悪役令嬢、冒険者になる 【完結】

あくの

文字の大きさ
上 下
86 / 212
第二章

無属性の精霊

しおりを挟む
 「無属性の精霊と契約した」

フロランの言葉に公爵は驚いた。

「無属性の精霊なんているのか」

「この土地には。グランジエの人間の魔力が無属性なのと関係あるらしい、です」

フロランはグランサニュー公爵が公爵だと思い出したようだった。

「王都にもいるんだけど色んな属性の精霊と一緒にいて目立たなくしてるって。……一番精霊がいるのは側妃宮だって。あそこは『悪意』が入ってこないから気持ちいんだってさ。俺が契約してるのは小精霊だけど、側妃宮には守護者様と仲のいい大精霊様、各属性と無属性の5大精霊の拠点にもなってるって」

フロランの話は公爵も知らない話だった。

「そんなことになってるのか」

「セイラ妃がそもそも精霊に愛されてる人だから。愛し子とまではいかないけど、って」

フロランは自分が契約してる精霊と話ながら話しているようだった。




 「さて、と。家にかえらねばな」

「その前に、王都の神殿でしょ。……俺も行かなきゃならんな。よし、フロランお前も来い」

ウージェーヌはさらっと大事な事を決める。

「……先に母上に許可とってくれよ」

フロランが警告する。

「今回も『ちょっと行ってくる』ってどこにとも言わないで言ったでしょう。それで母上怒ってるんだから」

「わかったよ。じゃちょっとジョアンの件片してくるわ」

ウージェーヌはそう言ってジョアンの元へ向かった。

「ウジェは……その、夫婦仲大丈夫なのか」

公爵が心配そうにフロランに訊ねるとフロランは笑って答える。

「ああ、今頃部屋で二人でいちゃいちゃしてますよ。……王都に行くときは母上が服を選んで着飾らせますからね。あの夫婦のコミュニケーションです」

フロランは悟っているようだった。

「今回の母上が拗ねてるちょっと放置だったから拗ねてただけだし」

あとはマリアンヌの結婚問題でいらついてるんだよな、とフロランは心の中で付け足す。どちらにしてもマドレーヌの帰国待ちだよな、フロランはクロードと話し合った事を思い出す。当事者であるマドレーヌがアルノー家を許すかどうか、だと黒0℃は言ったがフロランはマドレーヌはこだわらないと思っていた。マドレーヌもだが、ベルティエ公爵家に預けられたアランが全くと言って『反省』していないらしいのがアルノー家の問題だった。ネイサンは日に日に『おまぬけな気の良い王子様』という印象になっているらしいがアランは……とアルノー家に刺繍をした布を納入に行っているマリアンヌから聞いている。マリアンヌはギルドの装置を一人で使えるほど魔力はないので10日に一度、クロードが王都に連れて行っている。クロードは長男として王都での仕事ができるし、その間マリアンヌはアルノー家に預かってもらえるので一安心だった。
 なぜならマドレーヌたちが通っている学園では悪役令嬢マドレーヌがアランを仲のいいロクサーヌにあることない事告げ口して監禁して罰してもらっている、という事になっているらしい。
 なぜそこにいないマドレーヌにそんな事が出来るのかなどは関係なく噂は面白い方に流れる。マドレーヌは一見地味なのだがマドレーヌの顔を知っていればマドレーヌと姉妹だと判る位には似ている。なのでクロードにしたら街中にマリアンヌを置くのは嫌だったのだ。クロードにそういう話を教えてくれるのは文官の一人で現在子爵家を継いだ学生時代の友人で会った。友人の妹が学園に通っていてそう言う話をしてくれるのだとか。

「居なくても騒動起こすのか、うちの妹……」

クロードは小さくため息をついた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

元婚約者が「俺の子を育てろ」と言って来たのでボコろうと思います。

音爽(ネソウ)
恋愛
結婚間近だった彼が使用人の娘と駆け落ちをしてしまった、私は傷心の日々を過ごしたがなんとか前を向くことに。しかし、裏切り行為から3年が経ったある日…… *体調を崩し絶不調につきリハビリ作品です。長い目でお読みいただければ幸いです。

野生児少女の生存日記

花見酒
ファンタジー
とある村に住んでいた少女、とある鑑定式にて自身の適性が無属性だった事で危険な森に置き去りにされ、その森で生き延びた少女の物語

新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!

月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。 そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。 新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ―――― 自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。 天啓です! と、アルムは―――― 表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました

饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。 わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。 しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。 末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。 そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。 それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は―― n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。 全15話。 ※カクヨムでも公開しています

拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~

藤原ライラ
ファンタジー
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――  子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。  彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。 「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」  四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。  そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。  文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!? じれじれ両片思いです。 ※他サイトでも掲載しています。 イラスト:ひろ様(https://xfolio.jp/portfolio/hiro_foxtail)

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

私のお父様とパパ様

ファンタジー
非常に過保護で愛情深い二人の父親から愛される娘メアリー。 婚約者の皇太子と毎月あるお茶会で顔を合わせるも、彼の隣には幼馴染の女性がいて。 大好きなお父様とパパ様がいれば、皇太子との婚約は白紙になっても何も問題はない。 ※箱入り娘な主人公と娘溺愛過保護な父親コンビのとある日のお話。 追記(2021/10/7) お茶会の後を追加します。 更に追記(2022/3/9) 連載として再開します。

前代未聞のダンジョンメーカー

黛 ちまた
ファンタジー
七歳になったアシュリーが神から授けられたスキルは"テイマー"、"魔法"、"料理"、"ダンジョンメーカー"。 けれどどれも魔力が少ない為、イマイチ。 というか、"ダンジョンメーカー"って何ですか?え?亜空間を作り出せる能力?でも弱くて使えない? そんなアシュリーがかろうじて使える料理で自立しようとする、のんびりお料理話です。 小説家になろうでも掲載しております。

処理中です...