱い茶を飲みながらまったりしている。明日には特殊手段で帰宅の途につくとアキラに言われているので少し緊張していたので、無理にゆったりとしているのだ。
「へぇ、ネイサン王子は王宮ではなくて先輩のおうちで過ごしてるんだって」
エディとロゼは無言で変な緊張感を間に漂わせている。マドレーヌもアルも触れなかった。マドレーヌはロゼに『ちょっと空気悪くしちゃうけど、明日までにけりつけちゃう』と言われていた。
『ここでお別れかも。こことディアーヌ王国の西の端の街は直通馬車があるし。王国の王都に落ち着いたらギルド伝いで連絡入れるよ』
ロゼは勝負かけるんだな、と思ってマドレーヌは黙って頷いた。アルはそういう空気を感じてフォローするには恋愛面で幼かった。マドレーヌは国に帰ったら令嬢に良いようにされそうだなと思っていたがこれ以上のプレッシャーを与えても、と思って何も言わなかった。そして、セイラ妃とレア王女がなんとかするだろうと思っている。
「ロゼ、ちょっと散歩に行こうか」
エディはロゼの圧に耐えかねて、外に誘う。ロゼは頷いてエディと共に外にでた。マドレーヌは心の中でロゼを応援している。
「アキラ、来ないね」
気を逸らすようにマドレーヌが言う。アルはどこか一部分が抜けているように返事をする。
「ああ」
そのまま二人は黙りこくる。食堂のその一角は美男美女がまったりと座っているように見周りには見えている。それを見てなにか得した気分にになっていた冒険者はそのふたりを邪魔しないようにそっと静かに自分たちの食事を終わらせた。ギルドの宿舎の食堂とも思えない静かさであった。
「長い事旅してるように思うけど……そこまでたってないんだよな、ロゼと一緒に旅する用意なって」
「そうね」
食堂での圧が嘘のようにロゼは穏やかな態度であった。エディは目を合わさずにこの辺境の外れにある冒険者自治区の風景を見ている。
「その……、あの……」
エディはくるりとロゼの方に体ごと向き直る。そして自分の大きな手両方でロゼの手を包み込む。
「ロゼ、俺でいいなら……一緒に冒険者をやらないか」
エディはつっかえて居た言葉を一気に吐き出した。
「……そうね。貴方は私を冒険のパートナーとして欲しいってこと?」
ロゼの態度にエディは伝え方が良くなかったと悟る。
「いや、その……あの……、ずっと一緒に居て欲しい」
「それは妻としてって事?」
ロゼは容赦をせずエディの言葉を確定させる。
「そ、そう。それです」
エディは緊張のあまり声が裏返っている。
「わかった。あたしはエディの妻、パートナーになる」
ロゼの返答にエディはその場にしゃがみこんだ。
「よかった……、なあ、ロゼ、なんで俺なんだ」
「嘘がつけないから。それとさ、あたしの両手を包み込めるだけ手が大きい男だから」
エディは子犬のような目でしゃがみこんだまま下からロゼを見る。
「アルだって結構大柄だし……あいつの方がいい男だろ」
「あたしはエディがいいの」
ロゼはぽんぽんとエディの頭を撫でた。
7
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説

元婚約者が「俺の子を育てろ」と言って来たのでボコろうと思います。
音爽(ネソウ)
恋愛
結婚間近だった彼が使用人の娘と駆け落ちをしてしまった、私は傷心の日々を過ごしたがなんとか前を向くことに。しかし、裏切り行為から3年が経ったある日……
*体調を崩し絶不調につきリハビリ作品です。長い目でお読みいただければ幸いです。

新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!
月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。
そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。
新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ――――
自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。
天啓です! と、アルムは――――
表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました
饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。
わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。
しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。
末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。
そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。
それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は――
n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。
全15話。
※カクヨムでも公開しています
拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~
藤原ライラ
ファンタジー
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――
子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。
彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。
「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」
四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。
そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。
文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!?
じれじれ両片思いです。
※他サイトでも掲載しています。
イラスト:ひろ様(https://xfolio.jp/portfolio/hiro_foxtail)

家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。

私のお父様とパパ様
棗
ファンタジー
非常に過保護で愛情深い二人の父親から愛される娘メアリー。
婚約者の皇太子と毎月あるお茶会で顔を合わせるも、彼の隣には幼馴染の女性がいて。
大好きなお父様とパパ様がいれば、皇太子との婚約は白紙になっても何も問題はない。
※箱入り娘な主人公と娘溺愛過保護な父親コンビのとある日のお話。
追記(2021/10/7)
お茶会の後を追加します。
更に追記(2022/3/9)
連載として再開します。

前代未聞のダンジョンメーカー
黛 ちまた
ファンタジー
七歳になったアシュリーが神から授けられたスキルは"テイマー"、"魔法"、"料理"、"ダンジョンメーカー"。
けれどどれも魔力が少ない為、イマイチ。
というか、"ダンジョンメーカー"って何ですか?え?亜空間を作り出せる能力?でも弱くて使えない?
そんなアシュリーがかろうじて使える料理で自立しようとする、のんびりお料理話です。
小説家になろうでも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる